どこまで行っても弱肉強食の世界

成長産業と呼ばれる分野は技術の進化が激しく、今なら例えばAI(人工知能)やロボットなどといった技術を活用しなければついていくのは難しい。そうしてついていっても、待っているのは商品価格の低下だったりする。一方、成熟・衰退産業は技術の進化が最早なくなり、川上や川下には強い企業がいて、価格の決定権を握られていたりする。

特に衰退産業では低価格競争があったり、認知度がなく、営業に行っても相手にされないなどの悩みを抱えるところは多い。やがて元受け企業から突然注文が無くなって、赤字受注でも引き受けざるを得なくなり、そのうちその仕事も無くなって休業に至ったりする。

やはりビジネスでは弱者は淘汰されるしかないのか。「弱肉強食」と呼ばれる世界、弱者は生きる価値がないのかと考えると、そうでもない事実もある。一般に「ニッチ戦略」と呼ばれるものだ。大手企業が進出してこないニッチな世界、つまり隙間的な市場で細々と生きている企業は多い。

しかし、そのニッチな世界においても、やはりその中では弱肉強食の世界だ。その中で弱い企業は淘汰されるのは当然とされている。最後まで何とか生き残って、残存者利益を狙うという手もあるが、そのために何年かかるのか、本当に生き残れるのかを考えると、これは取るべき手ではない。

自然界では様々な「弱者」も生きている

弱肉強食の世界は自然界でも同じだ。しかし自然界では様々な生き物たちが、様々な生き方をしている。強いものばかりが生き残っているわけではない。シマウマはライオンに追われて食べられているが、そのためにシマウマが滅びることはない。ダンゴムシやミミズなどの生き物にしても、どう見ても強そうには見えないのに立派に生き抜いている。また、群れの中には強いオスもいれば弱いオスもいて、強いオスばかりがボスとなって子孫を残すのかというとそんなこともないという。

弱者にどんな戦略があるのかー詳しくは専門書に譲ることとして、その中の一つにあるのが「群れる」ことだ。「弱い奴ほど群れたがる」とはよく言われることだが、間違いなく群れることは強い者に対して生き残る一つの知恵である。小さなイワシは群れて大きな魚から身を守るし、シマウマも群れてライオンから身を守っているのだ。しかもキリンやガゼルのような異なる種類の動物が集まって群れをなすこともあるが、これもそれぞれの特徴を活かして群れとしての警戒能力を高めるのに役立っている。群れはこのように警戒能力を高めるし、たとえ群れが襲われても、沢山の仲間がいるので自分が襲われる可能性は少なくなる。

自社の「オープンソース」を提供する

では弱い企業が群れるとはどういうことなのか。昔からある団体などと違って、これからの時代に群れることの効用は何なのか。「群れる」ことで本当に生き残れるのか。すでにその先例はある。明太子を製造している老舗のふくやは、独自の製造技術を自社だけに囲い込まず、広く他の企業にも伝授することで明太子の市場を広げたとされる。また、あるラーメンチェーン店は、のれん分け制度でその独特の味、盛り付けを持つ類似店が増えることを許容し、自らニッチ市場を形成したといわれる。

これらに共通するのは、商品の製造工程や制作過程、仕事のちょっとした工夫、普段の段取りの中でちょっとひと手間かけていることなどを独自のノウハウとして、それを広く提供し、そのコミュニティを作り、一つのブランドにしていることだ。そうした自分たちの持つ資産、武器、強みを提供することで、愛着を感じ、味方、応援をしてくれるファンを作り、自分はその「本家本元」、「第一人者」として生きるのだ。そうなると、顧客や同業者らが「同士」、「弟子」となって、一緒に市場を広げていってくれる。IT業界で盛んに行われている「オープンソースの提供」も同じことだ。

クレーム情報を逆に活かす

恐らく、これまで話した中で疑問というか懸念が表明されるとすれば、「果たして自分たちに提供できるような強みや工夫なんてあるのだろうか」ということだろう。だが考えてもみて欲しい。今売っている製品なりサービスが良く売れているものであれば、その売れている事実の中に強みや工夫は必ずあるはずだ。もし、売れていなくて困っているということであっても、顧客にどう貢献しようとしているのかを考えてみると1つや2つはすぐに出てくるはずだ。考えにくければ、顧客からの疑問や問い合わせに対する回答を考えてみると良い。そうした情報提供を広く行えば、きっと応援する人たちができてくる。

まず、あなたが顧客から受けるクレームのベスト3は何か、それらのクレームに対してあなたがしているちょっとした工夫、ひと手間は何かを考えてみるのだ。そうした情報を発信すれば、そこに人が集まるようになる。そうなると、普段の営業活動では思いつかない、新しい用途・技術開発につながることもある。また、こうした顧客とのやり取りをきっちり行うことで、信用・信頼が培われ、それによって問い合わせや注文がまた入ってくるという、良い循環が生まれるようになる。情報の発信を通じて生き残りを図るのだ。試してみると面白いのではないだろうか。