沈黙は金?

仕事に限らず、言葉にして伝えるというのは、その中味もさることながらタイミングなどもなかなか難しい。煩わしさが先に立つと、沈黙したままで過ごすことも多い。仕事のスピードを追求しようとして沈黙を守った結果、問題を悪化させるということもある。できるだけ早く仕事を終わらせようという目的のために、自分自身の意思決定を身代わりにしているのだ。

私自身、振り返って考えても、口をつぐむのは多分に相手との意見の食い違いに目を向けたくない時だったりする。人によって性格や経歴、経験に違いがある以上、意見や信念、好き嫌いも当然異なる。意見の違いが大切なのもよく分かるが、やはり食い違いを直視し、これを深く理解しようとする作業は苦痛以外の何物でもない。見解の相違が表沙汰になると仲間から追い出されたり、それが上司と部下の関係であったりすると、それがもとで自分の評価に悪影響が及ぶことを恐れるからだったりする。

職場の仲間とうまくやっていくなら、どんな労もいとわないという人が多いのも良く分かる。だから、ミーティングなどでも、たまに異議を唱える人がいても、逆に提案者の方がすぐに自説を引っ込めたりすることもある。そんな時は結局、意見の相違が出た部分は先送りし、「十分なコンセンサスが得られた」と喜びあったりするのだ。

沈黙が築く恐い溝

まして、ミーティングなどの会議に出席する人の中に上司などが入っていると、無意識に上司は部下に「口出し無用」というメッセージを送っていることに気付くべきだ。これが会社のトップの意思決定をする経営会議で、意見を一致させることに気持ちが傾き、意見の食い違いを深く掘り下げることに及び腰であったらと思うと恐ろしくなる。

上司の方でも案外、部下が忌憚なく発言できるようにと気を使っていたりする。あまり嬉しくない人事考課をフィードバックする時などは、これを部下に伝えにくいものであり、特に礼儀を重んじ、対立を避けようとする職場などではその傾向が強い。これでは何のことはない、上司も部下もそれぞれが気を使って沈黙を守ることになる。

しかし、この沈黙が続くと、いつかダムが決壊するように、沈黙が破られる時が一気に来ることになる。極端な話、始めは上司との人間関係が壊れるのを恐れて自分が我慢を重ねて上司の意見を聞き、あるいは上司の命令に服していても、実際にはその時の沈黙が原因で意見の食い違いが行動の食い違いを生み、やがて越えがたい溝ができる。実に滑稽な話だ。

互いの違いを尊重する雰囲気作り

この沈黙を破る勇気はどのように与えられるのだろう。

まず、周りの環境が人とは異なる行動を持ったり、違いを表明することをプラスに評価する雰囲気を整えなければならない。上司としての立場を持った人なら、率直な意見を述べた人が酷い目に合わないように配慮することが必要だ。

例えば何か問題が起こったとする。対立が生じた場合、非が全面的に片方にあるというケースはめったにない。そこで相手が謝罪したり、話を切り出したりするのを待つのでなく、自分から一歩を踏み出して意見の食い違いを明るみに出し、それを掘り下げるのだ。「非はまず監督者としての私にもあるだろう。指示の出し方が適切でなかったのかもしれない。それについて、A君はどんな風に感じたのかな?」と切り出し、A君の問題点と考えられる点を俎上に載せるのだ。

実際、上司は部下に対する権力を持っているが、これは形式上の話で、上司が高い業績を実現できるかどうかは部下の働きにかかっている。要は上司の方でも部下を必要としているのだ。それさえ心得ておけば、部下の方でも上司に自分の意見を言い、それを理解させることができるのだ。

沈黙した方が良い時

しかし、だからと言って沈黙が一様に悪いわけでもない。例えば、それは内容によってはわざわざ提起するに値しない問題もあれば、些細な意見の相違でいたずらに対立を煽るべきでないこともある。時間と労力に見合わないわずか食い違いに時間を取られ、これを一つ一つ解消して回ることに意味などない。

意見の食い違いを解消するには、タイミングも鍵になる。目前に締め切りが迫っているのに、あえて難題を取り上げるのは効果的ではない。その問題が当面の仕事に大きな影響を及ぼし、しかも解決する時間が残っているのなら別だが、そうでないなら締め切りが過ぎるのを待って集中して話し合えるタイミングを見計らうのが良いだろう。また、自分や相手が感情的になっている時などは、意見の食い違いに触れない方が良いのは言うまでもない。しかし、話し合いを延期することは、問題を漠然と先送りすることとは違う。

「今度ばかりははっきり言うべきだろうか」と「今度ばかりは黙っておくべきだろうか」の判断が求められているように思う。

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