1円で利益の66%が吹き飛ぶ

仕事の関係で車関係のメーカーに出入りすることも多いが、文字通り「1円のコストダウンが生死を分ける」世界の厳しさに胸を打たれることも多い。自動車メーカーのスズキは売上高3兆円、利益900億円の立派な「大企業」。しかし、これだけの売上高と利益を上げるのに300万台の車を販売しており、1台当たりの車の売り上げは100万円で、利益は3万円でしかない。

さらに車は1台当たり大体2万点の部品から成っている。すると、1部品当たりの利益は1円50銭でしかない。1部品のコストが1円高くなると、利益の66%が吹き飛んでしまう計算だ。だから、スズキでは「1部品につき1円コストを下げよう」という取り組みを行っているそうだ。

気になるコスト

そこまででなくても、製造業に行けば、来客にコーヒーやお茶などの飲み物が出ないことも多い。これなども、コストにすれば特段に高いものでなく目立たないものであろうが、1日に何十人もの来客があると、そうもいってられない額になる。こういうコストについてとことんケチ臭く考えるのもやむをえないのである。

ところが、業種が違えばとてもコストに大らかな人たちがいる。私見で恐縮だが、私の周りを見渡すとサービス業の人たちにそれは多いように思う。ちょっとした打ち合わせでもコーヒーは出るし、時間も大して気にする風もない。それを見ていると、中でもサービス業の生産性が問題とされるのも納得のいく気がするのである。

金をかける前にすべきこと

やはり基本は「売り上げにつながらないコストは要らない」ということに尽きる。間接費はもちろん、たとえそのコストが直接費に関わるものであっても、本当に売り上げにつながるのかどうかを意識しなければならない。

売り上げを上げるためにどのようなコストをかけるべきかと考える際に、よく上がるのが「宣伝をして会社のイメージアップを図る」であったり、「店の改装をする」、「優秀な人材を採用する」などの提案がされるが、それより先にやるべきことがある。

会社のイメージアップを図るのであれば、まず来客に笑顔で接することだ。改装をせずともトイレなどの掃除を徹底すればよい。優秀な人材を確保する前に営業手法なり、人を育てる手立てを考えるべきだ。

経営を引き締める

金をわざわざかけずとも、自分たちでさまざまな工夫ができるところが面白い。まず思いつく限りの無料の策をすべてやり、その上で使ったコストがそれ以上の売り上げが見込めるかどうかを意識していくことで、無駄なコストの流出は間違いなく減っていくだろう。

肝心なのは、それで企業としていい数字が残せるというだけはない。何よりコストダウンを意識することで、経営が引き締まり、社員の意識の向上も図れるということが大きいと考えている。ボールペン1本の使い方から意識するのとしないのとでは、規律ある社風が育つかだらしのない会社に落ちてしまうのかの大きな差になる。