お客様の発した一言が転機に

ある地方の駅からさらにバスで15分ぐらいバスに乗ったところ、人通りの少ない場所ではあるが価格競争とは無縁の人気の美容室がある。

しかし、店を始めた10年ほど前はそんなではなかった。来店客が1人、2人という日はざらで、「閑古鳥が鳴いていた」とその美容室の経営者である60代の女性は振り返る。

転機はある時、来店した客の何気ない一言だった。そのお客様は「早朝の時間にカットしてもらえませんか」とお願いをしたという。聞いてみれば、そのお客様は看護師をしていて、夜勤明けにカットして家に帰りたいと言う。普段の日の仕事帰りは夕食の時間の都合があるし、わざわざ休日にカットのために出かけるのも面倒というわけだ。

潜在的なニーズを掘り起こす

「そういえば、うちの美容室には医療関係のお客様が多い」ことに気付いた経営者。店の周りを調べると、確かに医療関連施設が多い。そこで、その店では「朝VIP」という早朝7時からのカットサービスを始めたのだが、これが当たった。

始めは同じ夜勤明けの看護師に口伝えに広まり、やがて「結婚式のために」とか「写真撮影するのでセットして欲しい」、「研修でお話しをするので」などといった潜在的なニーズをどんどん掘り起こしていった。


しかも、早朝価格は通常料金より高めに設定している。しかし、来店客の満足度は高く、「再来店率は90%以上を維持している」という。今では早朝以外でも満席状態の続く、地域で人気の店となっている。

ランチェスター戦略の実践そのもの

「小さな店舗が、他の大きな店舗と同じことをしていても決してうまくはいかない」ことを身を持って学んだこの美容室の経営者。
実はランチェスター戦略に「小さな会社は小さなものに目標を定めて1位を目指す」とある。この美容室の場合、その地域ではどこもやっていなかった早朝営業に取り組んだことが、地域1番店になるきっかけとなった。

この美容室はその後も医療関係者向けを意識して、ショートヘアーの技術を磨き、時間に追われる看護師などの、「勤務前のセットする時間を短くしたい」要求に応えたりしている。

カット技術では全国大会でトップクラスの賞を次々に獲得しているのだ。昔を知るお客様からは、その変わりようをからかわれたりするが、もちろん経営者にとって悪い気はしない。

問題意識を持ち続ける

ランチェスター戦略をマーケティングに応用すると、一つの特殊な分野に特化することで、そこまで手を回す余裕のない大企業の隙を突いてのし上がれる(ニッチ戦略)ことになっている。

つまり、弱者の取るべき戦略は差別化戦略で、敵より性能の良い武器を持ち、狭い戦場で力を一点に集中させることである。

その美容室の経営者は一時は店をたたむことも考えたという。結局その美容室を救ったものは何だったのか。ランチェスター戦略を初めから知っていれば、ここまでの苦労はしなくても済んだかもしれないが、より根本的には看護師の一言を捕まえることができた問題意識の高さとその感性、そしてその後の努力ではないだろうかと思う。

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