見逃せない広報力

相変わらず「日経に記事を出すには、いくらぐらいかかるのですか?」と聞かれることが多い。答えは無料だ。「広報」と「広告」とを混同されることが多く、そのためにこんな質問が出る。日経だけに限らず、他の新聞記事やテレビ局の報道も同じ無料だ。確かに、最近は一見、記事やテレビであれば報道と見間違う広告も多いので、ますます記事(報道)と広告が混同されるような事態になっている側面はあるが、本来それはまったく別者なのである。

広告はお金を払って、新聞や雑誌、テレビなどの空いているスペースを買うのである。買ったスペースは自分のものなので、公序良俗に反するものでない限り、自分の思い通りの宣伝ができる。しかし、如何せんかかるお金は相当な金額になる。普通に全国紙の1面を使おうとすれば3000万円以上はかかるし、テレビともなれば地方のローカル局は別にしても、億単位のお金が必要になるのは常識だ。これでは中小企業や起業したてのものが、気軽にマスコミを利用することはできないように思われる。

デメリットにも注意

しかし、広報という手段を使うなら別だ。広報は一言で言えば、マスコミにお金を払わずに(つまり無料で)記者に情報を提供し、記事を書いて(報道して)もらうものだ。マスコミの記者に取材をしてもらう。取材だからタダなのである。日本のマスコミは最近でこそネットの台頭で凋落著しいと言われたりするが、それでもまだまだ社会的な信頼度は高い。その高い信頼度を利用するのだから、うまく行けば売り上げアップだけでなく、企業自身の信頼度アップにつながり、人手不足の折りにでも求める人材の確保につながったりしてメリットは大きい。

しかし、どんなものにでもつきもののように、もちろんメリットばかりではない。デメリットということでもないのだが、まず情報提供しても取材をしてもらえるかどうか分からないということがある。そして、ここがポイントでもあるのだが、取材をしてもらっても狙い通りの記事(報道)にしてもらえるかどうかも分からない。へたをすれば、思いもかけないことが記事になったりする可能性だってある。だから、情報発信もしっかりコントロールする必要があったりするのだ。

幅広い情報管理

社員数の多い大手企業であれば「広報部」といった部署がある。そこで企業が出す情報の管理などを行っているのだが、特に今後ますます人手不足対策に頭を悩ませなければならない中小企業や起業したての企業では、「余計な」担当者や部署を配置する余裕もヒマもお金もないだろう。社長が仕事の合間に様子を見て行っているか、まったく行っていないところが大半なのではないだろうか。しかし、これまでと違い、中小企業の小回りの良さなどを活かそうと思えば、そうした情報管理はますます大切になっているように思う。

そんなことは大体分かっていても、大手の広報部が一体何をしているのか気になるだろう。経済広報センターが調査した結果によると、多い順番から「報道対応」「社内広報」「社外情報の収集(広聴活動など)」「広告・宣伝活動」「危機管理」「ブランド戦略の推進」「IR活動」「文化活動・社会貢献活動」「CSR対応」「ソーシャルメディア対応」「消費者対応」「政府・行政機関などへの渉外活動」などとなっている。少し古い調査なのでSNS対応の順位が低いように思うが、大体その広範な仕事の内容は分かってもらえるように思う。

マスコミへの心構え

最後に、普段あまり付き合うことのないマスコミを前にした心構えをいくつか挙げる。その第一にマスコミといっても特段気張る必要もない。あくまで情報するのは自分たちなのだから、気後れなどする必要もない。主導権はこちらにあるということを意識して臨めばよい。

そのうえで、事実を尊重する姿勢は大切だ。単純に言えば、「嘘をつかない」ということだ。いくら社長がシロといっても、事実がクロならクロなのだから、それを言い訳などすることはできない。自分を大きく見せるために、年商○○億円ですといったところで、化けの皮はすぐに剥がれるし、そうなったらマスコミへの信頼関係が壊れてしまう。

またマスコミに対しては公平であることが求められる。選り好みしないということだ。マスコミによって態度を変えない、約束は必ず守る、とった当たり前とも言うべきことを守るということ。そして、何より誠実であることだ。どんな取材内容であってもそれに対して誠実に対応すること。こうしたことは社会的にも常識のことなのに、大企業であってもことマスコミに対しては特別な対応をとりがちだ。注意をするべきだ。