営業との接点がほぼなく買い物

普段あまり買い物をしないのだが、たまたま我が家の耐久消費財がいくつか寿命からかその用途に耐えられなくなってきたので、最近その買い替えを行った。しかし、以前とは異なって、その情報収集から商品の比較検討まで、その大半を私が自分で行い、店の営業担当者はその結果を受け取るだけだった。

もう少し正確に言うと、一つ目は最終的にどの商品を買うのかの意思決定に際して、実際にその商品の使用感を確かめに店頭に足を延ばした。言ってみれば、商品選択の最終的な意思決定に店舗を利用させてもらった。万一、それで気に入らなかったら、また他の商品を独自に検討し、店で確かめる作業を繰り返すつもりだった。

また、二つ目の商品は、一つ目とは逆に、自分自身ではそれぞれのメーカーが提示する商品性能の違いの見極めをどこで判断すれば良いのかが分からなかったので、その判断基準を聞くために店頭の店員の話を聞きにいった。その後の商品の絞り込みや最終的な決定は、ネットで調べて独自で決めた。店員がひょっとしたらメーカーからの派遣社員だったり、その時々の店での販促があって自分にとっての合理的な選択ができないかもしれない。ネットなら不特定多数の評価も見れるし、納得した買い物ができそうに思えた。

情報は顧客優位の時代

そんな風に買い物をしながら、顧客が購買のプロセスを自分が決めたタイミングで、自分が信じられる有益な情報を好みの手段で入手し、営業担当者に売り込まれることなく自分のペースで買い物ができる時代を十分に利用させてもらった。こうしたことは以前なら店舗の側では営業活動や商談のプロセスを管理することで成果を出していたのだろうが、現在では店員が顧客に接触する前にすでに勝負が決まっているような状態だということだ。それはB to Cだけでなく、B to Bのビジネスにおいても同様だろう。実際に少し古いが、2015年のある調査会社のレポートによると、B to Bのバイヤーの75%は営業担当者から買うよりも、ウェブサイトで買う方が便利だと答えている。

「平成30年版 情報通信白書」によると、個人のスマートフォンの保有率は今や60%を超え、タブレット型端末も含めたモバイル端末の所有率になると84%にものぼるという。企業の広告宣伝やマーケティング手法も当然それによって変わってきている。これまでテレビやラジオ、印刷物が中心だった顧客との接点は、ウェブサイト、電子メール、インターネット広告、ソーシャルメディアへと広がっていった。そしてそれは一見、メーカーから顧客の側に主導権が移ったかのように見えるが、顧客との接点がデジタルにシフトしていることで多くのデータを蓄積し、オンラインの行動データを分析することによって顧客の行動や嗜好を読み解くこともまた可能になっている。

顧客管理の充実を

顧客の情報に接する環境が変化するに従って、商品の購買検討・行動プロセスが変わったように、企業においても当然その変化にどう対応するかが求められる。ウェブサイト、電子メール、インターネット広告、ソーシャルメディアをどう利用するのかの検討はもちろんだが、そのためにもまず何より必要なのが顧客管理の充実だろう。

工場の生産現場で各工程における在庫状況やリードタイムなど、様々な指標を測定し、可視化することは、今の時代当たり前に行われている。その情報をもとに適切な人員配置が行われ、各工程者が業務を実行し、全体の監督を任された者がボトルネックを分析して最適化を目指す。

それに対して、まだまだ顧客の分析が実際の現場で科学的に行われているとは言い難い。個々の顧客が今、自社の商品に対してどの位地にいるのか、すなわちまだ認知さえされていないのか、見込み客として挙げられる状態にあるのか、継続して商談に当たるレベルなのか、クロージングの段階を迎えているのか、ロイヤルカスタマーにするためのフォローの段階にあるのか…といったことだ。そして、その各々の段階を的確に把握し、進めていくために、複数の部門がどのように関わり、アプローチしていくのかをルール化する必要がある。

組織の見直しも視野に

それぞれの段階における基準があいまいなことは良くある。このため、売上予測が立てづらかったり、その精度が著しく実績と乖離することになる。ひとくくりに「営業」とはいっても、いろいろな顧客のレベルに合わせるには組織の見直しも工夫しなければならないかもしれない。1人で見込み客の発掘からクロージング、顧客のフォローまで担当するのは効率的ではないからだ。例えば、少なくともマーケティング、営業、顧客サービスの3つには組織を分けるか、あるいは担当者を別に置いた方が良いこともあるだろう。

もちろん、それぞれの段階での情報のやり取りに支障があってはならない。しかも、マーケティングから営業、顧客フォローへと一方通行的な流れではなく、双方向になることを心掛けなければ必ず、「自分の成果が出ない原因は前段階の仕事の仕方にある」といった非難の応酬になってしまう。「マーケティングから受け取った顧客のうち、何件がクロージングにまで進めることができた」とか、「とりあえず売り上げは立ったが、もう少し要望をうまく聞き出すことができれば、さらに深い関係を築けそうだ」などの情報は貴重だ。

何より顧客の変化に取り残されると、売れる商品も売れなくなる。そんな時代なのだ。