期待のテレワーク

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの開催まであと1年を切った。政府や自治体、企業はオリンピック・パラリンピックの開催期間中、交通渋滞や混雑を緩和する施策を検討し、予行演習に余念がない。自宅やシェアオフィス・レンタルオフィスで仕事をするテレワークもその施策の一つに掲げられている。しかし、これは単なる応急処置ではない。人手不足対策、仕事と育児・介護の両立、業務の効率化など、今後の企業を取り巻く解決策として、これを機会に本格導入を図る企業も多い。この流れは無視できないが、上辺だけ真似てもデメリットが勝つだけで要注意だ。

テレワークの特徴は職場など一定の場所に縛られずにどこでも仕事ができることにある。1970年代にアメリカ・ロサンゼルス周辺でエネルギー危機とマイカー通勤による大気汚染の緩和を目的として始められた。それを1980年代になってパソコンの普及と女性の社会進出に伴って注目されるようになった経緯がある。日本でもちょっと古いが約10年前のテレワーク実態調査(国土交通省)で、すでに個人事業主がデータ入力やホームぺージ作成などを在宅で行っている個人事業主などが674万人いるとされていた。しかし、これからは企業がすでにあるオフィスを離れて従業員の働く場を確保しようとする動きが本格化する。

いろいろな試験運用

総務省などはテレワーク推進に向けた「テレワーク・デイズ2019」を「国民運動」として7月22日から9月6日までの間、展開した。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)はその期間中、自宅や外部のワーキングスペースなど、独立性が確保され就業に適切な場所を各自が選択し、週2日以内の頻度で働くことができるようにした。同社では独自に自宅や出張先などから社内システムの利用を可能にする環境を構築するサービスを10年以上前から提供しており、それを活用した。端末にデータを保存せず、端末の紛失や盗難にあった場合もセキュリティーを確保できる。

NTTドコモでもテレワークや時差通勤などを組み合わせた多様な働き方を推奨した取り組みを実施した。自宅やサテライトオフィスでの勤務、それにフレックス制度を活用した時差通勤のほか、ドコモ本社に勤務する社員は週1回以上のテレワークか休暇を取得可能にした。この取り組みにも、ドコモが提供するクラウド型ウェブ会議サービスを活用。インターネットに接続できる環境さえあれば、パソコンやスマートフォンなどから、映像・音声・資料を共有しながら安全にウェブ会議を行える。将来的には5Gで3次元アバターを活用したバーチャル会議の実施などもできるようになるという。

周辺サポートも拡大

テレワークをサポートする関連サービスは多い。オフィス以外で働く機会が増えれば、情報漏洩などの様々なリスクも発生しやすくなる。こうした新たなリスクに対応するのが「テレワーク保険」だ。東京海上日動火災保険と日本マイクロソフトが共同で開発し提供を始めている。保険は「ウィンドウズ10」に自動的に付帯され、テレワーク勤務中に起きたウイルス感染の調査費用やパソコンの紛失による情報漏洩など、各種費用や損害賠償金を補償する。補償額は500~1000万円。子どもやペットなどが誤って操作し、損害を生じさせた場合も対象となる。

コンビニや飲食店などの宅配・出前サービスも拡大しそうだ。テレワークでは「平日の昼間に自宅近所で買い物をするのは周りの目が気になる」「食事のために遠くまで外出したくない」といった声も聞かれる。仕事と育児・介護の両立で外出が制限されることもあり、宅配のニーズは根強い。昼食のほか、食材や日用品を自宅や自宅近くの店舗で受け取れるサービスも強い味方になる。ローソンの「ローソンフレッシュピック」は、毎朝8時までにスマホの専用アプリから商品を注文すれば、18時以降に近くのローソン店頭で受け取れる。日本生活組合連合会(コープ)が組合員向けに展開する宅配も毎年着実に伸びているという。

メリット・デメリットを見極めて

一般的にテレワークを企業が導入するに当たっては、労務管理、テレワークソリューション、執務環境の3つの側面からの検討が必要になるとされる。労務管理は早い話、目の届かないところにいる従業員が本当に働いているのか、何をしているのか分からないということだ。しかし、これも例えば、パソコンのキーボードやマウスの操作状況から、実働時間を見える化するなどのソフトが販売されており、ある程度の把握はできるようになっている。このほか、各業務に要した時間なども把握できるようになるので、組織内に優先的に取り組むべき業務に具体的な指標を決めて取り組むことができる。

2つ目のテレワークソリューションは上記に挙げたCTCやNTTドコモの例を指す。3つ目の執務環境についても、例えばパソコン画面を長時間見て業務に携わることのないような環境の整備を指すが、これなどは社内の時と特段変わることはないだろう。

それより問題はテレワークを利用する従業員の意識だと思う。明確に自分の仕事を効率よく仕上げることに意識が向いているようであれば問題はないかもしれないが、そうでなければ時間管理があいまいになりやすいことは避けられない。時間管理だけでなく、仕事の質の管理にまで影響が及ぶと、企業の信用問題にまで発展しかねない。