いろいろある決算報告書

決算報告書は会社法で「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」の4つと「事業報告」「付属明細書」の2つで構成されることが決められている。法人税法では「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の3つだ。その決算報告書を作成したり、その後でチェックをする際に、多くの社長は損益計算書には興味を持って見るが、貸借対照表はなかなか見ようともしないことが多いとされる。あるいはたとえ見たところで通り一遍で済ませることがほとんどだと、知り合いの税理士の先生は嘆いていた。

銀行に借り入れを申し込む時には基本的に決算書類を3期分提出することになる。そして、これを銀行の担当者がコンピュータにデータ入力して、財務分析、検討を行い、融資条件を決定するのが基本的な流れになっている。借入額が少額の場合は、担保の有無などが融資決定の大きな要因になるだろうが、それでもこうした基本は企業側では押さえておかねばならない。その時、損益計算書は社長方針の下で、1年間に社員が協力して結果となって現れた売り上げ、粗利益、営業利益、経常利益などが自然に出てくる。よく問題になっている粉飾決算とされる例では、そこを変にいじったものが多い。

貸借対照表を毛嫌いしていませんか

ここで取り上げたいのは、貸借対照表のことだ。銀行などから借り入れを行う際、企業につけられた格付けによって金利などが決定されることになるが、その格付けの多くは「勘定科目」の取り方で良い方にも悪い方にも変更することができるのだ。

まず第一に貸借対照表に記載する「資産の部」においては、いずれの項目も社長の意思で決定できるものばかりだ。銀行預金をどの程度するのか、受取手形を受け取るのかどうか、棚卸し資産をどの程度持つのか、そして、土地や建物は買うのか、借りるのかもだ。

「負債の部」においてもしかりだ。支払い手形を利用するのかどうか、短期・長期借入金はどの程度行うのか、その割合はどうするのかなど、社長の考え次第で決めることができる。「資本の部」における資本金の額もそうだ。ただ、内部留保だけは、社長の意思では決めにくいものであるのだが。

見かけは同じでも中味は…

このことは、社長の考え一つで、資金繰りが大いに変化することを現している。一口で言えば、財務体質が改善されるのだ。これからは意図して貸借対照表の数字を変えてみることを勧めたいと思う。

貸借対照表を理解できない社長は、内部留保が潤沢にあり、黒字の基調が続くと、「俺も一人前になった」とばかり、本社ビルを建てたがる。現在の家賃が1000万円で、新築した場合の年間の支払いが同じ1000万円だと、つい同じ金を支払うなら、モノとして残る方が得だと考えてしまう。

しかし、前者(家賃で支払う)は経費で、後者(本社ビルを自前で建てる)は利益からの返済になる。仮にこの会社が4000万円の利益を出しているとすると、約半分の2000万円が税金で差し引かれ、1000万円の予定納税、内部留保が1000万円でトントンと思っていても、普通は在庫や売掛金が増加するもの。おまけに借入金の返済も回ってくると、その分、お金が不足することになってしまうのだ。

独自の財務戦略で驚異的な成長

高級車に特化したレンタカー事業で年率130%の驚異的な高成長を遂げている関西の企業がある。同社は2006年6月に設立した当時、保有車は4台に過ぎなかったが、今では保有車は520台になり年商も22億円に成長した。

車の仕入れには独特のノウハウを持つ。しかも普通はリースで買ってレンタルするところを、現金で購入するところが安く仕入れることのできるミソだ。それを可能にしているのが、これも独自の財務戦略による。「月商の5倍はいつも現金で持つようにしている」と社長は話す。社長がいつも持ち歩く「経営計画手帳」には月ごとの財務に関わる前年度の実績数字、今年度の目標とともにその実績数字がタイムリーに書き込まれており、これを使って「金融機関への説明も3か月に1度必ず行っている」。

こうした努力の結果、金融機関からは無担保無保証で資金を借りることができている。これは万一の時に個人保証まで追求されないということより、新車を購入する際にいちいち担保設定などする必要がなく、機動的に動けるというメリットにつながっている。

目に見えない「資産」も大切に

このように、貸借対照表を知ることによって、戦略も変わってくる。事業構造を変えることに目が届くようになるのだ。不採算部門の切り捨てや損益分岐点まで人を減らすなどの対策や、売り先を変更して受取手形を受け取らない、仕入先には支払い手形の発行は行わず、期日払いとして金利分を負担して、安全性を増すといった対策を打てるようになる。

蛇足だが、大切なものは数字で見えるものばかりではない。先の例に挙げた会社のように、金融機関との間の信頼関係なども「資産」といえる。その他にも、従業員の健康や技術、コネクションなど、いろいろな形の資産がある。私自身、そうした資産にも目を配った経営を是非していきたいものだと考えている。

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