自ら経営課題を発見できるPDCA

品質管理など業務管理における継続的な改善に向けた取り組みを指して、「PDCAサイクル」という言葉をお聞きになられた方は多いだろうと思う。が、念のために振り返っておくと、これは計画を策定し(Plan)、実際に目標に向けて実行(Do)したうえで、定期的に計画と実績の差異を分析し(Check)、計画達成のために必要な改善策のフォローを行う(Action)ことをいう。「時代遅れ」などと称する向きもあるようだが、これから起業して企業経営を始めるには基本中の基本として押さえておきたいところだ。というのも、中小企業においては、その基本的なことさえ、なかなか実施が不十分と言われているからだ。

例えば、起業に当たり、コンサルタントなどに相談して何かが改善されたとしても、その他の課題や今後発生してくる課題に対応できないのであれば、本質的な改善にはつながっていないことになる。しかし、企業内でPDCAサイクルが定着していれば、自社の経営課題を自ら発見し、場合によっては外部人材の力も借りながら、解決を図ることができるようにもなる。金融機関などが融資先にコンサルティングを行うのも、このPDCAサイクルを企業に定着させることが最大の目的になっていたりする。だから決して疎かにしていいものではないのだ。

技量が試される計画(Plan)

まず計画は企業が自社の経営環境(内部環境、外侮環境)を確認しながら立てるもので、戦略はもちろん、戦術レベルにも、また中長期、短期といった面からも存在しうるものだ。仮に今、起業をしようとする場合、とりあえず市場規模から見込まれる売上高、経費を踏まえた予想利益、必要とされる設備、運転資金などを検討することになるだろう。そして、起業者は頭の中で、この計画を実行したらどのような結果になるのか、競合先はどう動くのかといったことを、繰り返し考える。有効な計画が立てられるかどうかが起業者の技量とも言える。計画が適切でないとすべてが崩れてしまうことになるので、十分な検討が必要だ。

以前、起業してしばらくの間、計画より減収基調が続いていたために、販売単価を値下げして拡販を決断した方がおられた。少しだけ用語が難しくなるが、言うまでもなく企業経営では固定費を上回る限界利益が出れば黒字になるのであり、競合先に流れている需要を取り込んで販売数量を増やすことができれば、基調を増収増益に転換することもできる。しかし、実際には競合先も追随して値下げしてきたために、より一層利益を出すことの難しい競争に落ち込むことになった。このようなことを防ぐために、計画段階で競合先が追随してくる可能性を徹底的に考え、追随が予想されるなら、他社に真似のできない差別化を打ち出していくしかないことになる。

計画実現に向けた確かな実行(Do)を

計画の次は実行。計画を立てるだけなら起業者一人でもできるが、実行は違う。いくら立派な計画でも、その通りに自分が動けるか、そして従業員がいる場合は従業員が動いてくれない限り、ただの「絵にかいた餅」に過ぎなくなる。自分も含めて従業員にも計画通りに動いてもらうためには、計画をブレークダウンした具体的な行動計画が必要になる。これをどこまで具体化でき、書面にできるかが重要だ。「誰が」「何を」「いつまでに」するのかといったこと、そして、それを実現するための工夫が求められる。起業家一人で企業活動のほとんどを行っている場合でも、行動を可視化することは計画実現のためには避けられない。

日本人が苦手とされる分析(Check)

実行すると何らかの結果が出る。これを踏まえて、計画と実績の差異の分析を行う。残念ながら日本ではこの分析ができていない企業が多いとされる。要するに計画を作って、それに向けた行動計画まで作るのだが、それっきりになっている状態だ。中には計画を作って終わりというところさえある。大企業であっても、計画があることさえ知らない従業員がいるところもあるくらいだから、そんなことで驚くのはまだまだ認識が甘いのかもしれないが…。

横道にそれてしまったが、この分析を的確に行うためには、取り組み状況を数字で把握することが必要だ。「頑張ったのに」とか「努力が足りないのだろうか」と振り返ってみても、次に「どう頑張ればいいのか」、「どんな努力をしなければいけないのか」が分からない。ここは日々の行動、顧客の声などを数字で表せるような仕組みづくりをして、取り組みの進捗状況を把握していきたい。

それと、計画と実行を振り返る頻度だが、たとえば企業の決算が出た後でしかしないのであれば、それは年に1回ということになってしまう。そうたびたびする必要もないのかもしれないが、やはり最低月に1回は振り返り、その改善の成果を決算で見るようにしなければ、同じ分析をしても効果は薄いだろう。

改善に向けたフォロー(Action)で時には計画そのものの見直しも

最後がフォローということになる。結果を検証して様々な行動を起こす、そして計画を見直し実行する、またその結果を検証する、そういった流れを続けていくことで、企業は成長し、起業者も経営者として成長するもの。時には、原因分析を踏まえて計画そのものの見直しも検討しなければならない。結果が出なかったのは行動が悪かったからだと考える傾向があるが、そもそも計画自体に無理があったり、その後の環境の変化で計画自体情勢に合わなくなっていることも考えられる。環境変化の激しい時代。このPDCAサイクルのスピードを速くして、確かな成果につなげていきたい。