夢は実現させるもの

いきなりですが、皆さんはどんな「夢」をお持ちだろう。この問いにすぐに答えられる人はどれだけいるだろう。巷の本屋には「夢を実現させる方法」のようなハウツー本が何冊も売られている。誰もが夢は大切だという。「夢を実現した」という「成功者」の話を聞いて、「私も」と思ってしまう。でもそれでは自分の夢は何なのかと聞かれると、言い淀んでしまうことが案外多いものだ。夢という言葉に対して、どこか曖昧で、現実離れしているものと感じている人も多くいるのではないだろうか。そんな人は、まず夢という言葉をどういう風に扱えば良いかから考えた方が良いのかもしれない。

特に皆さんが起業したばかりだったり、これから起業を考えている人であるなら、「夢」を「起業を通じてどうしても将来実現したいこと」と置き換えてはどうだろう。かつて幕末の偉人を輩出した松下村塾の創始者である吉田松陰は、「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に夢なき者に成功なし」という言葉を塾生たちに語っている。「どうしても実現させたい」という意思の強さが、偉業を達成する原動力になることは、「月に行こう」とJ・F・ケネディが目標を掲げ、アポロ11号で達成した例を見ても明らかだ。

数字だけを追い続けるのは無理がある

何故、いきなり夢の話を出したかと言うと、それは最近久しぶりに連絡を受け取った私の以前の顧客からの悲痛な叫びがあったからだ。その方は介護関係の会社を興したばかりの社長だったが、当初売上が不振だったのが、広報に力を入れ、広告を見直し、それに付随するいろいろなてこ入れを図った結果、売り上げが3か月で2.5倍に増えた。しかし、その後1年もすると、残念ながらもとの売り上げに戻ってしまったのだという。売り上げが急伸した時、その方も社長として働く時間が激増し、それと同時にストレスも抱え、社員と喧嘩が始まり、次々に社員が辞めてしまうという事態に陥ってしまったのだそうだ。

仕事で営業を経験された方なら社長でなくても分かってもらえるだろうが、毎日毎日数字とノルマで胃を痛くするくらいになる。そうして一時的に売り上げが上がっても、そのモチベーションを高いレベルで維持し続けるのは至難の業だ。企業経営でも数字だけを追いかけ、理念を疎かにするところは多いが、こういった企業はなかなか長期的な発展を遂げることは難しい。なぜなら「夢」がないからだ。数字だけ一時的に上がっても、その先どうするのか。無意識にでも「何故こんなに苦労し続けなければならないのか」という思いが足を引っ張るのだ。

心にブレーキはかかっていないか

私に連絡をしてきたその社長の話にはまだ続きがあって、「売り上げを再び上げたいのだけど、これ以上忙しくなりたくない」というのだ。ちなみにこういう類の話は多い。「顧客に商品を勧めたいのだけど、どう思われるか心配」「新しいことを始めたいのだけど、誰もやっていないので勇気が出ない」「もっと販売したいのだけど、クレームが起こると嫌だ」…。このように経営には必ず対立する矛盾がある。これを引きずっていては、売り上げも上がらない。いわば車を運転するのに、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態と同じことだからだ。

この社長も「売り上げを上げたい」アクセルと、「これ以上忙しくなりたくない」というブレーキを同時に踏んでいる。ここから成果を出すには、そのジレンマの中から脱出をしなければならない。それはマイナスの思い込みをいかに無くすかということだ。「売り上げを上げたいけど、これ以上忙しくなりたくない」から、「忙しくなったら、給料はいくら増えるだろう」とか、「忙しくなって給料も増えたら、今までできなかったあんなこともしてみたい」という具合だ。こうしたプラスの発想が次の行動を生んでいく。そのためにブレーキを解除してやらねばならない。

ストーリー作り

こうして自分の夢をはっきり意識できて、無意識に足かせとなっていたブレーキを解除してやれば、次に成功に向けてのストーリー(物語)作りに乗り出そう。10年ぐらいの期間の経過を示すグラフを用意して、自分が成功に向けてこれからどんな軌跡がありそうか、自分なりに想像してみるのだ。もし皆さんが起業したばかりであれば、始めの3年目ぐらいまでをその「拡大版」として、月単位のストーリーを描くのも良いだろう。要するに自分で成長ストーリーを作ってみるのだ。その過程で今、不安に思っている課題などが自然に思い起こされてきて、それへの対処方についても考えることができる。

私のサラリーマン時代、知り合った多くの営業の人たちが、ただ挨拶周りと御用聞き、時間つぶしばかり行っていて、積極的に顧客からニーズを引き出したり、どうすれば役に立てるかを考えることを実践できている人が案外少ないという現実に直面したことがある。自らの勘と経験だけに頼り、度胸で仕事をしているような状態だ。これでは誰も「本気で稼ごうとしていない」と思われても仕方ない。これから売上を伸ばそうとする前に、今一度心の中から整理をして、何のためにその商品(サービス)を売ろうとしているのか、知らず知らずの内にも自分が気にしている問題点はきちんと解決できているかを問うのは悪くない。