現実を超える会議?会議が変わる?

これまでもWeb会議は遠隔地同士をつないで資料やコンピュータのデスクトップアプリケーションなどについて、リアルタイムで共有するための情報システムとして使われてきた。それまでのビデオ会議(テレビ会議)では映像・音声の通信以外の機能を持たないシステムが多いが、Web会議ではチャット機能やパソコン上のファイルデータの送受信など、ビデオ会議以上の機能を有するものとして重宝されている。その会議がさらにVR(仮想現実)や自然言語処理技術、スマートスピーカーなどの技術を駆使することで変わろうとしているというのだ。

これら新たな技術を用いることで、「現実を超える会議をITで構築できる」とされている。何が現実を超えるのかは後ほど述べるにして、こうした会議システムが生まれる背景にはそれを支える新技術が現実のものとして応用可能になってきていることに加え、今後、「働き方改革」の一環として既に大企業などで導入の動きが進むテレワークが本格的に普及すると見込まれていることがある。テレワークはITを活用することで時間や場所の制約を受けずに柔軟に働く形態を指すが、自宅やシェアオフィスで仕事をする流れの普及に当たってさらに進化した会議システムが求められているというものだ。

アバターで会議に参加

最先端の技術を使うと会議はどうなるかー。南国のプールサイドで営業の成果を報告、といったことが最早夢物語ではなくなるのだ。NTTデータはヘッドマウントディスプレーを装着して、仮想の会議室に入室できるVR会議システムの開発を進めている。従来のビデオ会議では、顔や散らかった部屋(背景)などを見られたくないために、わざわざその会議のために化粧する手間が要ったり、背景に気を配る必要があったが、これだと参加が楽しくなるような非現実的な場所で、プライバシーを保護しながら会議をすることができる。

会議の参加者はアバター(仮想空間上の分身)を通じて会議に出席する。アバターの頭の向きや手の動きは本人とリンクし、音声も発信者の方向から聞こえるように設定してある。参加者の音声はアバターから吹き出し形式で文字化され、テキスト形式でも表示が可能になっている。使用される言語が異なる場合でも即時に翻訳される。会議で使用する資料はパソコンやドキュメントから仮想会議室の空間上に貼り付けられるほか、Web情報も音声で検索し、他の参加者と映画を見るように共有できる。NTTデータはこのシステムを来年にも本格導入する方針だという。

内緒話も可能

面白いのは、資料の文字が小さい場合はズーム機能で詳細を確認し、現実空間と同じようにメモも取れる。「メモを取ります」の発話に反応してメモ機能が有効になり、テキスト化して記録するなど至れり尽くせりの機能を搭載する。ある特定の人との2者間通話にも対応する。会話の吹き出しは相手以外には見えず、現実と同様に会議中の内緒話をすることも可能だ。今後はさらに、付箋をホワイトボードに貼っていくようなアイデアを出しやすくなる機能なども増やしていくのだという。

NTTデータだけではない。TISは会議の内容を自動で記録し、スマートフォンやパソコンから閲覧・編集できるサービス「レコード・ミーティング」を提供する。このサービスは会議室にスマートスピーカーとコントローラを置くだけで、参加者の音声をリアルタイムに記録・テキスト化する。AI(人口知能)の技術を利用することで可能になった。会議のはじめに出席者が自分の名前を名乗ることで、スマートスピーカーが発話者の方向(座席位置)を感知する。最大12人まで利用できる。議事録作成に伴う労力を最小化し、業務の効率化や生産性の向上につなげていく。

利便性が高まるテレワーク

このほか、日本ユニシスのグループ会社でソフトバンクや日本IBMが出資するS&IもAIを活用して会議の会話内容をリアルタイムにテキスト表示・翻訳できるサービスを提供する。もちろん、こうした次世代の会議システムに商機を見出しているのは大手企業ばかりではない。

コンタクトセンター(企業において顧客への対応業務を専門に行う事業所・部門)向けヘッドセットを手掛けるGNオーディオジャパンは視野角が最大180度のパノラマ撮影ができる会議用ビデオカメラを提供し、会議室のデジタル化を支援する。このカメラは3つのカメラで180度のパノラマ撮影ができる。死角が少なく、会議室にいる全員がカメラに映る。AIを搭載し、人の顔(目と鼻)を認識し、4mの範囲で最大40人を検知できる。会議室内に1人から数人しかいない場合など、人数の増減に合わせて画角を自動調整するという。

来年のオリンピックの開催にも合わせて、政府はテレワーク導入企業を2012年比で3倍に、在宅テレワーカーを2013年比10倍にするとしている。すでに導入企業の8割以上が何らかの導入効果があったとしている。次世代会議システムのような新しいシステムがますますその流れを後押しすることになるのだろう。