誰にもある「セルフハンディキャップ」

東京オリンピック・パラリンピックが終わったが、コロナ禍の中それらを経て、経営者として「ともあれ無事に終わって良かった」と見るだけでは少し寂しいような気がする。特にパラリンピックの選手が見せてくれた身体のハンディキャップを乗り越えた競技の在り様は、私たちの心に深い感動を与えてくれた。

考えてみれば、私たちはみな多かれ少なかれ「セルフハンディキャップ」を持っている。セルフハンディキャップと言ったのは自分の心の中で自ら作ってしまった足かせのことだ。過去にどんな苦労、失敗を重ねてきたかは知るすべもないが、「どうせ自分には無理」とか「自分の能力はこんなもの」と思って日々を過ごしてはいないだろうか。特に創業間もない企業だと、経営者のそうした考えが、その後の企業の在り方を大きく左右する。こうした間違った思い込みが、本来持っている一人ひとりの可能性を抑え込み、人としての、そして企業の成長の足かせになっていることをまずは自覚しなければならない。人や企業は「こうなりたい」と思う以上のものには決してなることができないのだ。

自らを作り上げる意志を持とう

ピーター・ドラッカーの言葉にも、「私の知っているリーダーのほとんどが生まれつきのリーダーでも、育てられたリーダーでもなかった。自らをリーダーとして作り上げた人たちだった」とある。大切なことは、「自分に才能がないことを嘆くのではなく、自らを作り上げる意志を持つこと」だと言うのだ。

「できるわけない」と思ってしまうことの一番怖いことは、心がウソをつきはじめることだ。心があなたを説得して「やりたい」という気持ちまで抑えこんでしまうところにある。自分自身で自分が持つ才能を裏切ってしまうことほど、もったいないことはない。この「人は誰でもセルフハンディキャップを外すことで変われるもの」ということを訴えているのが、アクセンチュア戦略コンサルティング本部シニアプリンシパルの作佐部孝哉氏だ。

とは言っても、「あなたはハイパフォーマーになりたいですか」と問われて、「はい、もちろんです」と答える人は稀かもしれない。「ハイパフォーマー」とは自分自身や周囲から期待されていること、もしくはそれ以上の結果を出す人のこと。どんなに自信のある人でも、「まぁ、そうはなりたいですけど…」といった答えが多いものだ。作佐部氏は、まずやるべきことは、「自分は今、ハイパフォーマーなんだと決めてしまうことだ」と言う。

「やれそうか」より「やる価値があるか」

では、どうすればセルフハンディキャップを外して、ハイパフォーマーになれるのか。それは決して難しいものではなく、作佐部氏は以下の3つの方法を紹介している。

まず一つ目は、「判断基準を変える」こと。
何か自分が経験したことのないチャレンジングな仕事を依頼された時、人はどういう基準で判断しているだろう。多分「やったことがないから無理」といったように、「できるか、できないか」で判断してしまうことが多いかもしれない。責任感のある人、他人に迷惑を掛けたくないと思う人ほど、そういった軸で判断してしまいがちだろう。しかし、それではいつまでも同じ枠の中で、同じ場所をぐるぐる回っているだけのキャリアになってしまう。「できそうかどうか」や「自信があるかないか」を判断基準にするのではなく、「自分にとってやる価値があるのかどうか」という、その一点で判断してみてはどうかと提案する。

自分に「一段上の役割」を課す

二つ目は、自分の中で「一段上の役割を担っている」と意識すること。
「地位が人を作る」とはよく言われる言葉だが、役割を意識するようにすることで「らしく」振る舞えるようになる。そうして自分が振る舞っていると、脳は意識と行動の不整合を嫌うので、「自分がこういう行動をとっているということは、逆に自分はこういう人間に違いない」という認識を自然に深める。

「公に宣言する」

そして、三つ目は、自分が「将来やりたいと思っていることを広く公に宣言してしまう」こと。
それで思い出すのが、私が中学生の時、担任の先生にクラス中のみんなが、どうしても行きたい志望校を宣言するように言われたことがあった。仕事でも同じで、自己主張することは「やる気」の表れだ。「現時点では実力的に難しいかもしれないけど、将来的にやってみたい」と伝えることで、身の丈を少し越えるぐらいの仕事にも挑戦する意欲がわいてくる。後から「実はこんなことがやりたかった」と言うぐらいなら、早く言った方が得というわけだ。自分の実力が準備万端整ってからやろうとしても、そんな時期が果たしていつ来るのか分からないし、仮に来たとしても、傍から見ていて「頼むぞ」という気持ちにはならない。少し無理かもしれないけど「やらせてください」という姿勢にこそ心意気が宿るというものだ。

慣れたフィールドで慣れた仕事だけをしていれば、自分自身や企業の成長はともかく、一時的になら平穏に過ごすことはできる。しかし、まだ「自分にしかできない才能」があるはずと信じたい。自分を小さくまとめるのではなく、挑戦する姿勢を常に忘れないようにしていこう。