打ち合わせでお知恵拝借

創業して間のない企業にとって弱点があるとすれば、資本が少ないということ以上に、まだ限られた少人数でやり繰りしなければならないということに尽きるのではないだろうか。創業者1人で切り盛りしているのなら尚更、自分の能力の限界が企業の限界に直結してくる。そう考える時、サラリーマン時代が懐かしく思われるのは、打ち合わせのような、参加者が自由に意見を言い合って、そこから何がしかの仕事に対するヒントを得たり、思いがけずいいアイデアに巡り合えた喜びであったりする。

私も今は一人で仕事をしているので孤独になり勝ちなのだが、社内では私一人であっても、意識して顧客との打ち合わせを大切にすることで、私の能力の限界を補おうとしている。意識しなければ、すぐに忙しさに負けて、仕事の本筋を考えることが疎かになったり、適当なところで折り合いをつけてしまいそうになるからだ。それで顧客に対して当面は体裁を繕うことはできたとしても、いずれ能力の限界を悟られ、化けの皮が剥がれるのは恐怖以外の何物でもない。それにしても、改めて顧客との打ち合わせでは本当に日々教えられることが多いものだと思う。

ワイガヤ精神のように

私の理想とするのは本田技研工業の「ワイガヤ精神」だ。といってもほんの伝えられているところのことしか知らないのだけど、ワイワイガヤガヤ部署も上下も関係なく、打ち合わせの場所でみんなで好き勝手に言いたいことを言い合うのだと伝えられている。社内の垣根を取り払い、タテマエを捨て去り、本音で語り合う。こうしたことがなければ、新しいイノベーションも生まれないということを分かっているのだろう。上司に気を使って、部下が言いたいことに口をつぐんでしまったり、部下の発言に上司が不機嫌になったり、別の部署のものがしゃべったことに腹を立てていては、本当の情報やアイデアは出てこない。

ところがそのタテマエで物事が進んでいきがちなのが実際だ。それでも顧客に納得のいく仕事ができるのであれば問題はないのだろうけど、世の中そんなに甘くない。だから「打ち合わせ」というと何か軽い感じがするかもしれないが、少なくとも私は真剣勝負で臨まなければならないと心しているつもりだ。そう思っていても、実際振り返ってみると、手応えを感じることのできた打ち合わせにすることはなかなか難しかったりするのだけど。同じく打ち合わせの大切さを説く有名なアートディレクターの佐藤可士和さんも、「どんどん口に出すことで思考の輪郭がはっきりしてくる」と話している。

いい打ち合わせと悪い打ち合わせを分けるものは

とは言っても「どんどん口に出す」こと自体、不得意な人もいるだろうが、佐藤さんも「間違ったことをしゃべってしまうのではないかという不安もあるだろうが、いきなり正解を語れる人はいません」と心強いことをおっしゃっておられる。本当かどうか、「僕だっていきなりど真ん中のアイデアが出てくることはないのです。時にはピント外れの質問をしてしまったり、間違ったアイデアを口にしてしまったりすることもある」。「でもこれが大事なのです」という。私では説得力がないだろうが、数々の実績を残している佐藤さんがそう言うのだから間違いない。

それでは、「いい打ち合わせ」と「悪い打ち合わせ」では何が違うのだろう。このことについても、佐藤さんは「打ち合わせの目的がはっきりしているかどうか」にあると説く。目的がはっきりしていると決めることが明確だからいい打ち合わせに自然となる。目的のない打ち合わせは「ゴールのないマラソンのようなもの」で、走り始めてもどこに行って良いのか分からないと譬えてみる。要するに、打ち合わせをする前に、「いつまでに、どんな結果を出すのか」というゴールを設定することが、いい打ち合わせにするための大切なカギを握ることになる。

“準備なし”ではすでに遅れている

ところが実際には何も考えないでいきなり打ち合わせに来る人が多いのではないだろうか。「打ち合わせ」と聞くと、「会議」なんかより何だか軽い感じに感じてしまうのだろう。書類やファイルを持ってきてはいても、それを読み込むことさえできていないということも珍しくない。これでは「とりあえず打ち合わせが始まってから考えよう」と思っているのに等しく、それで成果を望むのは厚かましいと思われても仕方ない。十分な準備ができている人と比べると、スタート時点ですでに圧倒的に差をつけられている状態だ。みんなで素晴らしいアイデアを作り上げるなら、まずそれを互いにイメージすることから始まるものだ。イメージできないものが、現実になることはないのである。

打ち合わせは、まず何はともあれ互いにイメージしてきたことを出し合う場にならないといけない。アイデアとまでいかなくても、方向感でも感触のようなものでも構わないから、そうしたものを出し合うことで、いろんなことが言い合えるようになる。事前準備はそのために大切なものだ。それなくして打ち合わせに臨んでも、何より顧客にとっても迷惑な話になってしまう。準備をしていれば顧客にいい質問もできる。この「いい質問」というのが打ち合わせの深さを決めるカギを握るように思う。やはりいくら好き勝手に言い合うといっても、それが真剣勝負の場であることを忘れてはいけない。これから私も一層心して臨まなければいけないと思っている。

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