最初の戦略が肝心

中小企業白書によると2018年度は17年度と比べて情報通信業、運輸業・郵便業を除きすべての業種で開業数が減少している。しかし開業においては事業のコアとなる技術やノウハウ、コンテンツがあることが必要だ。それがしっかりしているとその後の成長につながるし、厳しい競争を勝ち抜く力にもなる。それでも他社より優れた技術、ノウハウ、コンテンツを持っていたとしても、それでこの先ずっと安泰ということはあり得ない。競争相手はあなたの優れたところをどんどん取り入れようとしてくるし、彼らは彼らで独自のコアを持とうと努力しているからだ。

そこで、自社のコアの部分を他社に真似されないためにどうすればいいのか、提携先や取引先にコアの部分を盗まれないためにどうすればいいのか、コアの部分を生かして事業をより発展させるにはどうすればいいのか、といった問題が起きる。この問題を解決に導く一つの手段が知的財産権として法的にきっちり保護することだ。知的財産権を取得すれば、もし他社が自社の特許権を侵害していることに気付いた場合、その使用を直ちに止めさせ、自社が被った損害の賠償を求める警告を行うことができる。他社の特許でカバーされている技術を使いたい場合は、その特許権者からライセンスを受けるということも可能だ。これら知的財産権の活用は最初の戦略が肝心。まずこの知的財産権にはどのようなものがあるのか、ここでまとめて見ておくことにしよう。

高度な特許権、敷居の低い実用新案権

知的財産は人間の創造的な活動により生み出される。それは機械設備などと異なり無形の財産だ。知的財産権はこの知的財産を保護するための権利を指す。知的財産権を大きく分類すると、産業上の創作に関する「産業財産権」と文化的な著作に関する「著作権」とに分けられる。さらに産業財産権には4つの種類があって、「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」に分かれる。

特許権は発明を保護するための権利。発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と定義されている。「技術的思想」の中にはモノの発明のほか、方法の発明も含まれている。だから機械装置のように具体的なモノを伴う技術だけでなく、モノの製造方法や測定方法なども対象となる。そして、その要件の中には、「新規性がある」ことが必要となっており、もし特許の出願前に発明が公に知られている場合は特許を取得できなくなる。例えば新製品の宣伝や販売が先になってしまった場合などがそうだ。

実用新案権の実用新案とは「自然法則を利用した技術的思想の創作」とされていて、特許権と比べると「高度なもの」という記述がない。逆に言えば、実用新案の対象は決して「高度なもの」である必要はないということだ。また、その対象には「物品の形状、構造、または組み合わせに係る」ものに限定されているため、特許件のようにモノの製造方法などの方法に関するものは含まれない。

メロディーも商標権

意匠権はデザインを意味する意匠を保護するための権利。物の形状や模様、色など外観的な特徴を保護する。その定義の中には「視覚を通じて美感を起こさせるもの」である必要があるため、製品の機能を確保するためだけの形状、例えばコンセントの形状などをそのまま意匠登録することはできないとされている。

商標権はブランド(商標)やネーミングやロゴなどのマークを保護するための権利。消費者などが商品を購入する際、機能だけでなくブランドも重要な選択基準になってくる。ブランドによって誰が作ったものなのかが分かり、一定の品質が期待できるからだ。最近では色彩のみからなるブランドや、ホログラム(文字や図形などが見る角度によって変化する)ブランド、音によるブランド(CMで流れるメロディーや携帯電話の着信音など)なども認められるようになっている。

商標権には独特の制度があって、社団法人や事業協同組合などの団体が、地域の名産品を団体登録として登録することで、構成員がその商標を使用できるようになるものや、事業協同組合などの法人格を有する組合や商工会、商工会議所、NPO法人などが登録できる、地域名に商品の普通名称を組み合わせた商標―例えば「夕張メロン」などーを登録できる制度がある。

登録不要の著作権

著作権は登録を必要とせずに創作と同時に発生するのが特徴だ。著作物の定義は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされている。従って、電話帳のようなただ単に電話番号を一覧表にしたものは著作権の対象とはならない。逆に、日本舞踏やダンスなどの振り付け、絵画、版画、彫刻、芸術的な建築物、地図や設計図、電話帳とは異なり素材の選択や配列によって創作性を有する著作物―例えば百科事典などーは著作権の対象だ。

例えば、コンピュータのソフトウエアであれば特許と著作権の双方で保護されることがあり得る。一方、独自技術などは特許として独占する代わりに公開するのがいいのか(特許法では特許の出願日から1年6か月が経つと「出願公開」となり、出願した特許の内容が特許庁の発行する「特許公報」に掲載される)、営業秘密として独占する権利はないものの秘密として持ち続けるのが良いのかなど、慎重に判断しなければならないところだ。たとえ特許権があるからといっても、それで安心するのでなく、秘密保持契約や共同研究開発契約なども活用することで、しっかりと自社の権利を確保しておくことが大切になってくる。