知識だけは豊富な若者

3連休の半ばにたまたま20代後半になる私の甥が我が家を訪ねてきた。久し振りの訪問に挨拶を交わした後、「3連休でどこへも行かないの?」と聞けば、「行ってもつまらない」という。郊外の温泉場などいろいろあるだろうと思うのだが、いずれも「あそこはただ温泉の泉質にちょっと特色があるだけで、そのほかはどこも似たり寄ったりだから」というので、行ったことがあるのだと思ってそれを前提に話をしていたら、「知っているだけ」という。今の時代、現地にわざわざ足を運ばなくてもYou Tubeや何かで「行ったような」知識を得られるというのがオチだった。

「なるほど」。巷で若者の行動が変わっているとは聞いていたが、その現実を直接見せつけられると、「一体どうなっているの?」と団塊の世代に近い私などは改めて戸惑いを隠すことはできない。これを読んでおられる方々はどうだろう。そうした若者が、今は東京でなら渋谷あたり、大阪では難波、心斎橋当たりへ行くのも嫌いなのだという。何故なら、「誰かにそこに居たことが分かってしまうから」。「そんなに顔が広いのか」と思えばそうではなく、LINEつながりで、「今日あいつが誰かと渋谷当たりをうろついていた」ことが、本人も分からないうちに拡散するのだという。

携帯時代のつながり

「随分束縛の強い中で生きているんだ」と思うと気の毒に思うのだが、実際、ある調査によると今の小学生の55.5%、中学生の66.7%、高校生では97.1%が自分の携帯電話を持っているという。私の時代はもちろん、そんな携帯電話なんてないから、今も中学や高校の同窓会などがあると、「いやー、久し振り!」なんて言って旧交を温めるのが普通なのだが、彼らの場合、一度小学校や中学校でつながったLINEなどの関係は、ずっと大人になっても続くことになる。ある若者の消費行動を研究している専門家によると、携帯電話の前の世代の人間関係を「フロー型」と呼ぶとすれば、彼らの人間関係は「ストック型」なんだそうだ。

過去の人間関係が途切れないとすれば、それはそれで大変だろうと思う。だから常に周囲に対して気配りを忘れないのだそうだ。間違っても「空気の読めない奴」と判断されると、それこそ昔の「村八分」のような立場に追い込まれてしまう。その専門家によれば、つながっている友人たちの中においては、ずっと「良い奴」でいる必要があるのだという。その話を聞いて、私が「経験上、決して若者が周囲に気を配っているとは思えない」と話したら、「横の関係と縦の関係は違います」と言われた。気配りするのは横の関係で、彼らは「縦の関係に対する気配りは苦手なんです」。

「スモールライフ」の時代がもたらすもの

今の20代は「世の中は不景気なのが当たり前という中で生きてきた」と言われる。実際、経済の高度成長期ははるか昔の話で、バブル時代も知らないし、物心ついたころには「失われた10年」「相次いだ大企業の倒産」「リーマンショック」を経験し、ここしばらくは「実感なき景気回復」と呼ばれた時代の中に置かれてきた。ある調査によれば2018年春の地方から出て首都圏の私立大学に通う大学生の1日の生活費は677円だそうである。コンビニで売っている弁当代1個の値段にほぼ等しい。しかも、その半数以上が奨学金に頼っている。彼らにしてみれば、当然将来に対する不安を持ち、「安定指向」に走り勝ちにもなる。

そのくせ、大学を卒業するころには就職状況は活況を呈し、「暗い時代であっても不安はない」とされる。そんな彼らに対しては、組織の中でもモチベーションをいかに持たせるのかということが大問題になっている。「何となく元気がない」「消費しない」「恋愛しない」「結婚しない」「お酒を飲まない」と散々に言われる20代にもその理由はあるのだ。これから、そんな彼らが時代の主役を担うことになると、いよいよ「スモールライフ」の時代を迎えることになる。しかし、「スモールライフ」がすなわち経済全体の「スモール化」を意味すると考えるのは、ちょっと気が早いようだ。

「買い替え」から「買い足し」の時代へ

平成の時代に、商品やサービスに関して話題になったことを探してみると、「3プライス制度」「ブックオフ」「アウトレット」「プライベートブランド」「100円均一」などなど。値段は下がったが、品質はそこそこ安定しているというモノやコトで溢れている。一昔前なら「安かろう、悪かろう」と揶揄されたものだが、今や「安かろう、そこそこ良かろう」というのが常識だ。「ユニクロスタンダード」という言葉があるらしい。「貧乏だから節約している」のではなく、「ユニクロや無印が好きです」という層ができてきているのだという。

プレゼント市場もお中元やお歳暮のような儀礼的なものが縮小する一方で、個人的な市場が増えているそうだ。「母の日」に向けたプレゼント市場の盛り上がりが一例だ。残念ながら「父の日」はその対象外のようだが。

中古でもブランドそのものを誇る時代は終わったという。「ルイヴィトン」を自慢するのでなく、「普通は〇万円するものを〇万円で買えた」という自分の「目利き」を自慢するのが今の若者たちだという。「30年も使えるといわれたら高くても買いますよ」という彼らは、人間関係同様、モノについても長く付き合うのがカッコ良い生き方のようで、「買い替え」から「買い足し」の時代へ移る予感を感じさせている。