経営にとりわけ必要な力

皆さんは起業したり、企業の経営を軌道に乗せたり、その企業をさらに大きくするには、経営者の資質として何が必要だと思われるでしょうか。巷では、リーダーシップ論や挑戦心、コミュニケーションの仕方、折れない心などの大切さを訴える書籍やセミナーなどが山のようにある。そのすべてが正しいのだろうけど、私はある海外の先生からアイデアを追求し続ける開拓者精神が最も大切だと教わった。先ほど挙げたリーダーシップにしても、コミュニケーションにしても、すべてはアイデアが元になるというのだ。

私がよく指摘されたのは(その先生は私だけでなく日本人特有の発想として問題視されておられたが)、普段気付くことが少ないかもしれないが、「人と同じことをするのが良いと考える傾向がある」ということだ。そう言われれば、私の場合、思いつくことが沢山あった。そもそも私の子供のころの家庭環境が、祖父を中心にした大家族主義の中にあって、多くの身内の中でしかも長男としてうまく立ち回るには、周囲の顔色をうかがいながらその時々の流れをうまく汲み取って行動することが効果的だった。そこからは独創的なアイデアなんて考える必要もなかったし、それを考えることは逆に秩序を乱すようなものだった。

人と違うことをやる

しかし、その先生は、「人生をうまく、楽しく生きるにはリーダーシップを身に着けることが大切だ」と話した。そのリーダーシップを身に着けるために、「常に行動し、チャレンジし続けることが必要」であることを懇々と諭し始めたのだった。つまり、「誰よりも行動し、チャレンジし続けてさえいれば、みんながついてくる」と言ったのだ。そして、「それには自分の中にいくつものアイデアを持っている必要がある。アイデアをどんどん出して、周囲の人たちにそれを伝える。そのいくつかのアイデアの中から具体化するものが現れ、花開き、結実する可能性を帯びてくるものだ」と言うのだった。

そういう目で見れば、海外の人たちはいつも「人と違うことをやろう」という風に行動しているように思われる。これは特別な人たちだけのものではない。市井の様々な人たちまでもがいろいろなアイデアを考えている。それが単なる思い付き程度のことも少なくはないけれど、「こんな風にすればいいんじゃないかな」といった提案は、前の会社にいた時でも口にしている風景を度々目にした。次々と口に出す言葉を聞いていると、彼らの無知をさらけ出しているだけのように思われることもあるが、それにまったく臆することもない、それは見ていて爽快でもある。

アイデアを口にし、実行に移す

このようにいくつものアイデアを口に出すことで、海外の人たちは他人とコミュニケーションを取っているのかと思われる。自分があることに対してハッと思ったら、そのアイデアを湯水のごとく言葉にしていく。そうでないと、相手が何を考えているのか分からないのだ。私もよく言われた。「君が何をしたいのか分からない」と。「よくまあハッキリと言うもんだ」と感心している場合ではないが、「なるほどこうしてコミュニケーション、リーダーシップ、チャレンジがつながっていくのか」と考えさせられたものだった。

特にアメリカ人は、自分のアイデアを良いと思ったら、誰が何といおうとも単独でも実行に移すところがあるとされる。そのチャレンジ精神そのものは、とても尊敬に値するものだと思う。そして、そこにアメリカの開拓者精神が根付いているのを感じることができるのだ。この開拓者精神は、文字通り何もない、まったくのゼロからつくっていくという、アメリカ人が何世代にも渡って継承してきたもので、ハングリー精神とも言われるものだ。そこから自然とコミュニケーションやリーダーシップも育ってきているのだろう。

どんなアイデアも受け入れる姿勢を

良いアイデアを思い付いたら、ものすごいスピード感を持って、全力を尽くして努力することが欠かせない。成功している人というのは、須らくこのちょっと無謀とも思えるようなスピード感と行動力が備わっている。とにかく、「思い立ったら、即実行」なのだ。私の海外の先生も、「あの人を巻き込もう」と今、言ったと思ったら、夜遅くてもその場で電話をかけている、といった具合だ。せっかちとも違う、あるスピード感が身についているという感じで、それは今でも「すごかったなあ」としみじみ思い出される。

もちろん、それでもうまく行かないこともある。しかし、それは十分覚悟のうえ。それはそれで終わることが大切で、そのアイデアに固執することはない。また別のアイデアが湧いてくるのだから。次から次へと泉のようにアイデアが湧き出てきて、そのアイデアと実行の連続で生きているような感じだ。

そうしたことを考えていると、日本でもこれからはアイデアを「有言実行」で形にしていく行動力もさることながら、まずどんなアイデアも否定せずに受け入れる姿勢が必要だ。常にアイデアを自分で構築し、押し進めていく努力を重ねていかねばならないと思う。