たかが臭い、されど臭い

季節柄、汗や体の臭いが気になる。「スメルハラスメント(スメハラ)」なる言葉を一度は耳にしたこともあるだろうが、これからは「できる男(女)」たるには臭いまで気を使わなければならない時代だ。そして、それが個人の問題として収まっているいる間はまだ良いが、企業の問題として見られると、うっかりもしておられない。実際、サービス業やメーカーのお客様センターに届いた苦情の中に、店員や担当営業の口臭や香水の臭いが気になって話しを聞く気がしなかった、店の外へ出てホッとした、というような主旨のものが出始めているようだ。

社内においてももちろん影響は大きい。○○さんの臭いが気になって業務に集中できない、面と向かって話しをするのが辛い、といった感じだ。そうなると、スメハラが作業効率の低下やコミュニケーションの悪化に影響を及ぼすことにもなる。

これまでは加齢臭にしても生活の一部の臭いとしてほとんど気にする人がいなかったのが、現代は過度ともいえる清潔志向や権利意識の高まりによって、我慢できていたことも表ざたになっているようだ。これをどうこういっても始まらない。問題はサービスにも職場環境にも昔よりハイレベルな質が求められているということ、そして企業はそれに何らかの対策を打たねばならないという事実だ。

誰もが臭いの原因

そもそも、臭いの問題は男の中高齢者の問題とされることも多いが、それは誤解だ。もちろん、40、50代の男性が最も気にしている「加齢臭」というのはある。皮脂の分泌が盛んになって、乳酸やアンモニアなどを含む汗になり、酸化が進むことで臭いが更にきつくなって草の枯れたような臭いが鼻に着く。暴飲暴食、ストレス、運動不足などが原因となっている。

同じような原因で、比較的若い30、40代の男性が出す体臭もある。「ミドル脂臭」と言われるもので、使い古した油のような臭いで、その強さは加齢臭の100倍と言われる。後頭部やうなじから臭うので、枕に嫌な臭いがついているならそれがミドル脂臭だ。

無論、女性であっても臭いとは無縁ではない。最近多いとされるのが、過剰なダイエットが原因とされる体臭だ。ダイエットを続けるうちに体の栄養が足りず、脳が飢餓状態であると認識すると、ケトン体という物質が発せられる。このケトン体が多く分泌されると酸っぱい臭いがする。

もちろん過度な香水の臭いも、それ自体スメハラになりうる。
腸内環境の乱れや筋肉疲労の蓄積で血液中のアンモニア濃度が高まって発生する「疲労臭」に代表されるように、現代では誰もがスメハラの原因になりうる。特に汗をかきやすい夏場は要注意なのだ。

企業として何ができるか

ではその対策なのだが、もともと自分の臭いは鼻が慣れてしまうために自覚しづらいものではあるが、原因が分かれば対策がしやすいものも多いのが事実だ。だからここでは個人でとれる対策には触れない。企業としてどんな対策が考えられるかを取り上げたいと思う。

これは基本的にはスメハラの加害者になっている当人にいかにその事実を伝えるかという問題になるが、その前にスメハラの問題の重要性を社内で共有することが大切だ。そうした問題が起こりうること、影響が社外にまで及ぶ可能性もあることを周知徹底するのだ。

その上で、個人間の問題にするのでなく、企業における問題として担当部署を通して加害者本人にその事実を伝えるのが良いだろう。その伝え方にも細心の注意が必要だ。臭いは個人的な問題なので、伝えるのも同性からの方が良かったりする。

それら以外にも、空調機器を充実させるということが一つの対策としてある。中には空調機器から臭いがすることもあるがそれは論外。今なら比較的安い値段でサーキュレーターや空気清浄機が売られているので、スメハラ対策だけでなく、総合的な職場環境の改善のために設置することが考えられる。

それから、職場運動として、昼食後に歯磨きの励行や一定の時間になると空気の入れ替えをするなどの習慣をつけること。規則で香水は禁止というのもありうる。

周囲への思いやりや心遣いが溢れる職場づくりを

スメハラという問題を個人に委ねず、企業としてその解消に取り組むことは大切だ。社員それぞれが「もしかしたら周りに不快な思いをさせているのではないか」という周囲への思いやりや心遣いを持つことは、きっとそれ以外の面でも働きやすい職場づくりに直結するものとなってくる。逆に言えば、こんなところからも切り口にして、働きやすい職場づくりを作ることが可能だということだ。

昔のことを言っても仕方無いこととは思っていても、それでもあえて話をさせてもらえれば、私のような50代のものなら、若いころは職場で靴を脱いで胡坐をかいて机に向かったり、足をボリボリ手で掻いてそれを自分でまた臭ってみたりといった風景は普通にあった。それを思うと、今のスメハラの問題などはまさに隔世の感があるが、一歩下がって考えれば、そんなことを普通にしてきたおじさんを相手にしなければならない女性を含む今の若い世代は大変だろう。

まあ、時代の変化は技術面だけではない。こんなところにも現れているのだと、中高年世代はあきらめるしかないか。