残業代は?労務管理は?在宅ワークを導入する経営者が注意すべき6つのポイント

現在雇用中の従業員を在宅ワークに切り替える、または新しく雇用する人に在宅ワークをしてもらう際にはいくつか注意点があります。
在宅ワークの導入に際し、知っておくべき労働基準法・労働契約法の6つのポイントについて解説します。

新しく雇用する人に在宅ワークをしてもらう場合

新しく雇用する人に自宅で働いてもらうには、労働基準法第15条・第1項、労働契約を結ぶ際に就業場所を書面で明示する必要があります。
在宅ワークの場合は自宅が就業場所となりますので、労働条件通知書にその旨を記します。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
出典:労働基準法第15条・第1項

現在雇用している人に在宅ワークを行わせる場合

現在雇用していて会社を就業場所としている人を在宅ワークに切り替える場合、労働契約法第4条・第2項に基づき労働契約の内容変更を書面で確認する必要があります。
雇用している人に対しては口頭のみで伝えるのではなく、書面で確認してもらいましょう。

労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
出典:労働契約法第4条・第2項

法定の労働時間

在宅ワーカーの労働時間は、基本的に基本的に1日8時間・週40時間の一般的な労働時間が適用されます。休憩時間、休日についても労働基準法に基づき、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えます。

変形労働時間制・フレックスタイム制

在宅ワークの場合、変形労働時間制やフレックスタイム制を適用することが可能です。
変形労働時間制は一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」いずれかの単位で労働時間を決めることができます。

フレックスタイム制は一定期間(1ヶ月以内)を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、始業・終業時刻を労働者が自由に決めることができます。

みなし労働時間制

変形労働時間制、フレックスタイム制以外に、みなし労働制について見てみましょう。
みなし労働制は「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3つがあり、デザイナーやエンジニアの在宅ワークには「専門業務型裁量労働制」が向いています。

「専門業務型裁量労働制」は情報処理システム、デザイン業務、コピーライティング、コンサルタント業務など19の業務に限り、実際の労働時間数に関わらず、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。19の業務の詳細については厚生労働省の公開している通知(専門業務型裁量労働制)を確認してください。

在宅ワークの残業代

在宅ワークでも法定労働時間を超える場合、残業代を支払う必要があります。
労働基準法第37条では以下のように定められています。

使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
出典:労働基準法 第37条

つまり、法定労働時間を超えた労働時間に対しては、2割5分以上5割以下の範囲で割増賃金を支払わなければなりません。
ただし、1ヶ月に60時間を超える時間外労働に対しては、5割以上の割増賃金を支払う必要があります。

まとめ

いかがでしたか? 従業員の働きやすさや仕事の効率を考えて在宅勤務制度を取り入れたのに、じつは法律違反だったのでは残念ですよね。事前に関連法規を確認したり、よくわからないことがあるときは社労士に相談するなどしてトラブルを未然に防ぎましょう。