法人とは…

起業の際、個人事業主として手軽に始めるのでなく、社会的な信用を得やすい法人の形態を選ぶこともあるだろう。その中でも一般的には株式会社が頭に思い浮かぶところだろうが、法人はそれだけではない。いろいろある中でどれを選べば良いのかと思われるかもしれない。ここでは改めて法人とは何を指すのかから話を進めよう。

法人とは法律の規定で1人の人格と同じような権利や義務を認められた組織の存在を指す。「法」によって「人」と同じような資格を認められているので、「法律上の人格=法人」と呼ばれている。法人そのものが一つの法的人格として扱われるので、たとえ会社の従業員が10人いようが、100人いようが、それ以上であろうが、全員合わせて一つの法的な人格として扱われる。

一方、個人で事業を行う個人事業主の場合は、現在も将来も個人として活動することを前提としているので、法律に組織としての人格が認められることなくただ1人の人間としての本来持つ人格でビジネスを行うことになる。

いろいろある法人の種類

法人組織の中には営利法人、非営利法人、中間法人があり、それ以外にも非法人(法人ではないが組織で活動をする)も存在する。株式会社は営利法人の代表的なものだ。営利法人には株式会社以外に、合同会社(LLC)、合名会社、合資会社があって、これらは会社法により規定されている。NPO法人は非営利法人の中の1つで、非営利法人はそれ以外にも学校法人、宗教法人、社会福祉法人、社団法人、財団法人がある。中間法人は協同組合や労働組合。また、非法人には民法上の組合として、有限責任事業組合(LLP)や投資事業有限責任組合などがある。念のために言うと、有限会社という形態を聞いたことがある方もおられるかもしれないが、2006年の新会社法の施行により有限会社法が廃止され、今は新たに有限会社を設立することができない。

個人事業主は、従業員を雇うのでなければ、税務署に開業届さえ出せば事業主になって事業を始めることができる。従業員を雇う場合は法人と同じ手続きが必要になるが、それでも法人と比べて簡単に始められるというメリットがある。最近ではフリーランスと呼ぶ個人で行う仕事や取引先が顔見知りで新規の営業も紹介ばかりといった状況であれば、まずは個人として事業を始めて、軌道に乗ってから会社を設立するという方法もある。これを「法人成り」という。

最近急増しているLLC

株式会社については、これまでにも何度かその手続き等については他で述べてきたので、今回はそれ以外で興味を引きそうな組織形態について説明する。

まず最近急増している合同会社(LLC)について。株式会社との一番の違いは、経営者と出資者が同一であること。出資者全員が会社の経営者でもあるため、会社の重要な決議事項について柔軟に判断ができ、また設立費用も比較的安くて済むことなどが人気の理由として挙げられている。代表取締役や取締役といった役職はなく、株主総会や取締役会などの機関も存在しない。出資者全員が業務を執行する権利を持った「代表社員」の皆で経営上の重要事項を相談し決定する。なお、出資者には個人ではなく、法人がなることもできる。法人が社員になる場合は、その法人から職務執行する者を1人選び、この個人の氏名・住所を他の社員に通知しなければならない。

ベンチャーに向いているLLP

この合同会社と混同されることがある有限責任事業組合(LLP)の一番の特徴は、法人格がなく、それでいて個人事業主とは異なり有限責任の特徴を有することだ。短期的、プロジェクト的な事業、ベンチャー企業や異業種の企業、専門人材が行う共同事業など、参加者個人が属人的な能力を発揮しやすい事業に向いているとされている。ここでは重要な意思決定は全員一致、業務執行への全員参加が原則となっている。これを満たす範囲で活動できれば取締役や監査役の設置義務もない。そして、株式会社や合同会社はまず法人として課税され、さらに役員や業務執行者には所得税もかかるが、この有限責任事業組合では法人格がないため法人税がかからず、構成員へ直接課税される「パススルー課税」が適用される。また、構成員は参加する組合から配当を受けることができるが、報酬(給料)をもらうことはできない。

公益性のある活動に向いているNPO法人

NPO法人に興味を持つ起業家も多いが、これはずっとボランティアで地域の活動を続けてきたが、定年を機会に本格的に社会貢献したいというような人に向いているやり方だ。逆に言えば、儲けるための起業には向いていない。そもそも、NPO法人として認められるためには以下のような「公益性のある活動」を行うことが前提となる。
・保健、医療又は福祉の増進を図る活動
・社会教育の推進を図る活動
・まちづくりの推進を図る活動
・観光の振興を図る活動
・農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
・学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 
・環境の保全を図る活動 など

これらの前提に加え、
・営利を目的にしない(給料などの対価を得ることは可)こと
・10名以上の社員を有すること
・役員のうち、報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下であること 
などの要件も満たす必要がある。株式会社との大きな違いは、出資金関係の手続きが不要なこと。また、定款認証や登記申請の際の手数料や印紙代、登録免許税は不要となる。