連帯保証のいらない方が逆に恐いことも

日本では銀行などから融資を受ける際、経営者の連帯保証を求められることが一般的とされる。とくに担保として十分な不動産などを持っていないベンチャー企業や零細企業、そして中小企業では金融機関から連帯保証を求められて驚いたり、断ったりする経営者はいないだろう。○○株式会社が借りたお金はその会社の借金であって、株式会社である以上、たとえ会社が倒産した場合でも出資者は債務者に対してその出資額を限度として責任を負わねばならないが、それ以上は責任を負わなくても良いはずだ。しかし、経営者が連帯保証をすると、その会社の借金を個人が代わって返済しなければならなくなる。

連帯保証を求めないで貸してくれるところがない限り、経営者はこれを受け入れざるを得ないのが現実だ。将来性や技術力などを信頼してもらい、連帯保証がなくても資金を貸してくれるように説得しても、エンジェル投資家ならともかく、普通の金融機関であれば応じないのが普通だろう。逆に、連帯保証なしでも貸してくれるところは異常な高金利であったり、反社会的勢力が関与している可能性もあるので、こちらの方が恐かったりする。この連帯保証の恐さを何となく聞いて知ってはいても、本当には知らない方も多いので注意しなければいけない。

問答無用の連帯保証

連帯保証の一体どこが恐いのか。例えば○○会社の連帯保証をすると、債権者からの借金返済を履行するよう求められたとき、あなたも直ちにそれに応じなくてはならなくなる。あなたの立場からすれば、○○会社に事実を確認したり、○○会社に返済に使える財産がないのかどうかを検証したりして、なるべく自分の支払いが少なくなるようにしようとするだろう。そして債権者には○○会社にまず返済の督促をするように促すのが普通だろうと思う。しかし、そうしたアプローチを許さないのが連帯保証だ。ある日、××銀行から○○会社に貸している資金を返済するよう求められたら、有無を言わさずそれに応じさせられるのが連帯保証なのだ。

かつてはこの連帯保証は経営者だけでなく、その親族や知人などの第三者からも取得することが当たり前のように行われてきていた。こうして経営者はもちろん、経営に関わっていない者にまで突然資金の返済を迫られ、自己破産や自殺といった社会問題を引き起こしていたのだ。連帯保証はそれほどに強い力を持つため、普通はたとえ友人であっても、連帯保証になって欲しいと頼まれても、極力応じないのが当たり前だ。これほど連帯保証になることの負担は重いため、そもそも保証契約は書面又は電磁的記録による意思表示が必要とされている。金融庁は借入れをする会社の経営者以外の第三者が人間関係から断り切れずに保証してしまい、一緒に多額の借金を負う悲劇を防ごうとしており、その効果は一定程度出てきているとされているが…。

包括根保証の恐さって何?

連帯保証について、借りる側からみて恐いという話をしてきたが、一方では経営者のモラルハザードを防ぐという意味で、経営者による保証は必要だという意見もあることは知っておいていいかもしれない。起業家や経営者にとっては、自分の生活がかかっているからこそより頑張ることができるという意見だ。また、債権者に簡単にリスクを転嫁できないからこそ、その行動も慎重になってくるということだ。言われてみればそれも一理あるように思う。銀行などから連帯保証を求められた時は、そういう意図が含まれていることを考えた上で臨むのが良いだろう。

また、連帯責任ほど一般的ではないが、包括根保証というものもあることを付け加えておきたい。これも求められる側からすれば“危険な”保証だ。継続的な取引によって生じる不特定多数の債務について保証することを根保証というが、そのうち借りられる限度額や期間について限定のないものを包括根保証という。何が危険かというと、保証人が知らないところで無制限に債務を保証させられる恐れがあるからだ。

極度額や期間の定めはあるか

包括根保証の恐さは、例えば○○会社が銀行から1000万円を借りる場合、将来さらに借り入れることを想定して、期間3年間で極度額5000万円を借りられるような合意をする場合に起こる。この時、例えば○○会社の社長の知り合いの△△氏が、1000万円の借入条項についてだけ説明を受けて保証人になったとする。△△氏が3年間で5000万円借りられることには注意を払わなかったとしても、○○会社が3年以内に5000万円借りれば、その全額について保証させられることになってしまう。このように包括根保証は極度額と期間の限定がないものなので、結果、△△氏は○○会社が将来に渡って借りるであろう金額について無限定に保証するという恐ろしいことになってしまうのだ。

このように過酷な結果を招くことになるので、個人に関する包括根保証は民法上禁止されている。個人については極度額の定めがなければ無効になり、期間が無限定だったり5年超の場合は自動的に3年になる。だが実際は、保証人の無知に付け込む形で、民法違反の包括根保証を負わされるケースが後を絶たないという。やむを得ない事情で保証人になる場合があっても、包括根保証があるかないかは必ず確認する必要がある。