挨拶状の習慣

毎日事務所にはいろいろな郵便物が届くが、名刺交換した人からときどきいただくのが御礼のハガキだ。書いてあることは特別なことではない。ただ「名刺交換する機会を得ることができてありがとうございます」という感謝の言葉と、「これからどうぞよろしくお願い致します」という挨拶だ。しかし、名刺交換しただけでどんな人だったかすぐに忘れてしまう人も多い中、ハガキを受け取ってまたどんな人だったか思い出すことになり、貰いっぱなしでは悪いので、こちらからもまた返事を出しと、やりとりが広がっていくきっかけになったりしている。

「挨拶は誰でもできることだが、最初に挨拶をした方が勝ち」と小さなころからよく言われた。まあ勝ち負けはともかくとしても、最初に挨拶をされると、された方も余程の人でない限り、黙ったままだったり、無視することも気まずく、挨拶をし返すことになる。そうして関係づくりができることもあることを考えると、やはり最初に行動を起こした方が気持ちの上でも優位に立てそうな気がする。名刺交換後の御礼のハガキも、ビジネスマンであればいろいろな方と名刺は交換するだろうが、「私はその中でもあなたのことをしっかり心に刻んでいます」ということが伝わってくるようで、受け取った方も気持ちがいい。

サービス券付きの挨拶状

ある飲食チェーン店の会長と会合後に名刺交換をさせて頂いた時は、その後に丁寧な御礼の封書をいただいた。有名な方だったので、名刺交換をした当日も多分数十人か100人近くの人と名刺を交換していたはずなのに、その一人ひとりに同じような封書を送っておられたのだろう。必ずしもご本人がしておられるのか、秘書の方などが代わってされておられるのかもしれないが、いずれにしても並み大抵の人にできることではないと頭が下がる思いだった。しかも、その中にはご丁寧に、その飲食チェーンで使える割引券などが入っていて、お店のPRと一石二鳥を狙ったものと感じ入った。

当たり前の話だが、頭の中で、いくらありがたい、助かったと感じていても、そのことを言葉や態度に出さなければ相手に伝わらず、感謝したことにならない。これだけマスコミが発達し、いろいろな情報が氾濫する中でも、相変わらず私たちはその感情表現が苦手なんだなと感じざるを得ない場面が多い。例えば、雨の中を来社、来店してもらった客に、「わざわざ雨の中をありがとうございます」ときちんと言えているだろうか。同じく注文が入ったら、お礼の電話かFAXでも何でもいいのだが、すぐに入れて喜びを伝えることをしているだろうか。素直に喜びの感情を相手に伝えるだけでも、きっとこちらの誠意は感じてもらえるはずだ。

物的証拠を残すハガキ

かくいう私も人のことは言えた義理ではない。頭の中でやった方が良いとは分かっていても、なかなかそれが長続きしない。創業当初、私も名刺交換をした相手に御礼のハガキを出していた頃があった。そして、そのことを習慣付けようと、そのためのハガキをまとめ買いして事務所の引き出しの中にしまった。結果、そのハガキはほとんど減ることなく、今もそのままある。これを書いている手前、またそれを復活させようと今考えているが、どうすれば今度は途中で止めずに続けることができるかと悩んでいる。友人にも相談をしてみた。その友人はハガキを出す達人で、ハガキを出すにもいくつかパターンがあるという。

まず、冒頭の名刺交換時のほか、注文をもらった時、入金してもらった時などその都度にハガキを出すというものだ。ハガキの内容はパターン化しておけば、「慣れれば3分程度で書ける」と言う。これらがいつ出すことになるか分からないのでどうしても出しづらい人には、例えば年4回の定期メールにすることもできる。定期メールなので文面はすべて同じでも良いが、ただ2、3行でも挨拶文を足したいところだ。この定期メールもそうだが、ハガキのフォームを作っておけば、いちいちそれに頭を悩ませる必要もない。最近はメールという手段もあるが、感謝としての「物的証拠」を残すためにも、ハガキの方がなお良いようだ。

ハガキからニュースレター、地域新聞も

ハガキを出す習慣ができれば、例えば一度顧客になっていただいた方をリピーターに、そしてファンにするために、「ニュースレター」や「地域新聞」を発行するということも考えられる。もちろん、ベストな方法は社長や社員がそれぞれに定期的に既存客を訪問、挨拶して回ることだが、そんな時間やコストをかけることには限界がある。増して顧客も忙しい。変に回ると、却って顧客の仕事の邪魔になりかねない。

しかし、その「ニュースレター」や「地域新聞」にしても、やる限りは徹底しなければ、それこそ途中で止めるようなことにでもなれば、却って逆効果になる。何でもそうだが、思い付きなら誰でもできるのだが、それをやり切るところに常識を越える価値が生まれる。どの業界でも一定のサービスが付いていて、顧客の方でもそれを当然と認識している。この常識を打ち破り、その上を行くサービスをどこよりも熱心に実行すれば、顧客は予期しないサービスに一瞬驚き、その後で喜ぶことになる。
こうして顧客に喜びを与えることができれば、働く方もますます仕事が楽しくなり、さらに顧客の役に立つサービスが自然とできるようになるのだ。