ずっと付き合いが続く官公署

会社を設立したら毎年決められた時に各官公署への対応が必要になってくる。顧問税理士などがいれば教えてくれるのだろうが、なかなかそこまで余裕がない向きには、自分で1年を通じて大体どんなことをしなければならないのかを押さえておかねばならない。作業自体は難しいものでないものだけに、予めそれらを押さえておくことで、こうした作業も煩瑣に思わなくて済むようになる。以下に決算月が3月である会社を仮定して、主要な項目を挙げていこう。

源泉所得税の納付は年2回

1月にすべきこと
・償却資産税の申告
毎年1月になると償却資産税の申告書を市町村(東京23区の場合は都)に提出しなければならない。償却資産税とは毎年1月1日現在に所有する償却資産に対してかかる税金。償却資産とは減価償却を行う資産を指す。この償却資産が課税標準で150万円以上あると償却資産税を支払わなければならない。

・源泉所得税の納付
前年の7月~12月の給料などから源泉徴収した所得税を税務署に納付する。この源泉所得税は従業員の給料等から天引きし、会社が預かっているお金を指す。万一源泉所得税を納付しないと不納付加算税がとられ、さらに延滞税がとられる。
会社を設立し税務署に届出をすると納付書が送られてくるので、その納付書を用いて金融機関で納付することになる。源泉所得税がゼロの場合であっても、ゼロである旨の納付書を作成し、税務署に届出なければならない。

・法定調書/給与支払い報告書等の提出
法定調書は税務署に、給与支払い報告書は市区町村に、1年間に誰にいくらの給料を払ったのかを報告する。

一石何鳥にもなる棚卸

3月にすべきこと
・実地棚卸
決算時には実地棚卸をする。実地棚卸とは、決算期末に棚卸資産(商品や製品など)を数える手続き。税務的には数量さえ数えれば問題はないが、ついでに商品や製品が傷んでいないか、早めに処分をした方が良いものなどがないかを確認すれば、通常業務にも役に立つ。

「税理士に一任」では済まない決算

4月にすべきこと
・決算作業
決算作業では期末の資産、負債、一会計期間の経費や売上がきちんと計上されているかを精査する。たとえ税理士が作業を代行してくれるにしても、そもそも社長や従業員にしかわからないこともたくさんある。税理士に頼むにしても、なるべく早く頼めるように帳簿などを整え、質問などにも回答するようにした方がよい。この決算作業が終わると、貸借対照表や損益計算書ができ上がり、1年間の会社の経営成績が明らかになる。

役員報酬の見直しもこの時期に

5月にすべきこと
・株主総会
株式会社は年に1回、株主総会を行わなければならない。現実的には社長=株主ということが多いだろうから、わざわざ取り上げるのは大げさになるかもしれないが、自分の会社を見直す良い機会でもある。数字を見つめ直し、来期の目標などを立ててみるのも良いだろう。また、社長をはじめとする役員報酬の改定は基本的に1回、この定時株主総会の時となるので、場合によっては報酬額の上げ下げを決めなければならない。

・税務申告
株主総会が終わると税務申告をしなければならない。法人の税務申告書は次の3か所に提出する。
税務署=法人税、消費税など
都道府県=事業税、住民税など
市町村=住民税など
税務申告をすると同時に税金の納付もしなければならない。申告書を提出しなかったり、税金を納付しない場合には当然、ペナルティーが課せられるので注意が必要だ。

社会保険事務所への届出もこの時期

7月にすべきこと
・源泉所得税の納付
1月の時と同様、今度は1月~6月の給料などから源泉徴収した所得税を税務署に納付しなければならない。

・健康保険/厚生年金保険の定時決定
会社は7月1日現在に雇用している社会保険加入者の3か月間(4月~6月)の給料を算定基礎届により届出を行い、厚生労働大臣はこの届出内容に基づき毎年1回、標準報酬月額を決定し直す。決定し直された標準報酬月額は9月から翌年8月までの各月に適用される。

・労働保険の年度更新
会社は労働保険(労災保険、雇用保険)の前年度確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付しなければならない。

年末調整で1年の締めくくり

12月にすべきこと
・年末調整業務
もしサラリーマンを経験していた方であれば会社にしてもらっていた年末調整を、今度は社長であるあなた自身が、従業員の年末調整をしなければならない。必要な書類は顧問税理士にお願いするものいいが、税務署がこの時期になれば毎年開催している年末調整説明会に出れば手に入る。

以上、いかがでしたでしょうか。
大体の流れだけでも押さえておかないと、「この前税務署に行ったばかりなのに何故また行く必要があるのか」とか、「その手続きはもう済ませているはず」といった間違い、勘違いを起こすことになってしまう。そうして万一延滞金などを支払わなければならなくなった時はそれを支払えば問題は解決するということだけではなく、社会的な信用に傷がつくことになってしまい、引いては事業の進行にも差しさわりが生じかねない。
これらの作業を単に「煩わしいもの」と捉えるのではなく、決算や税務申告などを会社の事業の方向性、将来を考え直す良い機会にしていくことが大事なのではないかと思う。