仕事の成否は気配りにあり

街を歩けば道路の幅いっぱいに仲間連れで歩く人たち。夜の公園で騒ぐ家族連れ。電車の中では、ドア付近に固まる人たち…。今に始まったことではないが、周囲に対する気配りが無さすぎる。老若男女を問わない。こんな人たちが、仕事で成果を上げているとはとうてい思えない。

私は仕事をするに当たって、何が一番求められる資質かと問われれば、迷わず「気配りができること」を上げる。周囲やお客様に対する気配りができなくては、社内でも協力を得るのは難しいし、お客様のニーズをくみ取ることさえできない。入社試験の面接などでも、この気配りができるかどうかをもっと判断に取り入れるべきではないかと思うほどだ。

気配りができる=視野が広い

気配りができるということは、視野が広いということにつながる。車が売れない時代にあっても、突出した営業成績を残している営業マンが日産自動車の販売店にいるらしい。この方の販売成績は10年以上連続で社内トップ。営業日で換算すると2日に1台の割合で車を売っているという。

この方の営業は、毎日担当エリア内にある住居を見ることから始まる。まず駐車場にある車の年式や外観、タイヤのすり減り具合から、長く乗っているようなら買い替えの意欲は高いと判断する。同時に家の外観からも、その大きさや構造から居住人数を、そして干してある洗濯物や自転車の数と種類から子供の年齢などを推測する。

イメージを絞り込んで営業

こうしてその家の車の買い替え意欲はもちろん、次に買いたいと考えている車種のイメージまで絞り込んでから訪問するのが、この方の「仕事術」だという。キャンペーンの中身を訴えるだけの普通の販売員とは異なり、多くの顧客は、訪問早々に自分が抱えるカーライフの悩みを言い当てるこの方を、簡単には無視できないということだ。

こんなことができるのも、周囲の観察ができているからなのだ。こうした方は社内であっても、家庭においても、地域社会においても、その観察力で気配りを大いに発揮しているに違いない。これからの時代、こうした気配りは営業マンとしての成績に留まらず、企業人として成功するうえで欠かせない。

入社試験でも項目の一つに

仕事のできる人はTPOを問わず無意識のうちに周囲に気を配り、想像力と予測力を働かせて、自分も他人も心地良くいられるよう配慮しているものだ。そういう人の周りには自然と人も集まってくる。顧客への接し方でも相手の立場に立つことが自然に身についているので成果も上がるのだ。

だから入社試験の中でも、例えば面接の順番を待っている時の態度であったり、面接を終えた後の周囲に対する配慮などを、判断のポイントに加えるべきなのだ。気配りができるかどうかは、廊下に置いている長椅子の座り方一つにも現れる。もっとも、判断する側にしてもそうした細部に気付くかどうかが問題としてあるかもしれないが。