一方通行になりがち

コミュニケーションというのは本来一方通行では成り立たず、双方向なものだ。何故こんなことを持ち出したかというと、今、企業の中ではこの「双方向のコミュニケーション」を重視しているというある調査結果が目に留まったからだ。ひょっとしたら、コロナ禍でインターネットを通じたリモート会議が増えたことも関係しているのかもしれない。つまり、営業や会社内での打ち合わせなどで直接面と向かったやり取りが減っている状況に対して、意識しないと情報のやり取りが一方的になってしまい勝ちになるという現実があるのかもしれない。

たとえ上司が部下にメールを送っても、送って情報を「伝えたつもり」になっているだけで、本当に送られた人がそれを見ているのか、見ていたとしても送り手の真意まで伝わっているのか確認することが難しい。こんな時、上司は部下とコミュニケーションをとっているつもりかもしれないが、部下の側から見ればまったく伝えたいことが伝わっていないことが真実だったりする。そして、それが分かるのが大きな失敗が起きてからだったりするのだ。だからあえて、コミュニケーションが「双方向」にできているかどうかを確認しなければならない世の中になっているのかもしれない。

コミュニケーションは共同作業

これまでもコミュニケーションについての悩みは、企業に限らず組織が抱える基本的な問題としてあった。従業員が少なくても、経営者の考えることが素直に伝わっているとは限らない。増して、組織が大きくなればなるほど組織内での互いの意思疎通は難しくなる一方だ。面談の回数を多くすればいいものでもない。たとえ面談しても、一方が質問し、他方が答えるという繰り返しであったり、両者が話しているものの、お互いに相手の話をまったく聞いていなかったり、こちらが聞こうと耳を傾けているのに、相手が話そうとしない…など、これほどのあからさまなパターンではなくても、これに近い形になってしまうことが多いものだ。

「双方向」のコミュニケーションは自然に起きるわけではない。必ず自分のコミュニケーションの在り方を見つめなおしたうえで、意識的に「双方向」になるように努力しないと決してそれは実現しないものだ。そして、相手をそのコミュニケーションに招き入れ、相手にも「双方向」のコミュニケーションを成立させるための協力を得ることが必要になってくる。自分と相手の共同作業によって、初めてこの「双方向」のコミュニケーションが成り立つことを肝に銘じなければならない。ところが「自分は大丈夫」と考える人が多く、なかなかその実現に至るのが難しいのが現実だ。

社外とはSNSで双方向に

何故、難しいのか。それは第一に現実のコミュニケーションの在り方に対して、なかなかフィードバックがなされていないからだ。「今の私の話し方について何か気が付いたところがあったら教えてください」「今の話について分からないところがあったら質問してください」と、相手をコミュニケ―ションに招き入れるための投げかけを意識的に行えればよいのだが、なかなか忙しくしている時にそんなことにまで気を回している時間も余裕もないというのが本音だろうか。それで営業に失敗したり、時間までにできているはずの資料ができていないことがあって、初めてコミュニケーションに問題があったことが分かるのだ。

一方で目を社外に転じると、企業がSNSを用いて消費者などと直接互いの意思や感情を伝え合うコミュニケーションが今、流行っている。ビジネス、マーケティングにおいてはこれまでのように企業から一方的に情報を発信するたけでなく、消費者などの顧客の意思や感情を積極的に収集しようという動きだ。顧客が抱えるニーズや、企業が商品やサービスの改善点を把握するのに有効な方法として注目されている。だから余計に社内で必要な「双方向」のコミュニ―ションをなおざりにしてでも、流行りのSNSを用いた外部とのコミュニケーションに目が行くのかもしれない。

信頼感が大切

しかし、社内で双方向のコミュニケーションができていない企業が、たとえSNSという流行りの手段を用いるにしても、外部との双方向コミュニケーションならできるのかという疑問が頭をよぎる。たとえ顧客とのコミュニケーションがうまくいっていても、それを社内に伝えるコミュニケーションがうまくいっていないのであれば、効果は減少しそうなことぐらい容易に予想もできる。もし外部からの問い合わせなどに対して改善を考えるのなら、同時に社内のコミュニケーションの在り方も見直してみてはどうだろう。きっと目から鱗の発見にいろいろ出くわすのではないだろうか。

コミュニケーションで大切なのは言葉だけでなく、その背後にある相手の思いや気持ちも受け止めることだ。だからといって黙っていく「傾聴」に徹すれば良いわけではない。優れた聞き手は相手の話を聞きながら、発見や洞察を引き出すような「問いかけ」をしたり、話し手が「支えられている」「信頼されている」と感じることのできる反応を返したり、聴きながらその感想をフィードバックしたり、受けたりしているものだ。簡単なことのようでなかなか奥が深く難しいが、そうしたことが社内外で実行できればきっと社風も変わるし、この先の企業の発展も間違いのないように思えるのだがいかがだろうか。