登記の次は届出

会社の設立登記が終わったら、税金や健康保険、厚生年金、雇用保険などの手続きをしなければならない。これらの届出にはそれぞれ提出期限が設けられているので、必ず事前に確認した上で、準備をしておかねばならない。私は自分1人でやったが、手続き自体は何ら難しいものでもなかった。しかし、煩雑な作業をしている時間も余裕もないという方には、この時点で各手続きの専門家に相談する方法もある。どのような方法をとるのか、それぞれの置かれた立場によってよく検討してみるとよい。

届出としては税金関係と労働保険・社会保険の2つに大きく分かれるが、税金関係についての届出先は税務署だけでなく、都道府県税事務所と市町村役場もあるので注意が必要だ。また、決められている提出期限は以下に示すが、都道府県関係では自治体によって提出期限に違いがあることもあるので、これも必ず確認するようにしなければならない。
労働保険・社会保険については、それらの届出先は労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所の3つに分けられる。

こんなにある各種届出

【税金関係の届出】
①税務署への届出
・法人設立届出書・・・会社設立の日から2か月以内
・給与支払事務所等の開設届出書・・・給与支払事務所等の開設から1か月以内
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書・・・納期の特例を受ける月の初日の前日まで
・青色申告の承認申請書(必要に応じて)・・・設立から3か月以内(初年度の決算終了の日が3か月より早い場合は決算終了の日まで)
・減価償却資産の償却方法の届出書(必要に応じて)・・・設立第1期の確定申告書の提出期限まで
・棚卸資産の評価方法の届出書―
・消費税課税事業者選択届出書―

②都道府県税事務所への届出
・法人設立届出書・・・都道府県によって異なる

③市町村役場への届出書(東京23区の場合は不要)
・法人設立届出書・・・市町村によって異なる

【社会保険・労務関係の届出】
①労働基準監督署への届出
・労働保険関係成立届・・・雇入れの日から10日以内
・労働保険料概算保険料申告書・・・保険関係成立の日から50日以内

②ハローワークへの届出
・雇用保険適用事業所設置届・・・雇入れの日から10日以内
・雇用保険被保険者資格取得届・・・雇入れの日の属する月の翌月10日まで

③年金事務所への届出
・健康保険・厚生年金保険新規適用届・・・会社設立の日から5日以内
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届・・・会社設立の日又は雇入れの日から5日以内
・健康保険扶養者(異動)届・・・扶養者がいる場合遅滞なく
・国民年金第3号被保険者資格取得届・・・事由発生から14日以内

法人成りの手続きはちょっと面倒⁈

「法人成り」(個人事業から会社を設立して事業を引き継ぐこと)する際は、特に税務上の申告が多くなる。たとえ個人事業主と会社の代表取締役が同じであっても、財産引継ぎや賃貸借契約の変更などを行う必要が生じる。また、資産なども名義を変更する場合、所得税や消費税の課税対象となる場合があるので、可能な限り早い段階で税理士などの専門家に相談した方が良いかもしれない。ここには詳しくは書かないが、大体法人成りに伴って必要となる手続きは以下の通りとなっている。
①事業用資産や負債の引継ぎ
②各種契約の変更手続き
③各種手続き
④個人事業の所得税の確定申告

念のために、個人事業の資産や負債を引き継がない場合にしなければならないことは以下の通り。
①在庫を全て販売する
②売掛金や貸付金を全て回収する
③買掛金や借入金を全て支払う
④事務所の賃貸借契約を解約する
⑤(従業員がいれば)いったん退職処理する
⑥保険契約やリース契約を解約又は引継ぎを検討する
⑦個人事業の廃業届提出と個人事業の確定申告を行う

これを忘れちゃ後々面倒になる!

意外と忘れやすいのが源泉徴収税の納付期限の特例を受ける時の届出だ。会社は毎月の従業員給与などから源泉徴収し、翌月の10日までに納付しなければならないことになっている。しかし、これでは事務が煩雑になるので、給与を支払う従業員が常時10人未満の事業所の場合は、源泉徴収の納付を半年に1回まとめて納付することができるようになっている。この届出に提出期限はないが、設立後時間が経つと忘れやすいので、特例を受ける権利がある場合は給与支払事務所等の開設届と一緒に提出すればいいだろう。特例が適用されるのは、申請書を提出した月の翌月からとなる。

年間所得を申告する際、青色申告を選択したい場合は、その承認申請書を税務署に提出しなければならないが、この青色申告にするメリットには、
①(平成29年4月1日以降開始した事業年度に生じた)欠損金を10年間繰り越して計上できる
②その赤字により還付金を受けられる場合がある
③特定の資産の取得について全額償却できる
などのメリットがある。逆に帳簿や財務諸表の記載の間違いなどがあると取り消されることもある。この青色申告が認められるには一定の条件があるが、申請に対して「却下(認められない)」という返事が来ない限り、申請は承認されたということになる。期限内に申請書を提出しないと、自動的に白色申告になってしまう。

また、消費税についてはすべての事業者に納税の義務が課せられているが、設立1年目で資本金が1000万円未満の法人の場合は、1期目は消費税が免税される。この場合、届出の必要はない。