計画は必達が前提

マネジメントサイクルのPDCA(計画・実行・評価・改善)を繰り返すことによって、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していこうとする動きは良く知られており、多く実践されているところだ。このうち、一番初めの計画とは一般に目標を設定し、業務計画を作成する段階のことを指す。そのためにまず解決したい問題や利用したい機会を見つけて理解を深め、目標における情報を収集し、解決策を考え、計画を立てていくことが必要とされている。そうしたことは分かっていても、そもそも計画を立てることに対してどの程度その必要性を感じているのかと疑問に思うことがある。

「計画はあくまで予定に過ぎず、周囲の状況が変われば当然見直すことが必要だ」「計画はしばしば変更することがあって、どのように変更するのかを指示するのが経営にほかならない」といったような考えを経営者からよく聞いたりする。一見、「その通り」と思えるかもしれないが、周囲の状況の変化次第で変わる計画なんてそもそも誰も信用できないし、そんな計画を立てたところで、誰も苦労してそれを達成しようとはしないものだ。計画とはそんな軽いものではないはずで、「必達」が当たり前のものと考えるべきではないか。どんなに状況が変わっても計画を達成させるところに、私たちの努力の意味もある。

計画に対する姿勢の差が業績の差を生み出す

こんなことを考えたきっかけは、オリンピックを目指すアスリートたちがコロナ禍の下でも汗を流して練習に励んでいる姿を見たことだ。オリンピックの開催が1年ズレ、今では開催そのものも危ぶむ声も出ているが、だからといって、彼らの目標が変わるわけではない。口ではモチベーションが続かないなどとぼやくことはあっても、オリンピックでメダルを取ることを目標に練習計画を実行しているのだ。計画にはこの厳しい態度が絶対に必要で、間違っても周囲の状況が変わったから目標や計画も変えてしかるべきなどと考えていては、経営は混乱するばかりでできるものではない。

私のサラリーマン時代、同業他社がよく比較に出されることがあったが、「あの会社は厳しいから」「あの会社は比較的のんびりしていそう」とかいうのは、どの程度最初に立てた計画を守って、追求しようとしているかの姿勢の違いを現わしていたように思う。そして、例外なくのんびりしている会社の人気の方が高かったが、今、その会社は無くなっていたり、万年業績が低迷していて、常にリストラの噂が社内を駆け回っているような状態に置かれている。これもすべて経営者の計画に対する姿勢の違いが生んだことと思うと、その責任は重いと断ぜざるを得ない。

計画と予想との違い

あのピーター・ドラッカーは、「計画とは将来に関する現在の決定である」と話している。分かりやすく言えば、将来のことをあらかじめ決めること、だというのである。当たり前のことにも思えるが、「あらかじめ決めてしまう」のだから当然のこととして「その通り実行する」ということになる。それを計画は状況に合わせてしばしば変更するものだとしていると、極めて「予想」に近いものとなる。予想とは第三者が他人のやることを予め想うのであるから、それが当たろうが外れようが結果に対して何の責任も持つ必要はない。「今年のプロ野球は○○が優勝するだろう」という類と同じになってしまう。

そのついでに考えると、「その通り実行する」のだから、「それは計画以上でも以下でもあってはならない」と話すのは伝説の経営コンサルタント、一倉定氏だ。「どこまでも計画通り」というのが正しい態度であって、東京オリンピックであれば、「何が何でも決められた日から開催するように努力を払わななければならないのであって、準備が遅れているからといって開催日時を遅らせることはもちろん、逆に準備が早くできたからといって、開催日時を早めるわけにもいかない」と説明している。だから、電車の時刻表も計画の一種だ。電車はこれより速く走らせても、遅くなってもいけない。

計画の基礎の第一は「生きるため」

計画を作成する重みが少しはお分かりいただけただろうか。だからといって、「計画に縛られるのは嫌だ」とばかりに、格別の努力をしなくても実現できるような低い水準の計画を立てて、余裕を持って計画を実現したといって自慢するのは本末転倒だ。始めから不言実行よろしく、「できるだけ売り上げを上げる」「できるだけ品質の良いものを作る」「できるだけ…」としか設定しないのは、ズルくて無責任だ。自分が頭の中で考えている数字を達成できなかったときの逃げ道を予め作っているのに過ぎない。そんなのは会社を経営する資格すらない。

先の一倉氏は、計画の基礎の第一は「生きるため」であると喝破している。世の中、計画に対する常識として、「実現可能なものでなければならない」「事実に立脚したものでなくてはならない」「ムリとムダがあってはならない」…とあるが、それはまったく間違いであるという。これらの言葉の持つもっともらしさは、経営者の心を快く酔わせ、魂を蝕む麻薬であるとも。それは「これらを信奉することで当然しなければならない努力をしなくても済ませることができるから」。計画は過去の実績を乗り越え、「進歩や革新を生むものでなければならない」という。計画に対する態度は真摯であるか再考する機会になれば良いと思う。

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