増える中途退職

せっかく苦労して採用した新卒も、「3人に1人は3年以内に辞める」といわれる。確かに大卒の場合はその通りなのだが、しかし統計数字をなお詳しく見てみると、大卒以外はさらに深刻な状態であることが分かる。

短大卒・高卒なら10人に4人、中卒になると10人のうち6~7人が3年以内に退職することが最新の調査でも明らかになっている。しかも興味深いのは、いずれの場合も1年以内の退職率が最も高くなっているということだ。

大卒の場合、3年以内の退職率は32.2%だが、そのうち4割を占める12.2%、中卒に至っては3年以内の退職率67.7%のうちの7割に相当する45.5%が1年以内に退職している。だがら、企業の側から退職対策を考える時、まず最初の1年目に退職をさせないための施策を展開することが大切になってくる。

一方、会社の規模別の退職率を見ると、規模が大きくなるに従って退職率は下がることが分かっている。これは私見だが、人数が多いことで人間関係が多層化し、結果的に退職するかどうか悩んだ時に相談相手がいてフォローが行き届くために、退職を思い留まる人がいるのではないかと考えている。

縁を大切に

すでに相次ぐ退職者に悩む会社はその防止対策を様々に行っているところだろう。なので、ここではそれは触れないことにする。ここで注目したいのは、その退職後の対策だ。せっかく数多い学生と企業の中から一度は縁合って結ばれた仲なのに、たった1年でそれっきりとはあまりにももったいないのではないだろうか。男女の仲と同様(?)、本当に憎み合って別れるというのは少ないのではないだろうか。

直接消費者と関係する企業ならなおさら、退職者であっても一消費者として贔屓にしてもらわなければならない。また、直接消費者として接しなくても、退職者は同じ業界か関連する業界に興味があることは確かなのだから、今後どういうつながりが生まれるか分からない。ひょっとすれば、社内にいては気付かなかったつながりが生まれる可能性だってあるのだ。

実際に私の場合がそうだった。私が会社を辞めたのは入社してもう20年も経ったころだったが、その後の転職先でも退職した会社とのつながりが否応にも生まれた。別に私も退職時にそれを予想していたわけではなかった。むしろ、そんなつながりなどまったく考えもしなかった。しみじみと「喧嘩別れしたのでなくて良かったなあ」と感じたものである。

こころよく送り出す

もちろん会社を退職する理由は様々あるだろう。社内のコミュニケーションに悩んだり、自分のステップアップを図ったり、独立して起業する場合もあるかもしれない。人にはいえないトラブルで退職する場合もあるだろう。それでも、若い人ばかりでなく、今や年配の人にとっても働き方は自分で考える時代だ。終身雇用の時代とは異なり、定年まで同じ会社で働き続けることの方が少なくなっている。

そうであれば、どんな理由があるにせよ、送り出す会社の方でも、たとえわずかな期間であったかもしれないが、一緒に働いた仲間としてこころよく送り出してやる方が「得」というものだ。

アメリカでは、退職者が元いた会社がハブとなってその退職者同士がつながりを持ち、定期的に意見交換を行える場を持つなどのサポートを行っていることがあるという。そうした場で、新しい職場での困りごとや、アイデアを探している時などに解決の糸口をつかめることもあるようだ。

また、会社にとっては、退職した人から、外部の視点で自社の商品やサービスについて客観的に評価してもらい、改善点などのアドバイスをもらうこともできる。そして、自社の良い点は退職者を通じて宣伝もしてもらうのだ。

「出戻り」もOK

アメリカではまた、「ジョブリターン制度」を整えているところも多いという。やむを得ず退職した人や、退職後に他社でさらに知識や技術、経験を培った人の中には、また元いた会社で働きたいと思っている人も多い。すでに日本でも結婚や子育てのために退職した人たちが、元の会社に戻ることも多くなっているが、それを一般化したものだ。

ある製造会社では退職者であっても会社が行事として行う暑気払いや忘年会にはゲストとして参加ができ、会社退職後5年以内で年齢が45歳未満の退職者に限ってはいるが、「本人の希望しだいで、会社の審査により」出戻ることもできるという。

今より上を目指そうとする意欲のあるものほど、日々の行動パターンから脱却しなければ、誰しも自己の向上も望めないことをよく理解している。今の「安全で快適」なところに安住することにリスクを感じるものだ。

転職には「華麗な転身」とか「転職で高収入を得る」とかの華々しいイメージが伴いがちだが、その陰で数多くの失敗する例もある。それは今後も益々多くなっていくだろう。そんな時、会社に残って頑張り続けたものにも言い分はあるだろうが、元の会社が再度受け入れてやるぐらいの度量を持つことが、退職者と会社のいずれにとっても有益なのではないだろうか。

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