【目次】
SWOT分析だけではもったいない
BSCと組み合わせてみる
因果関係を考える
最終的に具体的な行動目標にまで落とし込む

SWOT分析だけではもったいない

以前、企業分析をする際に、手段としてSWOT分析があることの紹介をしたが、分析をそれで終わらせてはもったいない。自己満足だけで次にどう具体的にうごけばいいかまだ明確になっていないからだ。企業分析には続きがあることを述べてみたい。こんな方法もあるのかくらいの気持ちで気楽に聞いてもらえればと思う。

SWOT分析では強み、弱み、機会、脅威を挙げたのだが、それらが一見別々のものに見えることもBSC(バランス・スコア・カード)という方法を用いて因果関係(つまり原因と結果)を明らかにしていく作業を行うことができれば、さらに企業分析は精緻化を増す。BSCとは念のためにいうと、企業活動を「財務」「顧客」「業務プロセス」「組織と人材」という4つの視点から因果関係を考え、取組内容を具体化していく方法だ。財務指標に偏りがちな企業の業績評価を、非財務的な指標も取り入れることで多面的に捉えようとする経営管理の手法とされる。

BSCと組み合わせてみる

BSCでは4つの視点それぞれについて達成すべき目標、達成度を測るための指標、具体策を設定し、それらを一目で分かるように1枚の「スコアカード」上にまとめ、4つの視点の間のバランスを取りながら経営管理を行う。ここで大切なのは、財務以外の視点についても戦略項目を数値化することだ。これを数値化することで、財務目標に対する先行指標として進捗管理することができるようになる。

「財務」の視点における戦略項目の数値化は分かりやすいところだろうが、その他「顧客」「業務プロセス」「組織と人材」についての項目の数値化は難しいと思われるかもしれない。しかし、例えば売上高が減少したり利益が低下する際には、顧客からのクレーム件数や生産効率などの数値が先行して変化するものと考えることができる。そのため、これらを売上高や利益に対する「先行指標」として、その変動に注意を払いながら業績を管理することが大切になってくる。

これら先行指標を管理することができれば、決算を行うまでに現状の把握をすることができるようになる。つまり財務という結果が出る前に問題点を発見し、改善すべきものは早急に着手することができる。そういった意味では、BSCはPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの回転スピードを速くする機能を持つともいえる。

因果関係を考える

BSCに取り組む際の4つの視点の因果関係を順番に追って見ていこう。まず、改善の成果を客観的に測る手段である「財務」の視点で掲げた目標を達成するために、顧客に対して何をするのかを考える「顧客」の視点が求められる。SWOT分析で考えた顧客ニーズの中から、どのニーズに対応するのかということだ。この時、自社の経営資源を踏まえて、強みを活かすことのできるニーズを選択することが大切になる。

次にこの「顧客」の視点で掲げた目標を達成するために、どのような仕組みが必要かを考える「業務プロセス」の視点、そして、組織と人材をどう成長させていくのかを考える「組織と人材」の視点へ、順を追って取り組むべき事項を整理していく。このようにしていくことで、顧客ニーズに対応していない取り組みを避けたり、対応できていても過剰品質でムダが多い取り組みの実行を防ぐことができる。

例えば、「安全な食事をより安くタイミングよく提供する」ことが求められている家族連れで楽しむ場としてのレストランがあるとすると、それにも関わらず「食事が出されるまで顧客を待たせる時間が長い」というクレームがあれば、その改善に取り組まねばならない。子供に提供するメニューが少なければ、メニューの在り方も改善しなければならないだろう。そして、そのためにリードタイムの短縮や、食事の出し方の改善にも取り組まねばならない。さらに、このような取り組みを行う場合、組織と人材の視点から、成長戦略の策定や目標の共有化を図ることで従業員たちの積極的な行動を引き起こすことが必要になってくる。

最終的に具体的な行動目標にまで落とし込む

BSCができれば、先に行ったSWOT分析とBSCの結果を一つの戦略マップにまとめると分かりやすい。そこではできるだけまず弱みの因果関係をまとめ、その克服につながる因果関係を構築し、さらに強化すべき強みを加えることを意識して作成する。逆にいえば、それができるまで、SWOT分析とBSCを繰り返し、完成度を上げていくことが求められる。

ここまでできれば、弱みをいかに反転させることができるかが分かった状態になっているはずだが、さらにその取り組みを具体的な行動計画に落とし込んでいかなければ、すべて今までの取り組みが「絵にかいた餅」になってしまう。それを避けるために必要なのが、「行動計画」だ。つまり、「誰が」「何を目標にして」「いつまでに」「どのように行動するか」を明確にして、その実効性を高めることだ。

この具体化に効果的なのがロジック・ツリーを使うことだとされる。ロジック・ツリーとは上位の概念を下位の概念に論理的に展開していくもので、ある結果について、その原因を探ったり、目的実現のための手段を展開する際に有益な方法とされる。このロジック・ツリーの作成時には、なるべく複数名で議論をしながら進めることで、見落としをなくすことができるとされている。
まずはどんな取り組みも一度自分たち自身で試みることが大切だ。その取り組みの参考にしてもらえれば幸いです。