何となく伝わる会社の気

私は仕事柄、日頃いろいろな会社に出入りさせていただいている。業種も様々だ。そんな中、どんな会社でも一歩足を踏み入れた時に感じる「気」があるように感じている。良い会社には、打てば響くような張り詰めた気が、悪い会社には沈んだ重苦しい気がある。皆さんにも経験はないだろうか。ちなみに私は霊媒師でも何でもない(念のため)。でも普段営業職でない方も、飲食店や物販店に入った時に感じるものはあるのではないだろうか。それは最初の応対で出てこられた従業員の方の醸し出す雰囲気で決定的になる。

良い気というのは、受付がきれいに掃除をされていたり、元気の良い声が飛び交っていたり、従業員の方の一挙手一投足がきびきびとしていたりするところから出てくるものかもしれない。実際、飲食店や物販店に入って、これまでそういう良い気の店での料理やサービスなどは間違いなかったように思う。特に客商売の店なら、例えばおいしい料理や心地よいサービスを提供できていれば客は喜ぶ、逆だと、途端にクレームにつながる。もう二度と来店もしてもらえないだけに、評価はハッキリとしている。

気を満ち溢れさせる4つのポイント

では、会社に気を満ち溢れさせるにはどうすれば良いかということだが、これについて以前、大手サービス業の会長が従業員相手にお話ししていたことがある。

一つは「スピードあるきびきびした動き」。迅速で無駄のない動きには気が集まるという。
二つ目は「明るく大きな声」。挨拶一つとっても小さな声でぼそぼそ言っていては、まったく相手に伝わらない。打ち合せや電話にしても同様だ。ひそひそしゃべっているようでは、まったく社内に気など満ち溢れることはない。だから、もっと明るく元気に大きな声を出せと従業員に事あるごとに話されていた。
三つ目は「隙を見せない緊張感」。これは誰に対してかというところが大切なところで、もちろんお客様に対してということ。間違っても客より上司に対してになってしまっては、会社はつぶれてしまう。本社などにいるとお客様が見えなくなりがちだが、お客様を常に想定して、こういうことをすればお客様はどう感じるか、どう反応するかということを意識することが大切だ。

事前準備はできているか

特に接客サービスで一番大事なのは、「待っている時の姿勢」だとお話しされていたことが印象的だ。お客様はたいてい予告なしで突然いらっしゃる。その時に、いつ来店されてもいいような表情、態度、事前の準備ができているかどうか。例えば、店に入った瞬間、従業員がつまらなさそうにボーッと突っ立っていたり、お客様から見える場所に食材の段ボール箱が放置されていたりすると、それだけでもうお客様はゲンナリしてしまう。

だから、接客サービスは準備で8割方は決まるといっても過言ではない。普段から準備をしておかないと、咄嗟の時に対応できないものだ。だから、毎日「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」という声出しや笑顔の訓練をするのだ。そうして初めて、咄嗟の時にも自然と体が動くようになる。結局、お客様に隙を見せない緊張感を持つということは、準備を怠りなく徹底するということにつきるものだということだ。

もちろん、分かりやすいように飲食店や物販店の例でお話しされたものだが、これが製造業であっても、その他の業種であっても変わらない。

気の在り方が差別化になる

四つ目(最後)は「貪欲さ」。これも飲食店なら、もう一人お客様に入っていただこうと呼び込みをするとか、もう一本ビールをお勧めしようとか、もう一品おつまみをご注文いただこうという前向きな姿勢を指す。もちろんあまり強引になっては元も子もないが、わきまえのある貪欲さならむしろ大歓迎だ。あるいは、もっと自分を成長させようといった追求心、向上心が一人ひとりにあるかどうかだ。従業員一人ひとりのそうした心構えが、店や会社に程よい気を充満させる。

気にあふれた店や会社を訪れると、一時の訪問者にすぎない私でさえも良い気分になる。もう少し言えば、そういう気のある店や会社の人たちと一時を共有していることに言い得ぬ満足を覚える。人手不足の時代だからこそ、従業員に対する教育も含めた目配り、気配り一つで変わる気の在り方が、他社との差別化につながるように感じる。ところが現実はそんなところまで余裕がないのか、もっと気持ちの良い店や会社が増えてもいいのにと思っているところだ。