間違いの多い直感

私たちは日々、意識するしないに関わらず判断を迫られ、その選択の上に生活をしている。そして、そのほとんどを直感で考え判断することが多い。例えば、スーパーに並んでいる商品が安いのか高いのか(買って損なのか得なのか)、今会っている人がこれから先仕事で付き合いができる人なのかどうか等々。

しかし、その直感が間違っていることも往々にしてある。心理学を勉強してそれに備えるのも良いが、そこまでしなくても大体どういう間違いがあるのかを知って、合理的な判断につなげることは有効だ。特に広告宣伝などにおいては、その間違いを逆に利用して販売促進につなげることもできる。

損を回避しようとして犯す間違い

まず、「損失回避性」というのがある。これは得をする時と損をする時の価値の判断が異なるというものである。その結果、損を回避しようとして、今以上に損をすることになったりする。

例えば、「必ず1万円が当たるクジと、50%の確率で2万円、残り50%は0円が当たるクジがあった時、どちらを選ぶか」という質問と、「必ず1万円の罰金が科せられるクジと、50%の確率で2万円が科せられ、残り50%は罰金が科せられないクジがあった時、どちらを選ぶか」という質問を考えてみる。この時、どちらの質問の選択肢も期待値は同じなのに関わらず、多くの人は最初の質問には必ず1万円が当たるクジを選び、後の質問には罰金が科せられない可能性のある方を選ぶ。

ビジネスも人生も見切りが大切

また、「サンクコスト(埋没費用)の過大視」ということもある。例えば、ある製品を開発しようとしていて80%まで開発を終えている段階で、他社からそれより優れたものが発売された時、合理的な判断は「開発を止める」だが、往々にしてこれまでつぎ込んだ開発費用を惜しむあまり、残りの20%を投資して開発を続けてしまう。

これで有名なのが、「コンコルドの過ち」というものだ。イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機が開発途中で赤字になることが分かっていたのに、止めることができなかった。この結果、たった16機、7年で生産を止めるに至ったというものだ。人生も同じことで、「見切り千両」なる言葉もあるくらいだ。

手にとると返品しづらくなる

人は自分が持っているものに対しては2倍の価値を感じるといわれる「保有効果」もある。有名な実験で、「マグカップをいくらなら売るか」という質問に対して回答の平均が5.25ドル。それに対して、「いくらなら買うか」という問いには2.75ドル。通販などで「1週間以内なら返品が可能です」とされていても、実際には一旦手にとったら返品はほとんどないという事実もその効果を裏付ける。店先で客にアクセサリーを身につけさせてみるのも同じ効果により売り上げにつなげようとする試みだ。

これらの他にも私たちの判断にはいろいろなバイアス(偏り)がかかる。このことを利用すると商品やサービスの宣伝文句も変わってくるかもしれない。「脂肪分5%のヨーグルト」とするか「無脂肪分95%」とするかで、売れ行きも変わってくるのである。