ゲームで先行したAR、VR

ARやVRと言われても、あまり驚かなくなった。最近はMR(結合現実)、SR(代替現実)なども出てきて、これらを総称してXR(クロスリアリティ)と呼ぶようになっている。

このARは拡張現実、VRは仮想現実のことを指す。ARは2016年に発売されたスマートフォンアプリの「ポケモンGO」でお馴染みかもしれない。位置情報を使うことで、スマホの画面内に現実の風景とポケモンを一緒に映し出し、その場にポケモンが登場したように感じることができる。ポケモンに馴染みのない方には、テレビのプロ野球中継の画面に現れる、ストライクゾーンにピッチャーの投げたボールの位置が映し出されるのはよく見かけるだろう。

このARが現実にデジタル情報を付与し、CGなどで作った仮想現実を現実の世界に反映(拡張)していくのに対し、VRはもう一つの空間・世界を創ってしまう。これはコンピュータ上に人工的な環境を作り出し、あたかもそこにいるかのような体感が得られる技術。2016年に「VR元年」と言われ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が多数発売され、360度のゲームの世界を体感できるようになった。今ではそのゴーグル自体、非常に安価なものが出回るようになっている。

宇宙を身近に体感

これらの技術がいつまでもゲームなど一部の用途で終わるわけがない。アメリカ航空宇宙局(NASA)は再び人類を月面、そして火星に送り込む計画を立て、その計画の実現に必要な国民の支持を得るためにVRを活用して宇宙を疑似体験できるプロジェクトを進めている。

複数の有人宇宙飛行計画が進められているアメリカだが、今年は奇しくもアポロ11号が人類初の月面着陸に成功してから50年の節目に当たる。NASAではこのタイミングで、2024年までに再び人類を月に送り込む計画を進めている。しかし、同計画の実現には数百億ドルとされる規模の追加予算の確保が必要となり、そのためには有人宇宙開発に対する国民の支持を集めることが必要不可欠なのだ。

そのための対策の一つとして期待をかけているのが、国際宇宙ステーション(ISS)内外の映像を使用したVRドキュメンタリー映画だ。NASAはこれまでにも数々のドキュメンタリー作品の制作への協力のほか、ソーシャルメディアを活用した情報発信を積極的に行ってきた。今回、VRを活用することで、これまで画質の粗いテレビ放送では実現不可能だった臨場感あふれる宇宙の映像を人々に届ける計画だ。

現実のビジネスにも利用が広がる

これが実現されれば、観客はVRを通じてまるでISSの乗組員になったかのように宇宙空間を体験できる。地球の何百万人を宇宙の探査に直観的につなげるこの手段は非常にリアルなものになる。このため現在、ISS内には独自にカスタマイズされたレンズを搭載したVRカメラが設置され、ISSで働くクルーの生活や行動を撮影している。360度全方位を撮影できるこのVRカメラでは、クルーが研究や訓練を行う映像を収める。そして、クルーが行う宇宙遊泳などを撮影する計画もあるという。

VRの話題としては面白いかもしれないが、ちょっと突飛すぎるとお考えの方もおられるかもしれない。しかし、ARやVRといっても決してゲームの世界だけのものではなくなっているのが現実だ。製造業においては製造や保守、点検トレーニングへの活用が進む。実際の作業環境をVRで再現し、作業者はその中で作業手順を頭と体で覚えることで、「習うより慣れろ」を体感する。特に組み立て作業のような作業手順を覚えるのが一苦労というようなものには最適だ。また、危険を察知する安全教育などにも都合が良い。原子力設備の中の作業や、高所作業などの危険な個所でのシミュレーションを行えることは、作業の効率を上げるだけでなく、実際の事故を防ぐことにもつながっている。

スマホでも利用可能に

既存のシミュレーションはモノの大きさを実物大で表すことが不可能で、どんなにパソコン上でシミュレーションを重ねても、実際の感覚とはズレがあった。しかし、このVRを使うことで、より現実に近い空間を再現することができるようになった。さらに、今ではVRの空間を使って、その中でモノを自由に作ってしまおうという試みも始められている。HMDと手にコントローラを身に着け、VR内の特別工具で材料を吐出したり、切ったり削ったり、磨いたりして模型を作ることができる。自らの体を使って作業するため、より空間を認識することができる。

このようにARやVRはすでにビジネスでも利用され出している。これまでは専用のデバイスやアプリがないと利用できなかったが、スマホでの利用さえ可能になっている。労働力不足、生産性向上、品質向上、コストダウン、競争力ある製品づくりなど、AR、VRは企業が直面する様々な課題に大なり小なり解決策となる時代となっている。Webぺージに埋め込めば、簡単にAR機能を追加することもできる。技術の進化をどう利用するのか、その知恵がここでも試されている。

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