B to Bの奥行き

この夏、私の高校の時の同窓会が行われた時、Bto Bの仕事をしている友人と話しをした。その友人は繊維メーカーにいて、長年営業の仕事をしていて、事業の相手はアパレルメーカー。そのアパレルメーカーの中でも窓口は研究開発の部署の方だと聞いた。しかし、なかなか売り込みは大変で、しかも相手も開発中の話になるのでどういう形で実際に使われるか分からない中を、新しい素材の売り込みをかけるのだという。

そして、やっと研究開発の部署の方に売り込みを成功させても、実際にそれが商品にならなければ取引はそこで終わり。それなら、商品化のカギを握るマーケティングへも売り込みをかければいいのだが、長年の慣習でそれができていなかったとか。そんなものかなあと思いながら話を聞いていたが、さすが大企業。窓口をどこにするかで、商品の売り込み方も変わりそうだ。

もちろん、研究開発へも売り込みは必要だろう。そうでなければ、いざ商品化するからといって、それから営業をかけても遅い。マーケティングへの売り込みは、研究開発への売り込みとダブるのではないかと思われるかもしれないが、市場を見る視点が異なる。商品化でマーケティングからも後押ししてもらうには、そこへの営業はやはり必要だ。それら部署間の調整ができるならなお良い。

複数の窓口を持つ

一般にBtoBの仕事といっても、かようにその売り込みは複雑だ。直接にそれが必要な部署だけでなく、関係する部署へも営業した方が良い場合が出てくる。しかし、これといった戦略もなく、ただ研究開発部署や購買部にひたすら営業するだけの旧態依然としたビジネスモデルを当然として続けているところも多いのではないだろうか。それでは単なる出入り業者としての扱いしか受けることはできず、存在価値は低いままに終わってしまう。

同級生の話は、そんな中でもやり方は開けるものだということを教えてくれる。それは素材を売っていても、それを使う顧客の商品がいったいどうしたら売れるようになるのだろうという視点で企画・立案し、それを顧客のマーケティング部門へ行ってプレゼンテーションするのだ。もちろん、そう一口でいっても、その一つ一つにもハードルはあって苦労はするかもしれないが、その方がずっと合理的でもある。

その結果、顧客の担当者から認められ、その担当者と話し合いながら方針を決めるなど、開発から販売に至るまでのプロジェクトのすべての工程に関わることもひょっとしたらできるかもしれない。

「Bto B」から「B to B to C」へ

ときどき目にする「B to B to C」というビジネスモデルはそういったことを指すのだろう。企業間取引とはいっても、顧客である企業の顧客まで視野に入れて、総合的なマーケティング戦略を立てて、それを実行するのだ。

しかし、その商品の売れ行きを左右するのは、今の時代、コンビニの棚を確保することがカギを握っていたりする。どんなに長期的な成長を見込んでいても、目先の売れ行きが悪ければ棚から商品を引き上げられてしまうからだ。ということは、最終的に消費者の動向まで視野に入れたマーケティングが必要になるということでもある。

何だかだんだん話が広がってきてしまったが、実際にこうした動きへの対策をとっている企業が増えてきているように思う。つまり、セールスプロモーションとパブリックリレーション(広報)を融合させた取り組みだ。例えば、コンビニやドラッグストアの店頭キャンペーンと同時に、新聞や雑誌などのメディアにも同じテーマで情報を露出させることによって、より確実に販売につなげていくのだ。

いろいろなチャンスがころがっている

テレビCMを中心にした広告プロモーションの時代はやがて終わるといったことがマーケティングの世界でよく取り上げられる。確かに、メディア、企業、消費者のコミュニケーションのあり方が大きく変わりつつある今日、インターネットを使ったウェブプロモーションやブログ、SNSの活用といった新しい手法に関心が集まったり、口コミの有用性が改めて見直されたりしている。

しかし、大事なことは広告、広報、店頭プロモーション、口コミといったように従来からある手段をすべて意識的に組み合わせることで、その効果は計り知れないほど大きくなるのではないかということだ。それがコミュニケーション・ミックスの時代だ。私の同級生のように、それを実現するに際しても、さして専門スキルや特殊な条件は必要ではない。ただ個人や組織などと目的を共有し、周囲を動かす力、つまり知恵と行動と説得力は要するかもしれない。

B to Bといってしまうと、何だか地味な感じがしてしまうが、その中味を考えると奥行は広い。ステレオタイプ的に営業の型を決めてしまわないで、いろいろな創意工夫をすることができる。それはいろいろなチャンスがあるということでもある。