増えるUDタクシー

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて大きく変わろうとしている業界がある。それはタクシー業界だ。「誰もが利用しやすいタクシー」の総称として使われている「UD(ユニバーサルデザイン)タクシー」の更なる拡充が目指されているほか、訪日外国人に対応できる外国語対応ドライバーの育成を拡大する取り組みも始まった。もともと配車の予約から決裁までスマホアプリでできるウーバーのような仕組みや、自動運転の試みなど、時代の波に大きくさらされている業界だが、東京オリンピック・パラリンピックを機会に自らも多様化するニーズにきめ細かく対応し、利用者の利便性の向上を図りながら生き残りを賭けようとしている。

2017年にトヨタ自動車から発売されたUDタクシー「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」は1年間に9000台弱の普及がなされたようだが、国土交通省はこれを「移動等円滑化の促進に関する基本方針」の改正により、2020年度までに福祉・UDタクシーの車両台数の目標を、2万8000台から4万4000台に引き上げた。UDタクシーは高齢者や妊産婦、車椅子を利用する人など、誰もがスムーズに乗降できるようにと配慮して作られた車両。専用のスロープを使えば車椅子でもスムーズに乗り降りできる。それで料金も一般のタクシーと同一だ。

観光案内から車椅子の介助まで

全国のタクシー協会や無線共同組合では、高齢者や障がい者などとのコミュニケーションや車椅子の取り扱い、乗降時の介助が適切にできるように、UD研修も実施している。(一財)全国福祉輸送サービス協会によれば、その研修修了者は東京だけで4万2000人を超えた。こうしたUD研修に加えて、「東京シティガイド検定」と「東京観光タクシードライバー認定研修」を受講したドライバーは、東京ハイヤー・タクシー協会が「東京観光タクシードライバー」として認定する制度も始まった。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、都内の観光案内をしながら車椅子の乗降介助までこなす、マルチドライバーの増員を目指している。

また、急増する訪日外国人客が安心してタクシーを利用できるように、国土交通省はタクシーの乗車料金を乗車する前に確定させる新サービスを全国で解禁した。今年4月に道路運送法上の通達を改正し、地方運輸局の準備が整った地域から導入を目指す。早ければ年内に東京など一部の地域で運用が始まる見通しとなっている。

このサービスは客がスマホの配車予約アプリを使って乗車地点と目的地を指定すると、スマホの地図上に地図、目的地までのルート、タクシーの走行距離が表示される。自動計算された料金に客が同意すると、確定した料金でタクシーに乗車できる仕組みになっている。

キャッシュレス対応、外国人対応もお任せ

訪日外国人がタクシーの乗車料金をスムーズに支払えるように、キャッシュレスの対応ができる決済端末の普及も進んでいる。東京ハイヤー・タクシー協会の調査によると、2018年3月現在、都内で運行するタクシーのうち、クレジットカード決済機が搭載されたタクシーは98.2%、電子マネーの決済機は80.5%だ。最近ではクレジットカード、電子マネー、交通系ICカード、Apple Payなど、オンライン決済サービスの利用が可能なタブレット端末も普及しつつある。

政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に、訪日観光客4000万人の目標を掲げる。タクシー業界でも訪日外国人に対応できるよう、多言語を話す外国人ドライバーの採用を拡大するとともに、日本人の乗務員でも基本的な英会話で対応ができるようにバイリンガルドライバーの養成を行っている。(公財)東京タクシーセンターによると、外国語に対応できるホスピタリティータクシーの乗務員数は2019年3月現在で1万人以上いて、なお年々増加傾向にある。

女性の乗務員が増加

このほかにも、GPS機能により依頼者の居場所を確認し、指定した場所までタクシーを呼べるスマホアプリを使った配車サービスや、多言語に対応するタブレット端末の導入も始まった。

業界ではタクシーを運転する乗務員の数が年々減少し続けている現実にも直面している。このため業界を挙げてタクシー乗務員の労働環境の改善に着手。長時間労働の削減や年休が取得しやすい職場づくりといった「働き方改革」実現に向けた取り組みを行ったところ、年間の労働時間は1991年をピークに徐々に改善しつつある。

一方でタクシー乗務員は働く人に合わせた柔軟な勤務を採りやすく、シフト制によりローテーションを組み勤務することも可能だ。育児期間中の女性でも労働環境を整えることで仕事の両立が可能なことから、全国各地では女性の乗務員が徐々に増加している。国土交通省ではその流れを後押しするように、女性ドライバーを含めた従業員が働きやすい勤務形態づくりや労働環境に関する情報を公開する企業に対して、「女性ドライバー応援企業」として認定する制度も創設している。