分析を使い分ける

起業をすれば、いろいろな立場の人が良い企業かそうでない企業かを見分けようとしてくる。しかし、彼らの見方は一様ではない。例えば投資家は企業の収益性や配当などを重視して、その企業が投資に値するのかどうかを判断しようとするだろうし、債権者なら企業の安全性ーつまりお金を貸しても必ず戻ってくるのかどうかをより重視するだろう。こうした経営分析に用いられる指標としてどのようなものがあるのかを知っておくことは、経営者として大切になってくる。
経営分析で用いられる指標は大まかに収益性分析、安全性分析、生産性分析、成長性分析の4つがある。以下に順番にそれらを見ていくことにする。


◆収益性分析
企業が利益をあげる能力を分析する。企業が利益を上げるには、調達した資金を事業に投資し、さらに人件費や仕入れコストなどを支払った上で、利益を獲得する必要がある。少ない投資で効率的に利益を上げることができれば収益性は高いといえる。

①総資本経常利益率
総資本経常利益率=経常利益÷総資本
投下した総資本に対して経営活動全般で得た利益である経常利益の割合を見る。

②総資本事業利益率
総資本事業利益率=事業利益÷総資本
①で上げた総資本経常利益率で用いられた経常利益には借入金などから生じた支払利息なども含まれる。このため、より厳密に資金調達によらない企業の収益性を求めるには、この総資本事業利利益率という指標を使用する。
事業利益は、事業利益=営業利益+受取利息・配当金+有価証券利息となる。
ちなみに、この総資本事業利益率はROA(Return On Asset)とも呼ばれる。この場合、事業利益の代わりに営業利益が用いられることもある。

③経営資本営業利益率
経営活動で使用されている資本からどれくらいの営業利益を得ているのかを示す指標。
経営資本営業利益率=営業利益÷経営資本
経営資本は、経営資本=総資産-建設仮勘定-投資その他の資産-繰延資産
つまり経営資本は資産のうち、本業で使用されていないものを除いたものということだ。

④自己資本利益率
株主から見たときの収益性を表す。
自己資本利益率=当期純利益÷自己資本
この自己資本利益率はROE(Return On Equity)とも呼ばれる。

上記の式は、自己資本利益率=売上高当期純利益率×総資本回転率×財務レバレッジ
に分解することもできる。この財務レバレッジは自己資本比率を逆数にしたもので、借金をすれば財務レバレッジが大きくなり、その分自己資本利益率は向上することになる。つまり上手に借金をすることで効率よく利益を得ることができるということでもある。

⑤売上高総利益率
売上高総利益率=売上総利益÷売上高
これはよく粗利益と呼ばれている指標だ。この指標が思わしくない時は、商品の価値を高めて販売価格を上げるか、仕入れ・製造原価を引き下げる必要がある。

⑥売上高営業利益率
売上高営業利益率=営業利益÷売上高
これは本業による利益率を表す。営業利益は売上総利益から販売及び一般管理費(販管費)を引いたものなので、売上高総利益率が問題ない場合でこの指標が低いという時は、販管費の内訳をよくよく分析する必要がある。

⑦売上高経常利益率
売上高経常利益率=経常利益÷売上高
これは財務活動を含めた経営活動全般による利益率を表す。

⑧売上高当期純利益率
売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高
これは特別損失や特別利益と税金の支払いを終えた最終的な利益率を表す。
事業のリストラを行い、設備を売却して固定資産売却損などの特別損失が出た場合などは、この指標が低くなる。

⑨総資本回転率
総資本回転率=売上高÷総資本
一定の期間に企業のすべての資本を使って何倍の売上を上げたかを表す。同業他社と比べてこの数値が低い場合は、在庫や売上債権などの流動資産が多いか、建物や設備などの固定資産が多いことが考えられる。

⑩経営資本回転率
経営資本回転率=売上高÷経営資本
経営資本は③の経営資本利益率を参照してください。

⑪売上債権回転率
売上債権回転率=売上高÷売上債権
これは売上債権の回収速度を表す。例えば、売上債権回転率が4であれば、1年間に4回分売上債権を回収したことになる。

⑫棚卸し資産回転率
棚卸し資産回転率=売上高÷棚卸し資産
この数値が低い場合は在庫が多くなっているということだから注意が必要だ。

⑬固定資産回転率
固定資産回転率=売上高÷固定資産
これは固定資産をどの程度有効に活用して売上を上げたかを表す。

◆安全性分析
いくら収益性が高くても十分な支払い能力がなければ企業は倒産してしまう。このような支払い能力や倒産のリスクを分析するのが安全性分析だ。

①流動比率
流動比率=流動資産÷流動負債
1年以内に返済する必要がある流動負債と1年以内に現金化される流動資産の比率を表したもの。この指標は少なくとも100%以上、理想的には200%以上が望ましいといわれている。

②当座比率
当座比率=当座資産÷流動負債
当座資産は現金・預金、受取手形、売掛金、有価証券を合計したもの。受取手形、売掛金は貸倒引当金を控除した後の金額を使用する。基準としては100%以上が望ましいとされている。

③固定比率
固定比率=固定資産÷自己資本
この比率は100%以下であることが理想的。

④固定長期適合率
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)
固定長期適合率も100%以下であることが理想。これが100%を超えている時は、固定資産への投資のうち、流動負債で調達されている部分があるということを指す。

④自己資本比率
自己資本比率=自己資本÷総資本
この自己資本比率を逆数にしたものが財務レバレッジと呼ばれる。

⑤負債比率
負債比率=負債÷自己資本
負債比率は負債と自己資本の割合を表し、自己資本比率と連動する。自己資本比率が高くなると、負債が少なくなるため、負債比率が低下する。安全性という意味では低い方が良いということになる。

◆生産性分析

①付加価値
付加価値=売上高-外部購入費用
又は付加価値=経常利益+人件費+賃借料+純金利費用+減価償却費+租税公課
付加価値は企業がその経営活動によって新たに生み出した価値を表す。

②労働生産性(付加価値生産性)
労働生産性=付加価値÷従業員数
     =付加価値率×従業員一人当たり売上高
労働生産性は従業員1人当たりの付加価値を表す。式からも分かるように、労働生産性を高めるためには、商品の競争力を高めて付加価値率を高めるか、従業員の生産効率を高めて1人当たりの売上高を増加する必要がある。

◆成長性分析
企業の売上高や利益、総資産などが一定期間でどれくらい成長しているかを分析する。

①売上高成長率
売上高成長率=売上高増加額÷基準時点の売上高

②経常利益成長率
経常利益成長率=経常利益増加額÷基準時点の経常利益

③総資産成長率
総資産成長率=総資産純増額÷基準時点の総資産

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