半分以上が失敗

近年取り上げられることの多いビジネスの一つに「サブスクリプションモデル」があるが、日本サブスクリプションビジネス振興会で代表理事を務める佐川隼人氏は、「全体の6、7割はうまくいっていないのではないか」と懸念する。念のために言うと、そのサブスクリプションモデルとは決して今に始まったものではなく、以前から新聞の宅配やスポーツクラブなどでお馴染みのビジネスモデルだ。通勤や通学で使う定期券などもその代表的なもの。要はモノを買い取るのでなく、モノの利用権を借りて、利用した期間に応じて料金を支払う方式のことを指す。

モノが沢山売れて、一度店に足を運んでくれた客がまた何度も来店してくれるというのは、単純なことのようでいて実はとても難しいことでもある。この言うなれば。単発で収益を上げ続ける「フロー型ビジネス」は当たれば大きいだろうが、季節や景気、そして何より移り気な客の外部要因に左右されやすく、将来に向けての事業計画を立てにくいという難点がある。一方、サブスクリプションモデルは客数、単価、契約期間の3軸で経営状態を把握することで、計画も立てやすく、業績の上下も比較的緩やかなため、何より経営者の心理の上にも余裕が生まれやすいとされる。

VIPがイメージできているか

それでは何故、その多くが「うまくいっていない」という状況に陥るのか。佐川氏によると、「それは押さえるべき点が押さえられていないから」ということになる。ポイントは何点かあるのだが、そのまず第1に挙げられるのが、「VIPをイメージして商材が選定されているか」ということだ。

その商材を一番使ってくれる客がイメージできていない例として、居酒屋でのサブスクリプションの導入を見ても、いつも利用している客よりも客数を増やそうとするあまり、新規客の取り込みばかりを意識したものになっていることがあるという。例えば、「月額〇円で牛肉食べ放題」と打ち出したところ1人客が押し寄せ、その1人が4人机を何時間も占拠してしまう例が相次いだばかりに、これまで利用していた家族客が席を取れずに、離れて行ってしまったという例がある。
また、仮にそれが金額的にお得であっても、利用者に特別感があったり、便利でなければなかなか振り向いてはくれないものだ。これが押さえるべき点の2つ目。例えば、地域の美容室をチェーン化して「月額〇円で通い放題」にしたサービスがあるが、これなどはロングヘアーの女性にとって面倒なシャンプーやヘアケアが、自分の空いた時間を利用して大一番の仕事前やデート前に何度でも利用できるようにしたという成功例だ。ただ、自宅や職場などの付近に自分の利用したい美容室が何店あるのかというのが大切なのは言うまでもないが。

損益分岐点を押さえておく

サブスクリプションビジネスで大切なのは、最初にいかに黒字化できるモデルを作れるかにある。そのため経営管理上においても、押さえるべき点がある。その第1は重要数値を常に把握しておくことだ。中でも損益分岐点を押さえておくことは決定的に重要だ。サブスクリプションビジネスは積み上げていくビジネス。客が何人を超えれば黒字になるのかを押さえておかねばならない。そして、新規客の獲得コスト、解約率も当然知っておかなければ、計画を立てることはできない。このためデータの蓄積は欠かせない。

例えば、毎週季節の花が送られてくるサブスクリプションモデルがあるが、致命的なのは送られてきた花が枯れていたりすること。新規客の獲得コストを知っていれば、そうした場合の対応も自然と丁寧になるはずだ。いきなり解約される前に、客からのクレームに対して新たな花をすぐに送り直して、花が枯れていた原因を探ろうとするだろう。そうした客とのコミュニケーションは、サービスの向上に必須だ。
また、逆に日持ちのする商材の場合は、送られてくる商材が客のもとで消費されずに溜まってしまうこともある。そうした時も解約につながりやすいが、例えば、その申し出のあった際に、一時サービスを休止することで、解約を防止することができるかもしれない。

システムは徐々に作り上げるぐらいの気持ちで

サブスクリプションモデルと一口に言っても、今では同じモノを送る「定期購入型」、コース設定を行い毎回異なる商材を送る「頒布会型」、月額定額制で洋服を借り放題できるといった「会員制型」、管理栄養士が個人の病状などを考慮して弁当を送るような「レコメンド型」と、様々な種類がある。これからサブスクリプションモデルに取り組もうとする方は、自分のやろうとすることがそのいずれに相当するのか考えなければならない。「定期購入型」なら同じものを送るので比較的難易度は低いだろうが、一人ひとり異なるものを送ることになる「レコメンド型」なら初心者には難易度は高いことを肝に命じておくべきだ。

いずれにせよ、いきなりアプリなどのシステムを作り上げてから始めるのでなく、まずは試しに行ってみて、その手応えを確かめながらシステムを作り上げるのが望ましい。そして、最期になってしまったがどうしても配慮しておきたいのは、「価格は高めに設定しておくこと」だ。最初から安く設定しておくと、後でそれを引き上げるのは難しい。価格に見合ったサービスをどう付加するかを考えながら、徐々にシステムを作り上げていくぐらいの気持ちで臨むのが良いのではないだろうか。

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