質問で深まる理解

私は創業してまだ3年ほどにしかならないが、いろいろな機会を得てプレゼンをしたり、プレゼンというほどではないにしても、自分のやっていること、やろうとしていることを紹介する機会は意外に多くある。私でなくても、それはどんな人であっても同じではないだろうか。考えていれば名刺交換一つとっても、それはプレゼンのミニミニ版と受け取ることもできる。そう考えると、世の中、プレゼンの機会にあふれている。わずかの間にいかに自分の仕事に対する思いを伝えられるかが勝負だ。だから、どんな些細な質問であっても、それに反応してもらえることがあるととても嬉しいものだ。

よく士業の先生方などで、見込み客の収集やその場で契約を結ぶために、セミナーや勉強会などの開催を行ったりしているが、その内容はともかくとして、どれだけそこで質問が飛び交うかがその場の雰囲気を大きく左右する。だから時によっては、「サクラ」を使ったりすることもあるくらいだ。特に欧米に比べて日本人は挙手をして質問をすること自体を恥ずかしいと思うところがある。会社でも根回しをして、予め慣れない議論をすることを避ける傾向もある。だからセミナーなどを開催する際にも、もしその場に司会者がいるのなら、まず司会者が質問をして場を和ませるように手配をしておくのも悪くない。

雰囲気をリードする質問を投げかける

もし、皆さんがプレゼンをした後で、誰も質問の手を上げないようなら、皆さん自身がその場の雰囲気をリードする必要がある。例えば、率直に「何か質問はありますか?」と投げかければ良い。司会者が呼びかけるより、その方が余程参加者にインパクトを与えることができる。それでも質問がなければ、皆さん自身が簡単な論点を作り出し、参加者に質問すれば良い。例えば、販促についての話をしていたとする。誰も質問しないなら、「皆さんはどんな販促手段を使っていますか?」「その反響はどうですか?」「○○市で似たような販促を行っておられる方いませんか?」…など。

新しい論点で次々に参加者の意見を引き出し、話し合う雰囲気ができれば、質問をする人も多くでてくるはずだ。そうすれば、皆さんがしたプレゼンもより理解が深まり、参加者の共感も広がることが予想できる。最初からプレゼンをすることが分かっているなら、参加者に合わせて、そうした質問の内容にまで予め工夫をしておくことがお勧めだ。士業の先生方の中には、質問されること自体を嫌がる方もおられ、まるでプレゼンというより学校の授業のように一方的な語り掛けだけで終わり、早々にその場を引き上げたりされるが、とてももったいないことだと思う。

強制的にでも質問を促す

質問をしない人はこちらが思う以上に驚くほどかたくなだったりする。会社の会議などで、誰かがプランの発表をしても、黙り込んだままの人が少なくない。そんな人はただ時間が過ぎるのだけを気にしているように思える。そのような人たちが、会議を壊してしまうといっても過言ではない。そのような人には、沈黙を守ることで自分自身の時間が過ぎ去るだけでなく、他の参加者の時間までも奪っていることにもっと気を使って欲しい。だから、会議を実りあるものにするために、このような沈黙者をそのままにしておくわけにはいかない。少々乱暴かもしれないが、そのような場合、質問しそうな人を指名するしかないこともある。

何度も人前で話をしていると、そのうち質問がありそうな人はだいたい見当がつくようになる。話し手を見つめる目つきや顔つき、頷いたり、逆に首を傾けているような人には何か思うことや、意見、批判などがあると判断できる。これは10人を超えるような会議でも効果的だ。最初からいきなり批判的な意見を聞くのは抵抗がある方には、「そこで頷いておられる方、何か思い当たることがおありですか?」などと、賛同しそうな人から意見を求めると良い。そうして場の雰囲気を落ち着かせておいて批判的な意見に向き合うと、落ち着いて対応できるかもしれない。

質問を受ける注意点

そして質問には明快な論理で答えるのがベストだ。相手の質問の意味や意図が分からなければ、「その質問は○○という意味でしょうか?」「○○についてのご質問と理解してよろしいでしょうか?」などと確認する必要がある。そして、相手の反応を確かめながら返答することが大切だ。それ以上に、相手が漠然とした質問をしてきた場合は、相手の意図をくみ取った返答をするのが基本だ。質問の返答に自信がない場合は、「これがあなたの質問に対する答えになっていれば良いのですが」と断りを入れることで随分相手の受け止め方も違ってくる。

また、質問されたらすぐに答えなければならないというルールはこの世には存在しない。中には質問の内容自体がおかしいことだってあるのだ。質問の内容が分からなければ、こちらが逆に質問したって一向に構わない。相手の意図だけでなく、聞かれた内容がこちらの専門外だったりしたときにも、分からなければ「分かりません」とはっきりと答えるべきだ。どんな立場であっても、知らないことを恐れてはいけない。最後になったが、その場を去る時には、「いつでも質問を受け付けます」という姿勢をはっきりと伝えておかねばならない。そうした態度が、参加者の信頼を得るのだ。