生産性向上への努力

ここ数年の「働き方改革」における残業代の見直しで、従業員の残業代は減っているといわれる。それが生活給の一部と考えていた従業員にとっては、給料の手取りが減ったことを不満に思っていることだろう。確かに生産性を上げて残業が減ったのであれば、従業員の不満も納得できるが、果たしてそうなのか。

生産性の向上に向けた取り組みには様々な事例が報告されている。会議やメールを減らして社内コミュニケーションの無駄を無くしたり、社内の情報を一元管理して有用な情報を共有化したり、従業員一人ひとりの今日一日のやるべき仕事を可視化したり、必ずしも出社する必要のない業務については在宅勤務を取り入れたり等々。

その残業代はいくらの売り上げに相当するか

こうした努力を重ねる上で、従業員だけでなく経営者においても残業代の重みを知っておく必要がある。仮に今、毎月5万円程度の残業代を得ている従業員がいたとしよう。この5万円を取り戻すには、いくらの売上高が必要か考えたことがあるだろうか。答えは、経常利益が5%の会社で100万円だ。つまり残業代5万円は100万円の売り上げに相当するということだ。残業がそれだけの価値を持っているかどうかが問題だ。

経常利益が5%の会社としたが、中小企業ではそこまでの利益水準を確保しているところは少ない。手元の資料ではここ10年の小規模企業の平均経常利益率は1.2%、中規模企業で2.4%、大規模企業でも4.5%に過ぎない。

意味のない残業を断つ

それなのに、これまでの残業の理由が、「そもそも上司が残業しているので帰りづらい」、「遅くまで残っている方が頑張っているように思われる」、「家に帰ってもすることがない」などが本音であることも多いと伝えられている。そうであれば、それは最初から残業ありきで仕事をしているだけで、意味のないことが続けられているに過ぎない。

経営者であれば特にこうした実態を重く見る必要があるだろう。そして、やはりこれは業務改革を行う機会としてとらえるべきだ。まず現状をしっかり調査して、どういう課題があるのかを洗い出し、その対策を期限を付けて行ってみるのである。その過程をオープンにして、残業代を生活給の一部として考えていた従業員にも納得できるようにするのだ。

人はお金だけで動くのではない

これは残業代に限った話ではない。他の経費についても考え方は同じだ。但し、こうした数字に換算して考えるのは効果的だと思うが、何でも行き過ぎるとよくないこともある。早い話、会社の業績に功績があったからといってむやみに賞金を出す会社があるが、一回お金で人を動かそうとすると、その後はお金がないと動かなくなる恐れがある。

デール・カーネギーの「人を動かす」という著書の中には、人を動かす三原則というのがあって、「①盗人にも5分の理を認める、②重要感を持たせる、③人の立場に身を置く」とある。人を動かすにもいろいろな方法があって、お金だけが唯一の方法ではないということだ。経営者たるものは心しておくべきだ。