融資はできるだけ「無担保・無保証」の範囲で

創業時からいきなり大きな事業をぶち上げようとする人は少ないだろうが、事業の規模、投入する資金の基準は等身大であることが基本だ。ムリに背伸びをしてはいけない。最初から分不相応なスケールでイチかバチかの大勝負で打って出たところで、そうそううまくは行かないのは当たり前の話だ。だからといって、あまりに小さくまとまる必要もない。せっかく創業して新たなことに挑戦しようとしているのだから、お金を惜しむだけでは咲くはずの花も咲かないということになってしまう。

「創業時の融資はできるだけ利用した方がいい」と勧められることは多いと思う。その一つの理由が先に述べたところにある。でもできるだけ「無担保・無保証」の融資を先に考えるべきだろう。いくら低金利の融資とうたわれていても、経営者の個人保証が求められ、連帯保証人にならなければいけないのは避けるべきだ。「背水の陣」という言葉はあるが、どんなに慎重にビジネスの規模を見極め、計画を練っても、失敗する時は失敗をする。その場合でも、損害は最小限に留めなくてはならない。退職金や貯金を元手にしようとし勝ちなシニアも、十分ではなくてもある程度老後の蓄えを別に取っておく余裕が欲しい。

資金の調達先は主に3つ

資金の調達先として自己資金や親族からの借り入れが最も多いところだろうが、それ以外にも調達先の候補は大きく分けて3つある。①日本政策金融公庫、②自治体、③民間金融機関だ。

①の日本政策金融公庫には、「新創業融資制度」がある。無担保・無保証で借りることができる(低金利)が、この利用に際しては条件があるので注意が必要だ。まず、新たに事業を始める人、又は事業開始後、税務申告を2期終えていない人であること。それに雇用の創出を伴う事業を始める人であること、又は技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める人など。そして、最後に事業開始前、又は事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できること。これらすべてに該当しなければならない。

融資限度額は3000万円(うち運転資金は1500万円)。返済期間は設備資金で20年以内(うち据置期間は2年以内)、運転資金で7年以内(同)。先の条件のところで、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できることを挙げたが、「10分の1以上」はあくまで形式的な要件で、実務上は「3分の1」くらいあるのが望ましいとされている。同様に、融資限度額が3000万円とはいっても、1000万円を超えると一気にハードルが上がることは知っておいた方が良い。

日本政策金融公庫の審査はスピーディー

女性である場合は、新創業融資制度の「女性の小口創業支援」の対象になる。さらに、「中小企業経営力強化資金」というものもある。これは認定経営革新等支援機関のサポートを受けることが条件とされている。これには税理士、会計士、中小企業診断士、コンサルティング会社などが認定されており、これら認定を受けたところの経営指導を受けることが融資申し込みの条件になっている。無担保・無保証(低金利)で限度額は設備資金で7200万円、運転資金で4800万円。

日本政策金融公庫の最大の特徴はそのスピーディーな審査にあるとされる。申し込みから実行まで数週間で済むこともあり、1カ月以上かかることはほとんどないとされる。この点、地方自治体の融資は通常2,3か月かかるとされる。もし物件取得に関する融資申し込みなら、審査の期間中に良い物件がどんどん流れてしまう可能性があるので、その場合は地方自治体の融資でなく日本政策金融公庫に融資を申し込むのが良いだろう。

国や地方自治体では雇用や地域の活性化などを目的にして助成金や補助金の制度を設けている。これは融資とは違い、給付されるお金なので基本的には返済する必要がないとされる。ありがたいのだが、先に言ったようにすぐにもらえるものではなく、完全後払い制で要した経費の何割かが戻ってくるものと考えるべきものだ。

1000万円を超える融資は難しい

これら融資の審査の基本的なポイントとして、①自己資金、②経験、③説得力、④資金使途の4つがある。

まず自己資金だが、いくらかの金額があればそれで良いというわけではなく、そのお金をどのように手にしたのかも評価の対象になる。創業に当たって親族からかき集めたお金ではなく、計画的にコツコツ貯金したお金であれば、その努力と金銭の管理能力が高く評価されることになる。自己資金については、過去半年から1年の通帳と給与明細などの証拠を突き合わせて細かくチェックされるものと考えておいた方が良い。

また、これまでの職歴、起業する業種での経験年数、経営者としての能力も見られる。いくら大会社の部長であっても、まったく分野の異なるカフェの開業となれば、簡単にはお金を貸してくれないだろう。

説得力で力になるのが事業計画書だ。本当にそのビジネスで売り上げを見込めるのか、利益を上げて返済できるのかを見られる。融資を引き出すために、あまりに現実離れした予想額を出すと、経営感覚を疑われることになるので注意が必要だ。

最後に「借りたお金はどう使おうと勝手」というわけにはいかない。何にいくら使うのかを具体的に提示する必要があり、その内訳によっては借りられる金額が多くなったり、少なくなったりする。こうした審査を通じて、たとえ創業融資の枠として500万円あったとしても「200万円で十分でしょう」と判断されることになる。繰り返しになるが、現実的には創業融資で1000万円を超えると審査を通るのは難しくなると考えておくことも必要だ。