社会の動きを統計から見る

普段はあまり考えないのだが、時間がある時にふと総務省や経済産業省、厚生労働省などから出ている統計を見ていると、「へえ~」と思うようなことを発見することがある。これら各種統計には直近といっても数年前のことが多いが、それでも現在の状況を推測するには十分だ。それらをちょっと覗いてみると…。

まず中小企業の企業数は、一次産業を除く中小企業の構成比は99.7%になっている。これを産業別でみると多い順番に①小売業、②宿泊業・飲食サービス業、③建設業、④製造業、⑤生活関連サービス業・娯楽業…と続く。次に従業者数を見てみると、日本の全従業者数に占める中小企業の従業者の割合は68.8%で7割弱だ。これを産業別にすると、多い順番に①製造業、②小売業、③宿泊業・飲食サービス業、④建設業…となる。企業数では小売業がトップに来るのだが、従業者数では製造業がトップに来るのが面白い。

また、これらの産業を全従業者数に占める中小企業の従業者数の割合が多い順番に見ると、①医療・福祉、②建設業、③鉱業・採石業・砂利採取業、④教育・学習支援業…と続く。また建設業は、全従業者数に占める小規模企業の割合が最も多くなっている。

低水準ながら増加していた開業率

次に開廃業率を見ると、その推移は諸外国と比較すれば低水準であるとよく言われるが、それでも仔細に見てみると、特徴を持った推移の仕方をしていることが分かる。

開業率は2001年以降緩やかな上昇傾向にあった。2001年度の開業率は4.4%だったが、2017年度では5.6%に上昇している。但し、2018年度は開業率は減少して4.4%に落ちている。一方で、廃業率は1996年以降増加傾向が続いていたが、2010年以降は減少傾向に転じた。そして、2010年以降は開業率が廃業率を上回り、その差は拡大している。但し、2018年度は開業率が下がったため、開業率と廃業率の差は小さくなっているのだが。

これを産業別に見ると、開業率、廃業率ともに最も高くなっているのが宿泊業・飲食サービス業だ。ちなみに、開業率が高い順番で見ると、①宿泊業・飲食サービス業、②情報通信業、③電気・ガス・熱供給・水道業となっている。廃業率では、①宿泊業・飲食サービス業、②生活関連サービス業・娯楽業、③小売業と続く。

ちなみに私の顧客に多い製造業は開業率、廃業率とも全業種平均より低い。設備投資額が多額になることが多く、一度始めたらそれがサンクコスト(埋没費用)になり、簡単には止められないということなのだろうか。また、建設業の開業率は全業種平均より高く、廃業率は全業種平均並みとなっている。

手堅い商売はどれ?

さらに経営指標の数値は皆さんにも興味を持ってもらえるかもしれない。収益性を表す指標として自己資本当期純利益率(ROE)を見ると、不動産業・物品賃貸業や建設業で高くなっている。一方、低いのは生活関連サービス業・娯楽業や小売業だ。売上高経常利益率を見ると、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、情報通信業らが高い。一方、低いのは小売業、卸売業、生活関連サービス業・娯楽業だ。特に小売業では1.20%の低い数値になっている。

しかし小売業でも効率性についての指標は良い。総資本回転率を見ると、小売業業が1.78回、卸売業が1.70回とこの2つの業種が高い。一方で、不動産業・物品賃貸業は0.35回、学術研究・専門・技術サービス業は0.66回となっており、これら2つの指標で好対照を示しているのは面白い。

また、安全性指標として自己資本比率を見ると、高いのは①情報通信業、②学術研究・専門・技術サービス業、③サービス業となっている。低いのは、①宿泊業・飲食サービス業、②小売業、③生活関連サービス業・娯楽業だ。特に宿泊業・飲食サービス業では15.21%の低い数値になっている。

アフターコロナで再成長なるか

これまで中小企業の景気は2008年のリーマンショック後に大きく落ち込み、その後は2011年3月の東日本大震災や2014年4月の消費税引き上げの影響でところどころで落ち込みはしたものの、総じて緩やかな回復基調で推移してきたとされる。しかし、2019年に入ると、米中貿易摩擦の影響による外需の落ち込みや、2019年10月の消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動減に加え、台風や暖冬の影響もあり、特に売上高は2019年第3四半期に減少に転じた。それでも注目したいのは、経常利益や設備投資はほぼ横ばいで推移したことだ。

2009年以来10年連続で減少してきた倒産件数は、2019年に11年ぶりに前年を上回った。しかし、それでも長期的に見ると1990年以降の30年間で3番目に少ない水準であった。これがこの先どのように推移するのか。特に倒産件数の大部分を小規模企業が占めている現実を見ると、これから先はよほど気を引き締めて臨まないと厳しいと見なければならない。政府に新たな支援を求めるのも必要だろうが、これから先、アフターコロナの新たな社会にまずは必要とされる社会における立ち位置を改めて見つめ直すのも良いのではないだろうか。