SNSで混とんに拍車?

技術革新のおかげで、SNSなどを使って自分たちの考えていることが社内や社外に向けて訴えやすくなっているのは事実だが、このことが必ずしも自分たちの思いが相手に伝わりやすくなったことを意味しない。むしろ現実は情報の過多が混とんに拍車をかけているのではないだろうか。何故こんなことが起きるのか。

例えば、企業の経営者の発言が曖昧模糊としたもので、しかもネコの目のように変わっていればどうだろう。その発言がいろいろな手段を得て発信されることで、その職務は余計に達成を困難なものにしているのではないだろうか。「この四半期は最優先課題に集中しよう」「顧客第一」「シェア重視」「安全第一」…と、当たり障りのない決まり文句を繰り返すだけで、その解釈を個々の従業員に任せていることがその原因だ。

確かにそれらの一つ一つは反対のしようもない。しかし、解釈が広く捉えられるこうした文句に、従業員が自分と同じように定義していると思い込んでいる経営者が悲しいくらいに多くいる。その結果、従業員たちはそれぞれ勝手にその真意を探るために想像をめぐらせ、解釈を始めるのだ。それがいい加減で、ばらばらな行動を招いてしまうことが少なくなく、時には大きなダメージを与えることにつながることにもなる。

意思統一の大切さ

経営者やリーダーが従業員一人ひとりの力を結集し、これを支援することを本来の目的とするなら、ポイントとなるいくつかの点において十分に社内で意思統一をしておかねばならない。その5つのポイントは、「組織の体制と階層」「財務業績」「リーダーの仕事観」「時間管理」「企業文化」であると、「コミュニケーションの教科書」(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部/ダイヤモンド社)は伝える。

第一の「組織の体制と階層」では、組織図というのが個人の権力や影響を表しているものだけに、その見方は感情に左右されやすい。人員削減、上司の交替、新しい業務プロセスなどを含めて、経営者が企業変革の解釈をうまくコントロールできないと組織全体の活動が滞ることになると懸念する。社内における観測気球を膨らませないように、明確かつ率直、しかも分かりやすいコミュニケーションで、従業員たちの行動を経営者と同様に律する必要がある。

経営者の思いは必ずしも従業員の思いと同じではない

次の「財務業績」にしても、仮に経営者が従業員たちに向かって、「約束した業績に向けて集中的に取り組む」必要があると語る時、従業員たちはそれを「どんな手でも使って計画通りの業績をあげろ」という意味に解釈することが多い。そして、ある経営者はその通り、時期が近づき目標を下回りそうなことが分かると、担当者にプレッシャーをかけ続けた。この結果、その会社は繁栄するどことか、まったく正反対の結果を招くことになった。従業員は何のためらいもなく押し込み営業を行い、このため業績の見直しを余儀なくされ、莫大な在庫評価損を抱え込むことになったのだった。

「リーダーの仕事観」については、意見と承認を求める部下に囲まれ、それを続けるうちに何にでも答えられることが自分の責務であると誤解してしまった経営者の例を出している。その経営者は周囲から隔絶された孤独な立場に置かれるようになり、情報を信用することができなくなり、有意義な意見が届かなくなってしまい、そしてついに、企業を消滅させてしまった。一方で、的を得た質問を投げかけるのが自分の役割であると認識した経営者は、社員が何の心配もなく提案できる環境を用意することで、必ず困難にあっても解答を得ることができ、その結果一丸となって会社が前進していった例を示している。

自問自答が求められる経営者

「時間管理」については、どの経営者も「時間が足りない」と感じているもので、一日という限られた時間を凝縮したり、やりくりしたりして、何とか時間の制約を克服しようとする。しかし、時間が主役になると、仕事本来の重要な目標より毎日のToDoリストが優先されることになる。その結果、期限に間に合わせることが優先されたばっかりに、顧客を見失って失注してしまった例を挙げている。

「企業文化」においてはその会社にふさわしい社員を雇い、会社の価値観にふさわしい行動を求め、勝利をもたらす業務プロセスを構築することで、高業績をもたらす企業文化を初めて手にすることができることを示している。成功を定義すること、成功の全体像を伝えること、自分が期待するところを従業員たちに示すことーこれらができない経営者は、無味乾燥な企業文化を生み出してしまうという。

結局「目標に向かって組織を動かすには、今日何をすべきだろうか」「社内のどこに混乱があるか」「今日はどの信念や考え方について、その曖昧さを払拭できるだろうか」「コミュニケーションに欠ける点は何か」「従業員の思い込みはどこに見られるのか」などと常に自問自答することが経営者には求められるのだ。