師弟関係で団結力

歴史的な大転換期にあるとされる今、企業におけるリーダーの在り方も変化を求められるとされる。理性ではなく人間の心に焦点を当てた感性論哲学の創始者である芳村思風氏は、すでに20年以上も前からこの流れを予見し、新たなリーダー像を提唱していたそうだ。新時代に対応できるリーダーとはどのようなものなのか、芳村氏はそれを「感性型リーダーシップ10か条」としてまとめている。以下、それについて具体的に見てみることにする。

第一に求められるのは、「教育力」であるとする。仕事は社長だけでできるものではなく、現場で働く社員を教育し、結果を出してもらわなければならない。教育力なしに組織の運営は困難だ。ただ、ここでいう教育力とはいわゆる何かを教える、指導することとは少し異なる。結果の出ない社員がいた時、結果が出るようになるまで育て上げるのがリーダーの務めであり、その力こそが教育力であるという。そして、最も理想的なのが経営者と社員、リーダーと部下との間に「師弟関係」が生まれることだ。そうすれば、そこに理論理屈を超えた団結力が生まれることになる。

2番目は、「磨かれた個性」と「人望」だ。磨かれた個性とはカリスマ性と言い換えることもできる。人望は尊敬されるリーダーになること、人間の格を作るということ。

部下が失敗した時に守ることができるか

3つ目の条件として、「勇気ある行動力」がある。勇気あるリーダーか否かは、部下が何らかの失敗をした時にそれを守ることができるかどうかで分かる。部下の失敗は自分の指導力の未熟さが原因であると受け止めて泥をかぶることができるか。何かをやる上では困難にぶつかるのは当然と腹をくくることが大切だ。

4番目に求められるのは「情熱を持って理想を語ること」「先見力」だ。リーダーはその組織の夢や理想、目標を持って語り、それによって部下を奮起させ率いていく役割を担っている。そのことによって組織全体が明確な目標を共有することができる。夢や理想があれば人間はどんな苦しみにも耐えることができる。反対にそれを失った時、現実の厳しさに押しつぶされることになるのだ。

5番目の条件は、その夢、理想をさらに具体化し、「今、自分たちがやっている仕事の意味や価値、素晴らしさを情熱を持って語ること」だ。企業にうかがうと、朝礼で企業理念などを唱和している様子を目にすることが多い。しかし、理念をただ唱和するだけでは社員の情熱や気力は高まらず、受け身の仕事からなかなか脱皮できないケースも多い。リーダーなら仕事の素晴らしさを熱く語りかけ、皆の心を一つにまとめることが求められる。

その仕事に命を賭けていますか

6番目の条件は「自分の生き方を支える哲学を持つこと」だ。哲学は信念という言葉に置き換えることもできる。「俺(私)はこの仕事のためなら死ねる」という強烈な思いを抱いていれば、何があってもぐらつくことがない。「このためなら死ねる」というものに出会った時、人の命は最も激しく、美しく燃え上がることができる。

7番目の条件は「リーダーの人間的な成長意欲」だ。会社は生き物と同じ。リーダーに成長意欲がなくなれば、発展は止まってしまう。成長意欲という言葉が分かりにくければ、不可能を可能にしていこうとする強烈な思い、限界への挑戦とでも言い換えても良い。強烈な意思で限界を突破しようとする時、ブレイクスルーが起き、会社の良い方向へ発展していく。

8番目の条件として「常に改良、改革、創意工夫を続けること」がある。会社は日々前進を続けていかなくては、いずれ衰退していくことになる。リーダーは、「この会社に5年、10年いれば、もっとすごいことが経験できる。自分の人生を花開かせることができる」と部下に希望を与えるとともに、良い方向への変化を実感させる役割がある。そのためには先入観、古い常識にとらわれることなく、「ここを変えればもっと良くなる」「本当にこれで良いのか」という現実への“違和感”に応えていく努力も合わせて必要だ。

意見の違いは自分の欠けている部分を教えてくれる良い機会

9つ目の条件は「文化力」だ。これからのリーダーは仕事だけでなく、文化的な分野にも精通していなくてはならない。仕事だけでは視野も狭くなる。仕事以外にもいろいろなことに挑戦するリーダーが部下の尊敬を集めるようになる。

10か条の最後は「人間性の豊かさ」、つまり「人間の幅」だ。人間性の豊かなリーダーは多くの人を抱きながら組織を率いていくことができる。それにはリーダー自身に部下のいろいろな価値観を受け入れ、それを活用していける力量が求められる。部下と考えが対立する時、それは部下が自分になりものを持っているからだ。考え方が違うといって避けていては、部下から何も学ぶことができず、リーダー自身の成長にもつながらない。「考えが合わない相手は、自分に欠けている大切な部分を教えてくれる役割を担ってくれているのだ」と自分自身に言い聞かせ、より器量の大きな人物を目指していかなくてはいけない。

これらを眺めてみると、まるでスーパーマンにでもなることが求められているように思われるかもしれないが、まずはそういう資質が必要になっていることを自覚することから始めても良い。自分に足りないところを補う努力を続けることで少しでも理想に近づくことができれば、その時会社も間違いなく発展を遂げているだろう。