不祥事の原因は?

昨年も相変わらず製造業の現場で品質などの不祥事が相次いだ。いまさら他社のことをあげつらうのもどうかと思うが、経営論として少し振り返って見たい。

まず、例によって不祥事の起きた言い訳として良くあるのが、トップが知らなかったというものだ。もちろん、だからといってトップの責任は免れないが、そもそもこうした悪い知らせが上がってこないこともトップの責任といえる。昨年立て続けに起こった、製造過程で不正が行われたり、品質管理がずさんであったりすることは、メーカーにとっては死活問題のはずだ。そんな重要なことが伝わらないというのは、トップが現場に足を運ばず、実態を把握していないからだ。

私は実家が町工場を経営していたので、学生時代の夏休みなどに現場に入ったりしていただけだが、その拙い経験から見ても現場で不祥事が起きる原因はいろいろありそうだ。

まず、慣れからくる「これくらいの不正は問題にならないだろう」というもの。それには、「どうせ分からないだろう」という甘えもあるかもしれない。それに、現場にある原価低減活動やその他様々にある改善活動などで疲れが出ていることもあるだろう。また、縦割りの組織の弊害である部門の問題が他に伝わらなくなっていることもあるかもしれない。

緊張感は保っているか

最近の人手不足で、働き方改革に取り組まなければ人材の採用面にも悪影響が及ぶような世の中だ。風通しの良さを売りにして、社内での互いの呼び方を役職名ではなく、「○○さん」とさん付けで呼ぶなどの工夫をしたりとそれはそれで良いのだが、中には企業全体が仲良しクラブのように成り果ててはいないかと心配になることもある。企業が発展するためにはきっちりした規律が求められるのは当然だろう。トップは現場にもっと緊張感を持たせる経営をしなければならないのではないか。だからといって、現場に圧力をかけろと言っているのではない。トップは常日頃から現場に入って、研究開発やモノづくり、営業の最前線で何が起きているのかを把握しておかねばならない。そうすることで緊張感は自ずと保たれる。

トップが忙しいのは分かるしそれが当たり前なのだと思う。しかし、だからといって肝心の現場を掌握していなくても仕方ないという理由にはならない。優先順位が逆になっているのだ。現場を知らずして目標を掲げても、そんな目標を現場の誰が真剣に取り組もうとするだろうか。こうしてせっかく掲げた目標も絵に描いた餅になってしまうのだ。そして、現場は自分たちの論理を作り、そこに慣れや甘え、疲れなどが起き、不祥事につながってしまう。

企業のトップは楽をしていないか?

今さらいうまでもない話だが、トップ自らは決して楽をしようとは思わないことだ。「権限移譲」などと言うと聞こえはいいが、「任せて任さず」が大切だ。放任になってはいけない。放任になると現場の理屈が強くなり、全体最適を失ってしまう。だから、任せるけれど、常に注意深く見ておかなくてはいけないのだ。それをしないのは、トップとしてやるべきことをやっていない。無責任だ。

特に中小企業のトップなら、事務所に鎮座していては務まらない。情報も何も入ってこなくなる。自分で動き、自分で感じ取り、自分で考え、自分でつかみ取らねばならない。トップ自ら従業員の見本となる動きをしなければ、誰も着いてこない。ここぞという時には猛ダッシュで目的を達成するまで走り続けなければならない。最後まであきらめず、やり切る力がそのまま企業を伸ばす原動力となる。

トップはこれをしようとした時に、結果を残すまでやり続け、絶対に手抜きをしないことが肝要だ。目的を達成するために考えられる方法をすべてやってみると、そのうえでこれだというものが感触で得られるものだ。しかし、ほとんどのトップが途中であきらめ、頓挫し、力尽きてしまう。

もう一度根本を見直そう

今さら、CSR(企業の社会的責任)など持ち出せばすぐに「古い話ですね」と冷たく言われ、法令遵守が大切なのではと返せば、「そんなこと常識でしょう」とやり返される。しかし、言葉で分かってはいても、まったくそれが体質となってしみ込んでいなかったことが、昨今の連続不祥事で明らかになった。私が現在関わっている企業にしても、派手なスポーツ競技の協賛を行っていたりする。あるいは、どこかの慈善団体に寄付をしたりして、それで社会的責任を果たしているかのようにふるまっている。

そんな企業に共通するのは、相次ぐ企業の不祥事を単なる「事件」として受け止めていることだ。そんな受け止め方をしていると、「かつて日本は誠実な国で、そこで作られていた製品は品質や納期など模範とされていた」と、過去形で語られるようになる。何を差し置いても、責任ある製品やサービスを世に出すことの根本を押さえずして、「法令遵守など常識でしょう」などと言う資格はない。そんなこと幼稚園や小学生の子供でも分かる道理だ。新年を迎えて、これからますます日本の企業は奮励努力しなければならない。いくら業績が良くてもすぐに根本を忘れるようでは「成長している」とは言えない。