「昼寝は不謹慎」はもう古い

私の事務所の近くに小さな公園があり、毎年のことだがこれからの季節、日中は車で外回りをしている営業マン、タクシーの運転手、近くの建設作業員らの格好の休憩場所になる。昼食後の時間帯ともなるとそれぞれの車の中や公園のベンチで睡眠をとるのだ。近くに住む子供連れの母親たちが、その近くで遊んでいたりする。ひと昔前なら「サボっている」と見られたような光景だが、最近ではむしろこうした休憩をとることがその後の仕事の効率を上げると見られるようになっており、ひょっとしたら忙しい中でも昼寝の時間を取ることが「デキる」仕事人の象徴になるのかもしれない。

都心部でも働く人たちを狙った昼寝の場所を提供するサービスをあちらこちらで見かけるようになってきた。案外良い立地にあったりするので、ビジネスとしてもそこそこ成り立っているのではないだろうか。また、オフィス内でもスペースを設けて、業務時間中の昼寝を奨励している企業さえあると聞く。こうなってくれば、昼寝はもはや「サボり」の代名詞ではなく、仕事の効率アップの方策として立派に認知され出したということを指しているのかもしれない。まったく、これまでそこまで考えていたわけではないのに、昼寝の常用者としては心強い味方が現れたような感じだ。

午後2~4時は魔の時間帯

昼寝の効用はデータでも裏付けられているという。コンピューターなどの機器操作のミスは夜中に次いで午後2~4時に多いという。交通事故も、夜中に次いで午後に多くなるそうだ。以前から建設業などの仕事に従事する人たちは、ちょっとした油断や不注意が大きな事故を引き起こしかねないため、昼休みに食後のひと眠りをすることが日常的になっているそうだ。いずれにしても、少し寝るだけで頭がすっきりし、仕事の能率も上がり、おまけに事故まで減るというのなら、良いこと尽くめだ。忙しいビジネスマンほど一度試してみる価値はありそうだ。

実際、ショッピングセンターなどをブラブラしていると、デスクで昼寝をする人向けの枕や、香りや炭入りのアイピロー(目枕、目の上に載せて使う)などの昼寝グッズが多く販売されているので、私がことさら取り上げるより世間は進んでいるのかもしれない。ひょっとしたら、「シエスタ」と呼ばれる昼寝の習慣を持つスペインやイタリア、南フランスなどの国々の人もビックリといった感じなのだろうか。もっとも、シエスタは家で昼食を食べた後、2~3時間昼寝をして夜遅くまで働くという習慣なので、やはりこれは日本とは事情が違うようではあるが。

昼寝は20~30分以内で

その昼寝にしても「効率的な取り方」というのがあるようだ。一般的に言われるのが、30分を越えると睡眠が深くなるので、寝覚めが返って悪くなるようだ。ぐっすり眠っている最中に起こされるようなものなのだという。その後は頭がボーっとしてしばらく物事に集中できなくなる。身体もかえってだるい感じが残るようになる。

だから、年齢にもよるそうだが、昼寝は20~30分以内を目安にすると良いようだ。若い人ほど深い眠りに入りやすいので、時間は短めで良くなる。これなら、車のシートを倒した状態で横になっても、大した苦痛も感じずに眠れそうだ。

よほど忙しくてそんな時間も取れないという人には、1分間でも目をつむって静かにする時間を持つだけでも良いという。さすがに1分間では眠れないだろうが、情報の8割は目から入ってくるといわれる。確かにオーバーヒートしてしまっている頭を休息させるには無いよりましなのかもしれない。感覚的には気分転換にコーヒーを飲んだり、ちょっと席を立って身体を動かすのと同じようなものだろうか。いずれにせよ、誰しもがさらされている様々なストレスを、一時的にせよ完全にシャットアウトする時間を設けることは確かに必要なのだろう。

プロとしての昼寝

睡眠時間は統計的には7~8時間がベストだとされる。そのほかにも、「できれば22時には就寝すること」、「規則正しく栄養管理の行き届いた食事を摂ること」などが「正しい」睡眠の取り方として紹介されている。そうした指摘をすべて実行できるようならそれに越したことはないが、「そんなの無理」と思うビジネスマンは多いだろう。理想の睡眠と実体とはかけ離れているのだ。その乖離が計算力や判断力に影響をきたすことがデータでは確認されているという。そして、それにより仕事の効率も悪くなるのであれば、やはりそれをどこかで補わなければならない。

もともと人間は一定のリズムを保って生活をしていれば、1日に2度、眠気のピークが訪れるものなのだそうだ。最大のピークが午前2~4時で、眠りが最も深くなる時間帯とされる。そして2回目のピークが訪れるのが、午後2時~4時なのだという。食事の影響で眠くなる以外に、そもそも人間の「生体リズム」という避けられない影響でちょうど昼食後に眠気が訪れるわけだ。

「周囲からどう見られているだろうか」、「なんだか申し訳ない」などと余計なことは考えず、「プロとして午後のパフォーマンスを上げるために万全の態勢で昼寝をする」ことこそが今、求められているのかもしれない。