機能しない会議

私の拙い経験からではあるが、社内会議ほどその役割を果たし得ているものはないように思う。その多くは「会議」と称していながら伝達事項の周知に留まっているか、出席者の議論を得たという言い訳に使われているのに終わっていないだろうか。会議本来の目的である(だと私は思っている)意見を述べ合ってより優れた結論を導き出す形になっていることが極めて少ないのだ。週に1回や2回は会議を行うことは珍しいことでもないし、特に役職が上になるにつれて、終日会議でつぶれるほど時間を割いていることを考えれば、やはりこの問題を放っておくことはできないように思う。

例えば、新しい店舗の建設に3000万円の設備投資をすべきかどうか決定しなければならないとき、関連部署に「新店舗に3000万円設備投資すべきである」というテーマで事前に賛成の立場と反対の立場で討論させておけばいい。そうすることで、その設備投資が本当に有効な計画なのかどうか、その必要性は妥当か、資金計画は妥当か、投資資金回収計画は妥当か、経営を圧迫させないか、どのようなリスクがあるのかなど、意思決定をする際の判断基準が明確になり、迅速な意思決定につなげることができる。また、事前にリスクを認識することで、リスクの回避や管理にも効果がある。

意思決定の迅速化のツール

もちろん、そこでの討論が会社としての決定になるのでなく、最終的には経営者の意思決定になるのである。しかし、企業を取り巻く環境がグローバル化、複雑化、情報化されたものになっており、より迅速な意思決定が経営者に求められている今日、こうした討論を経ることは迅速な意思決定を支える大切な経営ツールになる。

通常、企業は長期の目標に則って、要員計画、資金計画、設備投資計画、販売計画、生産計画、研究・開発計画などの長期計画を立案し策定する。まずこれらの計画を立てるに当たって大切なのが企業戦略と呼ばれるものだ。そこで、どのような計画を立てればよいかを考えるときに、いくつかの案をまずスタッフに考えてもらい、その後2、3に絞り込みを行った後、その残った案に対して討論を行えばよい。

ある衣料品を販売している流通業の企業でこの手法に則り、販売戦略を討論してもらった。このとき俎上に残ったのが、①関東地区に新たに進出すべきである(この企業は関西地区を中心に展開をしていた)、②新たにレジャー分野に進出すべきである、という2つの案だった。この2つの案に対して討論を行い、それぞれの案の妥当性、実現可能性、有効性、現状に対する分析の妥当性、考えられるリスクなどを整理し、有効な販売政策の策定につなげることができた。

人材育成にも利用

大切なことは、ややもすれば管理者は自分と同意見のものの意見ばかり集めがちになってしまうものだが、討論であることを意識することで、反対の意見にも耳を傾けることができることだ。異なる立場の意見の対立によって、より新しい考え方が生まれるという考え方は、ドイツの哲学者であるヘーゲルが弁証法の中で提唱した「アウフヘーベン(日本語で「止揚」と訳される)という概念と同じだ。

従って、管理者もスタッフとの討論を通じて、よりよい考え方、方法を生むことができるようになる。結論は何でも構わないから、普段抱えている問題に対して、会議などを通じてスタッフたちと討論を重ねることだ。そして、自分の考えと異なる考えがあること、気付かなかったことがあることにまず気付いてもらい、そこからより優れた提案、アイデアを作っていくという体験を味わってもらうのだ。

要は、管理者とスタッフのレベル、経営者と管理者とのレベルで、テーマに対して討論という過程を経ることで、人材育成につなげることもできるのだ。実際、コミュニケーションスキルの向上、リーダーシップスキルの向上、論理的な思考の訓練などでそうした過程を人材育成のカリキュラムに取り入れている企業もあるくらいだ。それを企業の会議でも取り入れていけば、会議の成果と人材育成の一石二鳥が期待できるようになる。

腹芸では乗り切れない時代

日本には昔から「腹芸」という伝統的なコミュニケーションがあった。つまり、わざわざ言葉に出さなくとも、相手の本意をくみ取ることを指す。そして、そのうまさが企業の中で昇進していく際の大切なポイントでもあった。今でも多くの企業でそれは残っている、特にワンマン社長のいる中小企業では、コミュニケーションの際にわざわざ衝突することを避け、和を求める傾向があるとされる。

しかし、これまでのように成功への道がほぼ見える時代であればそれでもよかったのかも知れないが、今のように何が正解が不確かな時代にあっては、仮説を立て、それを検証していく過程は欠かせない。それを会議の仕方を討論方式にすることで対応することができるのではないか。

特に不確実性の時代には、フェイクニュースに代表されるような悪意に満ちた情報も飛び交う。曲論や曲解、詭弁などが大手を振ってまかり通ることもある。これら誤った情報やニセの情報に基づいて生まれたいい加減な仮説ほど危険なものはない。企業の計画からそれらを排除するためにも会議の活性化は必須なのだ。

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