結果重視経営は何をもたらしたのか

結果とプロセス、どちらが大事かといった問いかけがよく寄せられる。特に最近は結果を重視する傾向が強いように思う。「売上高は計画を達成したのか」「前年対比で利益はクリアできたのか」「何人のクライアントを獲得できたのか」…。

ビジネスで結果を出すことは利益獲得に直結するものだ。それは事業と組織を拡大するための源でもある。結果が出れば自信につながり、喜びをもたらす。結果主義のもとでは一般的に報酬的にも満足度が増すと言われる。

しかし、一方で結果に執着することで、人は容易に罠に陥る弱さも持っている。つまり、結果さえよければ何をしてもいいというものだ。あるいは、途中で必要な努力を無視し、他人の成果を横取りしようとするものも現れたりもする。「結果さえ出せればそれでいいのだ」といった具合に。

好ましい結果を出すには、きちんとしたプロセスを経ることが大切なのは皆分かっているはずなのに、これは一体どうしたわけだろう。プロセスをいい加減にしてたまたま良い結果が出たとしても、それはまぐれであって再現性・持続性を伴うものではない。
普通に考えると、結果とプロセスは優劣つけられるものではない。

結果を無視してはいけない、プロセスは人間をつくるうえで必要

この点、元プロ野球のイチロー選手の語録には噛み締めるべき内容がある。イチローは、「結果が大事というのはこの世界で無視してはいけない。野球を続けるのに必要だから。プロセスが必要なのは野球選手としてではなく、人間をつくるうえで必要と思う」という。

これは一般の会社員でも同じだろう。会社員であれば、組織から与えられた事業目標や業務目標があり、それを成果としてそれぞれが達成することで会社が存続でき、給料をもらうことができる。また、自分の能力より少し上の目標を立てて、それを達成することで自分も成長することができる。その存続、成長のために私たちは結果を出さねばならない。

一般社員のほとんどは「プロセス重視」の考えに共感しているとされる。それが、中間管理職では意識が逆転し、「結果重視」に意識が振れるようだ。これは経営側に寄っていけばいくほど、「結果=利益」を出さなければ会社が回っていかないことの責任が強くなるためと考えられている。あるいは、「若い者をへたに甘やかしてはだめだ」「試練を持って成長させなければならない」といった、年長者特有の考えが働いているのかもしれない。

しかし、中間管理職の中でもなお「プロセス重視」の考えに共鳴する割合も多く、これは中間管理職といえども、彼らもまた組織の中では上司を持つ身で、「結果を出す」ことのプレッシャーに日頃さらされていることが影響しているのかもしれない。

自分らしさを十分に発揮する

同じくプロ野球で複数の球団の監督を務めた野村克也さんの言葉として知られる「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」は、もともとは江戸時代の平戸藩主、松浦静山の言葉が由来とされる。このもともとの意味は、「道に従い、道を守れば、勇ましさがなくても必ず勝ち、道に背けば必ず負ける」ということとされる。

私などは「ただ負ける時は負けにつながる必然的な要因があるが、勝つ時にはその時々の運のようなものも影響して、不思議に勝つことがある」とだけしか捉えていなかったのだが、もともとはプロセスを重視することで、結果も自ずからついてくるということを指していたのだ。

そう考えると、会社において、経営者が結果にこだわるのは当たり前の話だろう。それ以外の中間管理職や、一般の会社にとっては、やはり仕事上においては結果を無視するわけにはいかないが、その結果を出すためにプロセスを重視しなければならないということになろうか。人の置かれている立場によって、結果とプロセスの位置づけは異なってくるというのが、今の私の結論だ。

プロセスを楽しもう

最後に女子テニスであの大坂なおみを世界NO.1へ導いたサーシャ・バインコーチがこの結果とプロセスの問題に言及した部分を、少し長くなるがご紹介する。

「…最初からなおみに言ったのだが、結果だけに重きを置いて自分を評価するのはやめよう、と。そう、プロセスから目をそらすと、得てして学ぶことがおろそかになってしまう。結果だけにしか眼中にないと、意欲も失われて、最終的な目標を見失ってしまう。いい成績をあげたくて結果のみに目を奪われると、仕事の楽しみまで奪われる。…結果よりプロセスを重視すると、仕事を楽しむにつれエネルギーや熱意が湧いてきて、成功のチャンスも大きくなるものなのだ」

「たいていの人は、カーテンが上がって本舞台に上がったなおみしか見ていないから、試合の結果だけに重きを置く。だが、カーテンが上がる前からなおみを見ている私は、舞台上はもちろん、そこに至るプロセスのすべてに目を凝らしている。それに基づいて、その試合におけるなおみの出来を評価する。…セリーナが自分らしさを発揮できた試合では、相手の、出来に関わらずセリーナが勝つ。それはなおみも同じで、自分の持ち味を十分発揮できた試合では必ず勝つ」。