相手の問題をどれだけ考えられるかが差別化のポイント

私は一人で仕事をしている。社長兼社員だ。まだ起業して2年半ほどなので、仕事が忙しい時もあるし、そうでない時もある。営業も私一人でやっているので、受注した仕事をやり切ることにかかり切っていると、その先の受注がとれずにしばらく営業であたふたすることになる。波が激しいのだ。でも仕事がない時、「何か仕事をください。僕を使ってください。」と回っていては、余計に仕事が遠ざかるように感じている。例えば、風呂の暖かな湯を自分の方に寄せようとしても、その湯は返って遠ざかるような感じだろうか。それより自分から提案と約束をしていると、仕事の方から自分に近づいてくることがある。

普段の生き方にも工夫を凝らすようにしている。まだ完璧とは程遠いが、自分ではなく世の中の人を中心に考えるようにしている。人の感情を理解しよう、何故こんな風に感じられるのか、そして深く掘り下げよう、どこからそのような価値観が生まれたのかと考え続ける。こんな風に考えていくと、大切なものは何か、自分はどう働いたらいいのかなど、沢山の気づきを得ることができる。そうして目の前の相手を優先して考えていると、仕事の仕方や質まで変わってくるように思う。要するに、相手の問題をどれだけ考えられるかが、自分を他の人と差別化する方法ではないかと思っている。

3つのタイプの営業マン

例えば、今ここに営業マンが3人いたとする。
一人は顧客のいうことを何でも聞くタイプだ。今すぐミカンを10万箱用意して欲しいと言われたら、それが季節外れだろうが何であろうが奔走してかき集めるのだ。そうして大口受注に大喜びしている。
二人目は自分の売りたいものを売るタイプだ。ミカンを10万箱仕入れてしまったので、それを何が何でも売り切ろうとあくせくする。売り切るためなら、たとえ顧客がリンゴを欲していたとしても、そこは何とか言いつくろってミカンを押し付けようとする。こんなタイプの営業マンもまだまだ世の中沢山いる。そして無事10万箱売り切って満足するのだ。
最後の一人はまず、顧客の要望を聞くタイプだ。顧客がミカンを欲しいと言っても、自分がミカンを持っていても、まずは顧客の話をじっくりと聞き、よく観察し、そして本当に顧客に必要で、幸せになるためにそれがベストな選択なのかを考える。

そして、その結果、自分から新しい提案をするのだ。それはミカンを売ることかもしれないし、リンゴかもしれない。もしかすると果物とはまったく別のものを提案するかもしれない。時間はかかるが、その営業マンも最後には取引成立となる。

業者になるか、パートナーになるか

私が心がけているのは、この最後の営業マンになることだ。
どんな仕事にも取引先がいるが、その関係性は2種類に絞られると思っている。つまり、それは「業者になるのか、パートナーになるのか」だ。先ほどのたとえ話で言うと、最初の2人の営業マンは業者で、最後の一人がパートナーということになる。

業者の不満なところは、業者である以上は二社の関係は発展しないというところだ。相手に言われたか、自分から提案するかの違いはあるが、いずれにしてもミカンを「売ります。買います。」という約束をして納品を済ませたら、それでその関係は終わってしまう。

どれほど大きなお金が動いても、それでは単なる作業だ。相手はこちらを尊重することもないだろうが、こちらも相手のことを考える必要もなく、ましてやその先にある顧客の事情などを考えることもない。考える工夫どころか、考えること自体がいらないということは、それこそロボットで代用できることでもある。それはあまりにも悲しいことなのではないだろうか。

相手を熟知する

ことは取引先だけの問題ではない。社内でも、もし私のように一人で働いているのでないなら、上司と部下の関係の中で上司に「こうして、ああして」と言われて、ただ言われた通りにしているだけだと、それはただの業者と同じになってしまう。それでは自分も消耗していくだけだし、上司のためにもならない。会社に貢献しているようでその実そうではなくて、その先にいる顧客のために役立つことも難しい。業者は言われたことを言われた通りにやるだけだから、代わりはいくらでもいるのだ。仮にそれで評価されていたとしても、それは「いつでも使える便利な人」というに過ぎない。
そんな悲しい役回りをするくらいなら、自分から提案し、約束をしていってはどうだろうかと思うのだ。「こんなことをしてはどうでしょうか」「そのために私は、これをいつまでにします」というのだ。

しかし、このためにはやるべきことが2つある。
第一に相手のことを熟知し、相手の問題を自分の問題として考えること。
第二に相手を知り尽くしたうえで、将来を見ること。

相手を熟知すれば、「今はこれが必要ですよね」「今後はこういう対策をした方がいい」というアイデアがどんどん湧いてくる。誰にとっても自分の将来を考えてくれる人は大切だ。なぜなら皆、不安と困りごとを抱えているから。それを解決してくれる存在はかけがえのないパートナーになるのだ。