「電話が苦手」が増えている

電話によるコミュニケーションが一般に思われているより難しいと感じている若者が増えていることにお気づきだろうか。加えて昨今の新型コロナウイルスの感染拡大によるリモートワークの普及で、出社する人が減り、どうしても出社の必要があって出ざるを得なかった人が、リモートワークの人たちの分まで会社にかかってきた電話に出ざるを得ない状況が増え、なお一層煩わしさが増している状況がある。一方、社外で顧客がどうしても担当者を捕まえたい場合、やむを得ず担当者の携帯電話に電話をかけているのに、そうした状況に慣れていない特に若者は、つい我流で、その気がなくても失礼な応対をしてしまうことになってしまい勝ちだ。

若者の肩を持つわけではないが、Appleがスマートフォン「iPhone」を発表したのが2007年。それ以前のガラケーと呼ばれた携帯電話の時代から考えると、今の若者は小学生から自分用の携帯電話を持ち、電話がかかってきても、その相手は自分の友人・知人に限られているのが当たり前だ。だから電話に出ても、自分から名乗ることもしない。無遠慮で多少乱暴な言葉を使っても許される。彼らからすれば、知らない誰かからの電話を受けるということ自体、社会に出て初めて経験することになる。それを上の者が分からないから、電話ぐらい受けて当たり前、掛けることができて当たり前と思ってしまったりする。

電話よりメール?

実際、新人が職場に配属される頃、電話でのやり取りで気まずい思いをさせられることが多いように思うのは、あながち私の思い過ごしと一笑に付すことはできないのではないか。会社で何の教育もされずに、そんな電話の応対が当たり前のようにされると、後々大きなトラブルの原因になりかねない。

最近は「電話よりメール」とも言う方は多いだろう。確かに私自身を振り返ってもメールで済ませることが増えた。というか、普段大概はメールでやり取りしている。その方が相手の忙しい時にわざわざ電話をかけて邪魔をする心配もなく、特に言葉で言った、言わないと後でもめたりしないように、証拠を残す意味でもメールでのやり取りは重宝している。しかし、それでもメールでのやり取りに不安な時、面倒な時はやっぱり電話をかける。たとえメールを送っていても念のために電話をかけることもある。だから「たかが電話」と思うなかれだ。若者を指導する立場にある上司なら、もっと事態の重大さを認識して教育を徹底するなり、対策を練ることをしなければならないのではないか。

メールと互いのデメリットを相補う

コミュニケーションで言語情報(その意味内容)によって相手に伝わるのはわずか7%にしか過ぎないという有名な「メラビアンの法則」がある。聴覚情報(口調や話す速さ、声の質)が38%、視覚情報(見た目や視線、表情)が55%というやつだ。つまり伝えたい内容も大切だが、声のトーン、間、言い方、会話のテンポなどの言葉の周辺や、顔の表情、腕組みなどの仕草といった非言語的な要素が、互いのコミュニケーションに大きな役割を果たしている。そういった点からも、電話とメールは本来、うまく補い合うもののように思う。

メールは記録に残すことができたり、「CC」や「BCC」をつければ一度に複数の人に伝えることもできる。また、電話でなら憚られるような時間帯にも送信するだけならできる(もっとも、今日では勤務時間外に仕事のメールをやり取りするストレスが問題になっているが…)。そのメリットの半面、例えば、電話でなら声を大にして言うとか、酸っぱく言うようなニュアンスが伝わりにくく、細かなやり取りが難しいというデメリットがある。また、リアルタイムでのやり取りでない点も時には何回もやり取りする中で、想定以上の時間がかかってしまう原因になったりもする。こんなデメリットは電話でなら容易に補うことができる。

そのやり取りの奥深さを再認識する

しかし、その電話でのやり取りが逆におざなりになっているのが今日なのだ。コミュニケーションはメールや電話だけではない。もちろん直接会って話すのが一番だろうが、SNSやWeb会議システムなども最近はあって、その手段には事欠かない。これらの手段を目的に合わせて使いこなすのが、コミュニケーションで躓かないための第一歩だ。電話でのやり取りをきっちりできるというのは、そのための基本になるものだろう。電話で相手の心象を悪くするのは簡単だが、心をつかむのは意外と難しいものだ。

電話のテクニックを教えるコンサルタントは、電話対応での心構えとして、待たされる側における時間間隔を意識するのが何より基本という。「大変お待たせいたしました」「少々お待ちください」という声かけは、そんな中から生まれてきた。しかも、電話をかける方は「お時間よろしいでしょうか」という始めの一声があるかないかでも最初の印象は大分異なってくる。そのほか、相槌や共感を伝えることで相手の親密度を向上させたり、電話で見えなくても、相手に笑顔やお辞儀を忘れないことで、こちらの心を伝えることもできる。最後に「これから暑くなるのお身体を大切になさってください」など相手への思いやりの言葉を残すことができれば、そうでない場合と比べて双方の関係は大分変わってくるのは想像に難くない。

電話での応対はかくも奥行きが深い。慣れているはずの中高年世代にとっても改めて自戒の念として欲しい。