新紙幣の特徴はホログラム技術

すでに伝えられているように、政府は2024年度の上期を目途に1万円札と5千円札、それに千円札の紙幣のデザインを一新する。新しいお札の顔は1万円札が渋沢栄一、5千円札が津田梅子、千円札が北里柴三郎となり、明治維新以降の日本の実業や女子教育、医学研究を切り開いた人物が選ばれた。その人物の裏面も一新される。1万円札は東京駅の丸の内駅舎、5千円札は藤の花、千円札は富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」が採用される。紙幣を一新するのは、2004年以来、約20年振りとなる。麻生財務大臣はその理由について、偽造防止の観点からこれまでも20年ごとに変えてきたと説明した。

これら紙幣や硬貨の刷新の目的は、巧妙化する偽造・犯罪防止につなげることとされる。警視庁の発表によると、偽造紙幣の発見枚数は2018年に1万円札が1523枚、5千円札が29枚、千円札が146枚の、合わせて1698枚もあった。これまでも偽造防止のため、紙幣を傾けると文字が浮かび上がる「潜像模様」、模様が出たり発光するインキ、透かしなど、様々な技術が使われてきた。今回最も注目されているのがホログラムの技術だ。新紙幣で、肖像の3D画像が回転するホログラムが世界で初めて採用されることが明らかになっている。

ブランド品の保護にもホログラム

このホログラムとはどういうものかというのを私も調べようとしたのだが、難しくて手が出ない。だからここで述べるのは控えるが、どうもこのホログラムの技術、偽造・模倣防止対策としての活用が広がっているようだ。紙幣のほか、金券、クレジットカードのほか、ブランド品の保護用途などにも採用されているという。その背景にあるのは、偽造・模倣品の流通による被害額が世界で年間約177兆円にも上るという事実だ(凸版印刷調べ)。企業にとって偽造・模倣品の横行は、売上高の減少を招くだけでなく、信頼やブランド価値の低下につながる厄介な問題だ。勢い、消費者でも簡単に商品の真贋が判別できる仕組みが求められているというわけだ。

凸版印刷が2018年に開発したのは、世界で初めてパステルカラーの構造色を発色するホログラムだ。従来とは異なる特徴的な色は、製造時に光の干渉や散乱現象を調整することで発色が可能になるため、偽造は非常に難しいとされる。この珍しい色調に加えて、傾けると色が消失する構造のため、目視で判別しやすい。審美性の高さを生かしてアイキャッチとしても活用できる。日本ゴルフ用品協会が推奨する業界共通のセキュリティーラベルに採用された実績もあり、ホログラムの認知度向上につながった。

スマホで真贋を判別

スマートフォンのカメラ機能や発光ダイオード(LED)ライトを活用する動きも活発化している。大日本印刷はスマホのLEDライトを使って、本物と偽物を区別できるホログラムを手掛けている。表面に微細な凹凸形状を施し、LEDライトを照射すると文字や絵が浮かび上がる仕組みだ。消費者でも特別な機器を使うことなく簡単に判別できる。画像を撮影して製造元などに提供することで、製品回収をしなくても確認作業を進めることができ、負担軽減にもつながる。

スマホカメラで判別できるホログラムは製造現場でも高い需要がある。読み取り専用の機械を導入すると数十万円かかるケースもある中で、スマホを使って判別できることは導入コストを安くできることにつながる。大日本印刷はフル3次元の立体表現ができるスマホ対応製品を2018年に開発した。これはフィルム状に特殊なフォトポリマー層を塗布し、物体から反射させた光の干渉縞を、材料内部の密度を変化させることによって記録する。製造・複製に特殊な技術や材料が必要で、安全性が高いとされる。自動車や電子部品など、精密機器を扱う現場での採用を見込んでいる。

まず意識の向上を

日本企業の偽造・模倣被害は、アジア地域のみならず、米国、欧州、南米、中東などにも拡大している。この背景には、中国において、安価で比較的良質の偽造・模倣品が大量に製造されていること、インターネットによる売買、海外向け輸送手段の発達など、偽造・模倣品を迅速・安価に海外へ搬送することができるようになったことなどがあるとされる。

このため日本企業の偽造・模倣対策は、国際市場での偽造・模倣品排除に重点が置かれるようになり、また日本国内においては、海外からの偽造・模倣品の流入を阻止するため税関での水際措置の強化が図られている。

特許庁の2017年度の調査では、国内で産業財産権を保有する企業のうち、偽造・模倣被害の対策を実施していない企業は13万2757件にも上るという。自社が偽造・模倣被害を受けているのかどうか、実態を把握していない企業の多いのが現状だ。

ホログラムを始めとする偽造・模倣対策のための技術が日進月歩で進んでいるとはいえ、偽造・模倣する側の手口も巧妙化していく。ホログラムの技術がいかに優れたものであっても、まずは偽造・模倣品を決して許さないという意識の徹底が求められる。