売れる瞬間を逃した時の原因の追求が大切

企業経営で最も大切な瞬間とは、その企業が売っている商品やサービスが売れる、または売り逃がした瞬間にある。よく経営者は「現場を知らなければならない」と言われるが、その現場の中でも最も大切なのがこの顧客との接点だ。でも、まだまだ売上の数値、その推移には関心があっても、その現場で何が起きているのか十分に見て、検討できていない経営者が多いことに驚かされる。その最も悪いのが、売り逃したことを顧客の側に問題があるとする考えだ。「顧客の問題意識が足りない」「顧客が商品、サービスをもっとよく知ってくれれば」「もともとあれは自分たちの顧客ではなかった」・・・。

そんな慰めを自分自身に言い聞かせ、それをもって「自分たちは十分にやるべきことをしている」と思い込んでいる経営者が多い。そんなだから、「なぜ売れないのだろう」と悩むことはあっても、それが改善に向かうことが少ないのだ。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という言葉がある。プロ野球の野村克也元監督の名言として有名だが、もともとは江戸時代後期の平戸藩主、松浦静山の言葉とされる。そのもともとの意味は「道に従い、道を守れば、勇ましさがなくても必ず勝ち、道に背けば必ず負ける」ということだそうである。その言葉に従ってみれば、売り逃した中にこそ「真実」が隠されているということになる。経営者にそれが本当に足りているだろうか。

商品だけでなく周囲の要素にも目配りが必要

例えば、春先のお菓子を販売する店がキャンペーンを行うとしよう。昨今は生活様式も多様化しているため、昔のように季節の商品を並べるだけでは十分ではないだろう。昨今のトレンドを踏まえつつ、近所の家族構成を考え、子供の多い地域であれば子供向けの商品を別にそろえたり、もしオフィスの多いエリアであれば企業の中にあっても食べやすい形を考えたり、あるいは、春先にある各地のイベントに合わせて色々コーディネートして提供できるように品揃えを考えなければならない。

店頭でのディスプレーも画一的でない組み合わせを訴求し、広告のタイミングもそれぞれのイベントに合わせて、各イベントの主役になりそうな年齢層に合わせたデザインにする必要がある。店舗が複数ある場合は、各店舗の商圏や客層を踏まえて、各店舗に置く商品の品揃えや販売する数量、生産量を計画しなければならない。予算も適切に配分する必要があるし、人事評価上のKPI(重要業績評価指標)も施策の実行状況に連動させていくことも必要だ。これらすべてを企業の目標に合わせて整えていかねばならない。

事業に関連するすべての要素を「有機的に」結合する

要するにビジネスに必要とされる一つひとつの要素の整合性をとることが大切になってくる。これを一言で表すと、「事業のすべてを有機的に結合する」となる。商品企画、製造、物流、価格設定、店舗設計、ディスプレー、接客、広告、人事、財務、情報システムなど、事業に関連する様々な要素をすべてうまくかみ合わせていくことを指す。「有機的」とは個々の要素が密接な関係を持ち、互いに影響し合っている状態を意味する。硬直した関係ではなく、ある部分が動けば他の部分もそれに合わせて動く、柔軟で全体が生き物のような一体感を持って動くイメージと言えば分かりやすいだろうか。

そんなこと当たり前のこと分かっていると思われるかもしれないが、それを徹底できている企業が少ないのではないのだろうかと思うのだ。例えば、ある商品を前にして他の似た商品と比べてどちらを買おうか迷っている顧客がいる。顧客がどちらを選ぶかは「博打」ではないのだ。「博打」と考えた時点で、むしろ顧客はそのどちらも買わずに売り場から立ち去ってしまうものだ。たまたま比べた商品に何らかの「難」があって自社の商品が選ばれることはあっても、必ず自社の商品を「買わない」とした背景には理由がある。それを経営者なら徹底して考えなければならない。

戦略はシンプルに

最近のICT(情報通信技術)の発展は、そんな経営者の考え抜かねばならないことを従来不可能だったことまで簡単に、手軽にできるようにしている。各地で催される展示会やイベントでも、そんな日進月歩の先端技術・商品の紹介がなされている。これまでそんな先端技術に興味のなかった経営者も、一度実際に足を運んで自身の目で見て、触れる事をお勧めする。きっと新たな発見につながること請け合いだ。しかし、それもそうした自社の商品やサービスが実際に選択される現場の大切さを認め、客観的に分析し、対策の必要性を認める姿勢があってのことだ。

私は先端技術に関する知見より、むしろそうした姿勢の有無が今の企業の格差の源になっているように思えてならない。そうして事業のすべてを有機的に結合させることをしながら、もう一つ大切なのは、「シンプルな戦略」を作ることだ。すべてがうまくかみ合って動くために、その明快でシンプルな戦略が求められる。複雑で分かりにくい戦略はブレや迷いを生じやすく、一貫性や整合性を保つのが難しくなるからだ。このことについては、また改めてお話させていただければと思う。

株式会社 大阪エルシーセンター CUBE電話代行サービスグループ
CUBE電話代行サービスでは、実際に電話応対をしているオペレーターが、電話代行サービスの魅力やビジネスに関する情報を発信しています。日頃の電話応対のノウハウや様々な業種の導入事例等、電話応対にお悩みの企業様や、電話代行を検討している方は是非ご覧下さい。