必要な「調整時間」

著名人などに会うのにどうも気後れがしてしまう。著名人でなくても企業の社長などに時間を取ってもらうのにも躊躇することが多い。それは相手が偉いからとか、同じ土俵に立って話し合うことなんてできるのかとか、同じ時間を共有することに自分が何かとんでもない身分不相応を思える、などの不安も少しはあるかもしれないが、相手が素晴らしい人格者であればあるほど、実際に会ってみるとこちらにそんな余計な気遣いをさせることはない。むしろ気後れがしてしまう原因は、忙しい中でわざわざ時間を作って会っていただいていることのメリットを十分に自分が生かせているかという不安にあることが多い。

それにこういえばちょっと語弊があるかもしれないが、案外時代の寵児とされる方の中でも、皆が皆というわけではないが、スケジュール帳いっぱいに予定を詰め込んでいるというわけではないと私のつたない経験の上からではあるが感じている。確かに、予定は1年先まで一杯ということもあるだろうが、必ず想定外の出来事に対応したり、どこかで自分が考える時間というものを持つように、「調整時間」というものを持っておられるように思う。もちろん、だからといってその時間が貴重であることに変わりはなく、その「調整時間」を自分が使ってよいという理屈にはならないのだが。

次の行動につながる振り返り、改善の時間の確保も

時間が貴重であることは、大抵のビジネスマンには当たり前のことだ。でもそれが分かっていながら、平気で相手の時間を使っていることがあまりに多い。先の例で言えば、相手に貴重な時間を使わせるのだから、当然、それに見合う十分な成果を得られるように、こちらは幾重にも話が展開した際の準備をしていかねばならない。その準備に自信が持てないから「不安」がよぎるのだろう。少なくとも私の経験ではそうだった。そして、一度でも準備不足が明らかになると、もう二度とチャンスはめぐってはこない。時間をうまく使えない、管理ができていない人というのはそのところが徹底して分かっていない。

予定表に少しでも空きがあると、時間を有効に使っていないと気になるビジネスマンがいたり、上司がいたりする。空いている時間がもったいないのではないかというのだが、そもそも空き時間がないと、先ほども言ったような想定外の事態への対応ができなくなる。また、スケジュールは行動をギリギリに詰め込むためのものでもないはずだ。目標―目的―行動―振り返り―改善のサイクルは、良い仕事をするためにも必須だ。だからあまりスケジュールを詰めすぎず、考えや行動を整理する時間を確保する―そんな感覚で時間と向き合うことができれば素敵なのではないだろうか。

すき間時間の活用で差

逆に、スケジュールの間のすき間時間を無駄に過ごしてはいないだろうか。通勤時間や日中の移動時間などに電車に乗っていると、老若を問わずビジネスマンがスマホでゲームをしている風景によく出くわす。ゲームそのものが悪いというわけもないが、それを見た時、老婆心ながらこれから向かう職場や商談の場などにおける準備は完全に整っているのだろうかと気になる。移動時間などにゲームをしていて、いざ客先に到着した時にすぐに頭を仕事モードに切り替えて、大切な商談ができるとは思えない。やはりどこかで、頭を切り替える時間が必要になるだろう。それこそまったく時間の無駄ではないか。

たとえ5分や10分のすき間時間があったとしても、そんなわずかな時間で何ができるのかという思いがあるかもしれない。今テレビで盛んに見かけるある若手芸人は、もちろんテレビで盛んに見るくらいだから休み時間も十分に取れないくらいに忙しいわけだが、そんな中でも新しいネタづくりに時間を割かねばならない。それがすき間時間ですべてできるわけではないが、すき間時間を利用して新しいネタの“種”を考え、それを後々まとまった時間が取れた時に、その“種”からストーリーを育てることを考えるのだと話していた。5分や10分のすき間時間が生きている良い例だろう。

わずかな時間でもできること

よくビジネスの種を見つけるのに、昔からメモをする習慣が大切だということを聞く。それも良いのだが、メモする習慣、引いてはそもそも書くことがどうしても苦手という人もいるかもしれない。そんな時はスマホを使えば良いだろう。スマホでもメモの機能はあるし、普段の生活の中で気になった写真をスマホに撮っておくことも、メモ代わりとして使えるかもしれない。後でどんな時に、何が気になってこの写真を撮ったのか、あるいは何となく面白いと思って撮った写真を改めて見て、そこから何か気づきを得ることができることもあるかもしれない。

すき間時間でできることはビジネスの“種”を見つけるためのメモばかりではないはずだ。メールのチェックや部下やお客様に対するちょっとした電話でのフォロー、何か抱えている課題を解決につなげるヒントになるようなキーワード、得意先に向かう時にはどんな言葉で話を切り出すのか、相手はどんな質問をしてくるのかなどのシミュレーションをしたり、スマホでトレンド情報のチェックなど、できることはいろいろありそうだ。今日一日の予定をチェックして、この時間帯には何ができそうかあらかじめ考えておくぐらいの余裕は持っておきたい。

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